逆境を成長の糧に変える力とは
心理学者のマーティン・セリグマンは、逆境を成長の糧にする「ポスト・トラウマティック・グロース(PTG)」という概念を提唱しました。トラウマ的な出来事の後に起こるポジティブな心理的変容のことを指します。苦難を乗り越えた人は、新たな可能性に気づいたり、人間関係の大切さを実感したりすると考えられています。
また、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授は「グロース・マインドセット(成長型思考)」の重要性を説きます。これは、自分の能力は努力次第で伸ばせると信じる考え方のことで、失敗を恐れず、挑戦を続ける原動力になるのだとか。
実際、多くの企業が逆境や挫折の経験を重視し始めています。ある大手メーカーでは、若手社員向けに「失敗と挫折の経験共有会」を開催。先輩社員の失敗談から学ぶ機会を設けています。
また、あるベンチャー企業では「FAILCon」というイベントを社内で実施。FAILはFirst Attempt In Learningの頭文字で、失敗の経験を共有し、学び合うことを目的としているそうです。
逆境や挫折をどう乗り越えたかを分析しよう
逆境や挫折の重要性がわかった人は、この一年を振り返って「売上の低迷やクレームにどう対処したのか」「トラブルを迅速に解決するために何を学んだのか」など、直面した逆境や挫折を書き出してみましょう。そして、それをどう乗り越えたのかを分析してみてください。
「クレーム対応で大切なのは初動の2時間だと気づいた」といった気づきは、面接官に強くアピールできるはずです。困難な状況で適切に判断し、行動できる人材だと評価されるでしょう。
逆境と挫折の経験を「インテリジェンス・ストーリー」に
「どんな逆境や挫折に直面したのか」「そこからどう行動したのか」「その結果どんな学び(インサイト)を得たのか」。そして「その学びを今後どう生かしていくのか」。これこそが、転職や就職の面接で語るべき「インテリジェンス・ストーリー」なのです。
自信を持って、自分の逆境と挫折の経験を語ってください。あなたの言葉は、面接官の心にきっと深く響くはずです。そして、それは同時に自分自身を鼓舞する言葉にもなるのです。
「私はこれまで、多くの逆境と挫折を乗り越えてきた。だからこそ、どんな困難にも負けない強さを持っている」。そう自分に言い聞かせることが、新しいチャレンジに踏み出す原動力になります。
逆境や挫折は、あなたの〝ユニークな強みの源泉〟です。その経験をしっかりと咀嚼し、自分の言葉で語る。そのことが、これからのキャリアを切り開く大きな一歩になるでしょう。
文/越川 慎司
全員が専業禁止、週休3日の株式会社クロスリバーの代表取締役社長。800社超の働き方改革を支援している。仕事のタイパを上げるオンライン講座の実施は年間400件以上。自著29冊、最新刊『最速で結果を出す超タイパ仕事術』(小学館)が好評発売中。