【越川慎司のショートカット仕事術】
皆さんは自分の強みをすぐに言えますか? 実は、6800人を対象としたアンケート調査では、自分の強みをはっきりと言える人は全体の31%、つまり1/3以下しかいませんでした。多くの人は自分の強みを理解していないというのが現状なのです。
では、どうやって自分の強みを理解し、可視化していけばよいのでしょうか。1つの方法として「あまり頑張ってないのにできちゃったこと」を探してみるといいでしょう。
「気づいたらできていたこと」が自分にとっての大きな強み
「いきなり頼まれた結婚式のスピーチを、案外とスムーズにこなせた」「社内会議の司会なんて無理だと思いつつ、やってみたら2年間も続けられた」といった経験、あなたにも心当たりはありませんか?
私自身は「Voicy」という音声メディアで毎日配信をしていますが、放送のネタ探しは全然苦ではありません。30冊近く書籍を出版しているので、ネタには事欠きません。毎日続けられることが、私の強みになっているのかもしれません。
苦にせずにできることは、どんな些細なことでも構いません。例えば、毎朝何気なく出勤していることも当てはまります。なぜなら、多くの人にとって、毎朝の通勤ラッシュは苦痛であり、出勤するモチベーションを維持するのは大変なものです。それを特に意識せずに出勤できているなら、それは立派な強みと言えるでしょう。
また、仕事をスタートするためのスイッチが自動的に入るのも強みです。私は「書くのが早い」ことが強みで、簡単な報告書ならササッと書けます。重要度の低いタスクを見極めて、手早く片付けられるのは大きな強みだと言えます。
自分の強みが家事や育児で発揮されていることもある
強みは仕事だけでなく、家事や育児の場面でも発揮されるものです。周囲の人が苦労しているのに、自分は難なくこなせていることはありませんか? 例えば、子供の宿題を手伝うのが得意だったり、料理の段取りが上手だったり。そういった家事や育児に関わっている瞬間にこそ、自分の強みが発揮されていることもあります。
カナダの心理学者であるドナルド・O・クリフトン博士は「強みを生かすことで、人は最高のパフォーマンスを発揮できる」と主張しました。彼が開発した「ストレングス・ファインダー」は、34の資質から個人の強みを明らかにするツールとして、世界中で活用されています。
また、ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン博士は「強みに焦点を当てることが幸福感を高める」と述べています。自分の長所を生かして物事に取り組むことが、充実感や満足感につながるのです。
個々の強みを生かすことは企業も積極的に
強みを生かすことの重要性は、企業においても認識されつつあります。
ある大手IT企業では、社員一人ひとりの強みを可視化するために、「ストレングス・ワークショップ」を定期的に開催しています。普段の仕事ぶりを振り返り、同僚からのフィードバックを受けることで、自身の強みを再確認する機会になっているそうです。
また、飲料メーカーでは、新入社員研修に「強み発見プログラム」を導入。個人の強みを明確にしたうえで、それを最大限に生かせる配属先を決定するのだとか。その結果、社員のエンゲージメントと生産性が大幅に向上しました。