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視覚障がい者が丁寧に制作するココロスキップの「点字名刺」プロジェクトがもたらす仕事の未来

2024.08.07

障がいを持つ方の個性を生かし、適所に適材を配する方式で作成される点字名刺

松本 依頼主から預かった名刺に点字を入れるサービスというのは、当然ですが点字に精通している方が従事しなければ難しいお仕事です。

点字名刺プロジェクトでは、どのような方が実際に点字を入れているのか。そしてサービス全体はどのような運営が行われているのでしょうか?

大政さん 株式会社を立ち上げた当初は、点字のことが分からず、越谷市の点字講習会に応募し、点字の基礎を勉強しました。その後点字サークルにも加入し、少しずつ点訳について学んでいきました。

点字名刺の作成には専用の機械を使用しておりまして、1ピン1ピン手作業で、お客様のお名刺に合わせて点字のレイアウトをしております。

点字のセットは、主に就労継続支援B型事業所ココロスキップの職員さんが行っております。みなさん初めは点字のことが分からないところからスタートし、徐々に点字を覚えていただいております。

文章を点訳するとなるとかなり難しいですが、名刺の中の情報(会社名、お名前、電話番号)を点字にするので、「点字」や「マス空け」といった基本のルールで点字を刻印することができます。

現在、視覚障がい、身体障がい、精神障がい、知的障がいのある方々がココロスキップでお仕事をしてくださっておりますが、ご注文を受けてから、発送するまでのお仕事を細分化し、

苦手なことを一生懸命頑張るというよりも、得意なことや出来ることを担当していただくことで点字名刺プロジェクトを行っております。

例えば、注文を受けた際のメール対応はパソコンが得意な精神障がいの方、点字の刻印作業は視覚障がい者の方、その隣で点字名刺の検品作業を行うのは精神障がいがあり繰り返しのお仕事が得意な方、梱包作業は知的障がいの方、といった具合です。

同じ障がいでも、得意なことと苦手なことがありますので、その方の適性に合わせて配置を行っております。

「点字を身近な場所に増やし、点字への理解も深めたい」という思い

松本 ココロスキップさんでは、名刺に点字を入れるだけでなく、点字シール、点字封筒などさまざまなサービスも提供していらっしゃいます。

これらのサービスは大政さまがウェブサイト上でも主張しておられるところで言う、ユニバーサルデザインの普及・拡充にも繋がる意義の深いものと感じました。

先ほど授産製品の通販も当初から予定していたとのお話もありましたが、点字名刺を含め、これらのサービスの運用はココロスキップ発足当初から企図していたものだったのでしょうか?

大政さん 点字名刺プロジェクトを立ち上げた当初は、お名刺の点字刻印のみを想定しておりました。

仕事を増やしたいという想いと、点字を普及させ、点字が身近な存在となることで、「視覚障がい」さらには「障がい」についても理解が深まり、より優しい社会になっていけばとの願いから、点字シールや点字封筒などのサービスに結びつきました。

当初の理念を断念してでも点字名刺プロジェクトの続行を決断させたのは、全盲の作業従事者のことばだった

松本 最後になりますが、大政さまの感じた“点字名刺プロジェクト”を進める上で直面した、もっとも大きな喜びに繋がった出来事を教えてください。

大政さん 点字名刺プロジェクトを立ち上げた当初からお仕事をしていただいている視覚障がい者の方で、全盲の小林初子さんという方がいらっしゃるのですが、初子さんが「仕事がしたい。旦那さんから助けてもらうだけではなく、自分も役に立つ存在となりたい思ってとハローワークに行ったところ、担当の職員さんから『全盲の方に出来る仕事はありません』と言われとてもショックを受けたのだが、今では自分にもできる仕事があって嬉しい」と言ってくださいました。

私たちが行っていることは間違いではないと確信できとても嬉しかったです。

一方、株式会社として、国や市からの給付金をもらわず利益を追求することによって、税金を与えられる立場から、税金を納める立場になることで、潜在的な心の部分での差別がなくなればとの理念を掲げ頑張っていたのですが、なかなか利益が上がらず、貯金を切り崩し、アルバイトもしながらなんとか10年間続けた末、ついに貯金が底をつき、このままでは続けて行けない状況となりました。

その時、当初の理念を断念し、就労継続支援B型事業所という形で続けるか、点字名刺プロジェクトを終わりにするかの選択となった際、小林初子さんの言葉が頭をよぎりました。

点字名刺プロジェクトの仕事を大切に考えてくださっている当事者の方、お客様がいらっしゃるのだから、理念を変えてでもこのプロジェクトを続けて行こうと決意し、現在に至ります。

あの時の初子さんの言葉が、点字名刺プロジェクトの継続へと導いてくれた気がします。

安価で利用できる点字名刺プロジェクト。あなたの名刺にも点字を添えてみませんか?

ということで、今回はココロスキップ施設長の大政さんに話を伺った際のお話しを、ほとんどそのままカットせずに掲載させていただいた。

というのも、言葉というものは本来、話し手が心を尽くして伝えるもので、少しでも言い間違ってしまうだけでニュアンスが違った形で広がってしまいかねない。

大政さんのお話しはこれまでのココロスキップの歩みを包み隠さずに紹介したものであり、組織の変遷を含めて、なるべく筆者もその全てを聞き手として受け止め、読者の皆さまにお伝えしたいと思ったからである。

そして今入力しているこの文字列も、基本的に視覚に異常がない方向けに執筆しているものだが、視覚障がい者の方々は、この文章を様々なツールを介して読むにも、健常者以上の手間かかかってしまう。

点字は視覚障害を有する方にとっては貴重な情報源であり、その点字という存在を、健常者の方々がより広く認知する媒体として、点字名刺は有用だし、もっと知られてほしいと願っている。

ココロスキップの点字名刺プロジェクトは、名刺を送付することで点字が刻印された形で返送されるというシンプルな仕組みになっている(名刺の作成そのものは行っていないためご注意を!)。

注文は1セット100枚から。料金は1100円で別途送料が発生する。

注文はココロスキップのウェブサイトから電話、メール、注文フォーム経由で。

文/松本ミゾレ

【取材協力】
就労継続支援B型事業所 ココロスキップ

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