日傘を使うきっかけに位置付けた高い撥水性能
『Wpc. IZA』は雨傘としての性能も高い。撥水度試験で最高等級の5級を記録している。
一般的な傘と『Wpc. IZA』の撥水力の比較。洗濯回数ごとの撥水性能を比較したところ、『Wpc. IZA』のほうが撥水性能の低下が小さく、長く撥水力を維持することが確認できた
撥水加工には溶剤を用いるが、「溶剤と生地には相性があるんです」と角谷氏。何を使えば撥水効果がもっとも高くなるのかは検証してみないとわからず、実験を繰り返しながら最適な溶剤を見極めた。
また、裏面に施したポリウレタン樹脂の多層コーティングは、防水性を高めるのにも一役買っている。
雨天時に真価を発揮する撥水性能や防水性能を高くしたのは、日傘として使ってもらうための布石でもあった。日傘の機能だけを強化してそのことを打ち出しても男性には響かず売れない。晴雨兼用としてまずは雨の日に使ってもらってから、日傘としても使ってもらうことを意識した。
徹底して男性に訴えかける
2021年3月の発売時は一番人気の「コンパクト」、最軽量の「ライト&スリム」、自動開閉設計の「オートマティック」をはじめ、一瞬でたためる形状記憶設計を採用した「形状記憶」(終売)、長時間の持ちやすさを追求した「快適グリップ」(終売)など5タイプを用意した。ブランドのローンチに合わせて一気に多種を展開することにしたが、当初は思ったほど売れなかった。現在よりも男性が日傘を使うことの理解が低いことなどが影響した。
重さ190グラムで収納時の横幅がわずか5センチメートルと、もっとも軽量&スリムな「ライト&スリム」。写真のブラックのほか、オフホワイト、ベージュ、グレー、ネイビー、ブラウン(限定色)を揃えている。価格は4620円
しかし、ユーザーからの評価は高かった。晴れの日に使った声として「効果がスゴい」「涼しい」「みんな使ったほうがいい」といった好意的なクチコミがよく見られた。
「雨の日に使うために買ってもらい、暑い日に1回使ってもらえれば絶対効果を実感してもらえる確信はありました。ただ、暑い日に1日使ってもらうまでが大変です」と角谷氏。売上を伸ばすにはPRの工夫が課題になった。
PRで意識的に行なったのは雨傘と日傘両方の使用イメージを必ず見せること。商品カタログや店頭のPOPをはじめ、雑誌やウェブメディアで取り上げられる時は必ず雨傘と日傘両方の使用イメージを同時に見せることを徹底した。
もう1つ意識したのが、男性に振り切ること。角谷氏は次のように明かす。
「社内には『女性にも少しは手に取ってもらうようにした方がいいのでは?』と不安視する声がありましたが、女性を意識して女性でも使えることやユニセックスであるとするとコンセプトがブレてしまい、男性に伝わりづらくなります。『Wpc. IZA』は男性が持てる日傘、男性向けのカッコいいブランドであることを徹底して男性に訴えかけることにしました」
こうした考えもあって、ビジュアルモデルに2022年は窪塚洋介さん、2023年はオダギリジョーさん、2024年は岡田将生さんといった俳優を起用している。
このほかにはインフルエンサーマーケティングに注力。これまで美容系やガジェット系など100名近くのインフルエンサーにサンプルを提供し紹介してもらった。デザインのカッコよさなどから共感し依頼を快諾したインフルエンサーは多かったそうだ。窪塚さんやオダギリさんを起用したイメージカットから受けるカッコよさもインフルエンサーが依頼を快諾する一因になった。