「日本から海外」への仕事検索動向
■ 「日本から海外」への仕事検索割合は、円安を背景にコロナ禍前と同等の水準までに回復
日本で行われた仕事検索全体のうち海外の仕事が検索された割合は、コロナ禍で日本を含む国と地域で渡航制限が開始された2020年4月以降低調が続いたものの、緊急事態宣言の解除や各国の制限緩和を受け、2021年10月以降から増加傾向となった。
さらに、円安が進行した2022年6月から急激に増加し、2024年4月は2019年同月比で1.1倍となり、コロナ禍前と同等の水準となっている。
<日本での全仕事検索に占める、「日本から海外」への仕事検索割合>
データは7日移動平均、2019年1月1日-2024年5月8日。季節調整済。灰色線はトレンド線。
破線はコロナの緊急事態が宣言された時期(2020年2月1日)、1ドル130円超が大きく報じられ始めた時期(2022年6月1日)を表す。
■「日本から海外」への仕事検索、米国・カナダへの関心は減少傾向、英国・オーストラリアへの関心は増加
日本から海外への仕事検索全体に占める関心先上位8カ国(米国・カナダ・英国・オーストラリア・フィリピン・ベトナム・フランス・ドイツ)の仕事検索割合の推移を調べた。
コロナ禍後の2022年以降を年単位で見ると、米国は2022年と比較し2023年および2024年(1〜4月)は減少している。
カナダは2022年と比較し2023年は増加したが、2024年(1〜4月)は減少となっている。
一方で英国、オーストラリアは2022年と比較し2023年および2024年(1〜4月)は増加が見られる。
<「日本から海外」への全仕事検索に占める、上位8か国の関心先別検索割合>
データは7日移動平均、2019年1月1日-2024年5月8日。季節調整済。
破線はコロナの緊急事態が宣言された時期(2020年2月1日)、1ドル130円超が大きく報じられ始めた時期(2022年6月1日)を表す
■日本から海外の求人への関心、米国は「ソフトウェア開発」、カナダ・英国・オーストラリアは「飲食」がそれぞれ1位
日本からの仕事検索割合上位国の米国、カナダ、英国、オーストラリアについて、各国の求人への職種カテゴリ別の関心を調べるため、Indeed上の各国の求人の職種カテゴリ別クリック割合を分析した。
米国、カナダへは「ソフトウェア開発」のクリック割合が高く、特に米国では2019年の7.6%から2023年には8.9%に上昇、最も関心が高い職種となっている。
2024年は1〜4月の限定的な結果ですが、米国の「ソフトウェア開発」のクリック割合は9.4%と引き続き増加傾向にあると見られる。
2023年、2024年(1月~4月)は、カナダ・英国・オーストラリアでは「飲食」が最もクリック割合が高く、特にオーストラリアではクリック割合が2023年は11.8%、2024年(1月~4月)は13.7%と他の国と比較しても高い水準となっている。
円安を背景に、オーストラリアへは高収入の仕事を求め、アルバイトとしても比較的就業しやすい「飲食」の仕事を希望する人が多いと考えられる。
<日本から米国・カナダ・英国・オーストラリアの求人への関心 上位5職種カテゴリのクリック割合>
データは2019年と2023年は1月〜12月の暦年の期間を、2024年は1月〜4月の期間を使用
「海外から日本」および「日本から海外」への仕事検索の相関と為替の影響
■海外から日本」および「日本から海外」への仕事検索は、2023年以降為替の影響を大きく受けている
「海外から日本」と「日本から海外」への仕事検索の相関と、世界的な為替の影響を調べた。2022年以前は「海外から日本」と「日本から海外」への仕事検索は同じ方向の動きをしており、正の相関となっていましたが、2023年以降は「日本から海外」と「海外から日本」への仕事検索は逆の方向の動きが見られ、負の相関になっている。
これは、もともと(2022年以前は)「海外から日本」および「日本から海外」への仕事検索は多様な要因で行われていたと考えられるが、2022年以降に円安が急激に進行したことで為替を要因とした仕事検索が増加し、「海外から日本」への仕事検索が減少する一方、「日本から海外」への仕事検索が増加したためと言えるだろう。
<アウトバウンド・インバウンド検索割合、米国日本為替>
データは7日移動平均、2019年1月1日-2024年5月8日。季節調整済。
破線はコロナの緊急事態が宣言された時期(2020年2月1日)、1ドル130円超が大きく報じられ始めた時期(2022年6月1日)を表す。
調査結果まとめ
Indeed Hiring Lab エコノミスト 青木 雄介 氏
■円安の影響が従前より強く表れている
「海外から日本」への仕事検索(インバウンド検索)トレンドと、「日本から海外」への仕事検索(アウトバウンド検索)トレンドは、為替推移が安定していた2022年までは正の相関(インバウンド検索とアウトバウンド検索が同じ方向へ動く)が見られたのに対し、2023年以降は負の相関(アウトバウンド検索が増えるタイミングでインバウンド検索が減る)が確認できます。
また為替との相関を見ると、2023年以降はインバウンド検索のトレンドと円安は負の相関、アウトバウンド検索のトレンドと円安は正の相関が強くなっています。これらの傾向を踏まえると、円安の影響が従前よりも強くなっており、インバウンド検索の減少、アウトバウンド検索の上昇に繋がっていると言えます。
■関心先の国別に職種の選好が異なることやその変化も要因の一つ
インバウンド検索の減少およびアウトバウンド検索の増加の要因は為替が全てではないということは、分析結果にも表れています。為替以外の要因として、求職者の希望職種や、その就職実現可能性によって関心先が変わることが挙げられます。
米国など、円安であっても関心先によっては日本からの求人検索が増えていない状況を一部説明しているものと考えられます。
調査概要
調査主体/Indeed Japan株式会社
調査期間/2019年1月〜2024年4月(為替影響については2024年5月)
調査対象/
・「海外から日本」への仕事検索:Indeed上で、日本を除く世界各国から行われた、日本の求人検索
・「日本から海外」への仕事検索:Indeed上で、日本から行われた、日本を除く世界各国(Indeedがサービス展開している60以上の国と地域を対象)の求人検索
関連情報
https://jp.indeed.com/press/releases/20240730
構成/清水眞希