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なぜ、サッカー選手にサウナ好きが多いのか?南葛SCの大前元紀選手、楠神順平選手に聞く熱波師デビューの舞台裏

2024.07.29

7月23日に新小岩のレインボーで熱波師デビュー

 サッカー界では非常に名の知れた面々もいるということで、このチャレンジは大いに注目された。23日は14時と15時の2回にわたってお客さんの前に登場。「南葛SCでサッカーしてる楠神順平です。よろしくお願いします」「88番、大前元紀です、よろしくお願いします」と元気よく挨拶。サンボマスターの「できっこないをやらなくちゃ」、郷ひろみの「ゴールデンフィンガー」、堂島孝平の「葛飾ラプソティ―」の3曲をかけながら、ロウリュウをして、サウナ室内に蒸気を立たせてから1人1人に風を送るというのを10分以上繰り返したのだ。

「今日の午前中にサッカーの練習がありましたけど、それよりはるかにキツイ」と楠神は苦笑。大前も「ホントにその通り」と同意していたが、110度の超高温サウナの中でタオルを回したり、スナップを使って仰ぐというのは高度なテクニックとメンタリティ、体力が求められるのだ。

 サウナ歴26年という大前は「僕は清水にいた時、『さうなしきじ』の近くに住んでいたので、かなりの頻度で通っていて、もともと熱いのは問題なかった。でも仰ぐのは簡単そうで難しかったですね。熱狼さんからは5~6回講習を受けて、宿題を持ち帰って練習する感じですけど、うまくなるためには自主練あるのみ。デビューの日に沢山の人が来てくれて嬉しかった」と大前は笑顔を見せていた。

 一方の楠神はもともとサウナーではなかったといい、「むしろ熱いのは苦手。今までサウナにもほとんど入っていなかった」と言う。そういう人物だけに、酷暑のサウナ室に入るだけでも至難の業。中でタオルを回したり、踊ったり、仰いだりというパフォーマンスを見せるのはハードルが高かったに違いない。

「それでも僕は天野さんの下でプロモーション部副部長をやっているので、地域活動を率先してやるべきだと思い、あえて挑戦しました。サウナとのコラボレーションというのは遊び心があるし、身近なところから僕らの存在を知ってもらえる。そういうところから盛り上げられたら嬉しいですね」と新たな意欲を見せていた。

お客さんに挨拶する大前と楠神(提供=南葛SC)

基本を叩き込んだ師匠の大森さんも「気持ちが感じられた」と絶賛

 彼らの成長を見守ったカリスマ熱波師の大森さんは「今はサウナブームでいろんな熱波師がいるので、仰ぎ方もさまざまですが、僕は『1対1の相手にしっかりと風を送る』という基本を叩き込みました」と言う。

 熱波にも「弱・中・強」というのがあり、弱はフワッとした微風が行く感じだが、強になると痛いと感じるレベル。それをハッキリ分けて仰げるようになるには、やはり努力が必要なのだ。

「南葛サウナクラブの15人を見ていても、途中の段階では全然できない選手もいましたが、5か月間、一生懸命取り組んでくれて、人前に出られる状態になった。彼らを見ていて『お客さんをもてなしたい』『地域を盛り上げたい』という気持ちも強く感じられました。

 とにかく、真剣に取り組むということに叶うものは何もない。彼らの姿勢には本当に頭が下がります」

 大森さんも褒めていたが、「地元のサッカー選手がサウナで仰いでくれるのなら、今度は試合を見にいって応援しよう」という気持ちになるだろう。それが人情のある下町・葛飾区ならなおさらだ。

新小岩のレインボー前に掲げられた「南葛熱波」のポスター(筆者撮影)

南葛サウナクラブのメンバーの登場は毎月第2・4火曜日!

 今後は毎月第2・4火曜日の14時、17時、20時に南葛の選手が登場することになる。大前、楠神のみならず、サンフレッチェ広島や横浜F・マリノスで長くゴールマウスを守ったGK中林洋次、直近の7月21日の東京ユナイテッド戦に先発出場していたDF新井博人らが登場することになる。誰が来るかはその時次第だが、仰がれる側としてはそれも含めて楽しみだろう。興味のある人はぜひレインボーに足を運び、彼らの熱波を受け、そしてサッカー観戦にも出向いてくれれば理想的だ。

 現状、この企画に女性は参加できないが、南葛とレインボーでは女性向けイベントも検討していくという。さらに7月28日のヴェルフェ矢板戦では、ベンチ外になったサウナクラブメンバーが涼しい風を仰ぐ「涼風」を送る試みも実施。女性や子供たちも巻き込んでいく構えだ。

 サウナを通して選手がコンディションをベストに整え、地域の人々たちをハッピーにできるのは本当にいい循環だ。全国各地のサッカー選手にもこういった試みに取り組んでほしいものである。

笑顔を見せる大前と楠神(筆者撮影)

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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