推し活による消費は「飽きることがない」
また、推し活による経済を語るうえで「共感」「飽きることのない消費」という観点が欠かせないと話す。
「人の価値観が多様化する中で、絶対的なアイドルが作りにくくなっています。そこで重要になるのが『共感』です。それぞれの人が『この子、なんかいいな』『自分の感性と合う』という共感を持つことで、イベントに参加するなどの消費行動が生まれます。共感がなければ推し活は成り立たないと言っても過言ではありません。そういった意味では『AKB48』の人数は理にかなっていると思います。
また、『飽きることのない消費』という点にも注目しています。例えば、パソコンや車を買ったとしても、人はだんだん飽きてきてしまうものです。もちろん、同じ対象を推し続ける方もいますが、推し活をする人は次々と推しの対象や、推しとの関連性から推しグッズや自分なりの消費を見つけていくんです。それが繰り返し行なわれています」
牧先生は、推し活市場は今後も拡大していくと予想する。
「近い将来『3人に1人がオタクになる』というデータもあります。年齢や性別を問わず何かしらの推しがいる状態になってきていますし、この流れは続くと思います。推し活に関連する消費は、経済学の中でも今後さらに注目されるでしょう」
推しの元祖「AKB48」の人数の多さがカギ
「誰にとっても一人は共感できる存在がいること」が、経済学から見た押し活では重要な要素。人々の価値観が多様化する中で、『AKB48』はその仕組みを確立させた。共感によって推しとの関係性が強固になり、消費活動につながっていくという。
推し活を理解するためのKeyword【マーケティングの4P+3C】
推し活消費ではマーケティングで用いられる「4P」に加え、「好きな人同士で語り合える空間(Community)」「既存のものにはない創造性(Creativity)」「集めたくなる仕組み(Collection)」が欠かせない。
推し活をする人は、自ら多様な経済行動を生み出していく
推し活には、グッズの購入などの提供されたコンテンツ消費だけではなく、「推しと同じ香水を買った」「推しと同じものを食べた」といった数字や金額だけでは表わせない、心を満たすための能動的な消費行動も存在する。また、ファンアートなど二次創作から新たな消費が生まれている点も推し活の注目すべきポイントだ。
取材・文/久我裕紀
※出典/矢野経済研究所(「オタク」市場に関する調査、2023年)