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国内景気は4年1か月ぶりに3か月連続で悪化、全国2万7159社を対象とした調査

2024.07.25

帝国データバンクは、全国2万7159社を対象とした2024年6月の国内景気動向を調査・集計。景気DI(Diffusion Index、景気動向指数)として発表した。本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。

2024年6月の動向 : 3か月連続後退

2024年6月の景気DIは前月比0.2ポイント減の43.3となり、3か月連続で悪化した。国内景気は、円安にともなうコスト負担の高まりや個人消費の落ち込みにより改善が進まなかった。3か月連続の悪化は2020年5月以来4年1か月ぶり。

6月は、宿泊業や娯楽サービス業など個人向けサービスを中心に個人消費DIが大きく落ち込んだ。円安による原材料価格の高止まりなどコスト負担の増加が景況感を下押しする要因となった。

さらに人件費の増加や2024年問題への対応、不十分な価格転嫁なども悪材料だった。近隣地域からの旅行客獲得が各地域の観光産業の明暗を分けた。

一方で、インバウンド消費が好調だったほか、DX関連投資や民間工事の発注増加、エアコンなど季節商材の販売、活発なイベントの開催などは好材料だった。

今後の見通し : 横ばい傾向で推移

今後の国内景気は、賃上げやボーナスの増加にともなう実質賃金の動向がポイントになる。円安が進むなかで、インバウンド消費の拡大や自動車の挽回生産、世界的な半導体需要の回復などもプラス材料となろう。

他方、下振れ要因として、人件費や物流コストの増加、仕入単価の上昇スピードに価格転嫁が十分に追いつかないことや、家計の節約志向の高まりなどが懸念される。

今後の景気は、日本銀行の追加利上げや人手不足の継続などマイナス要因も多く、横ばい傾向で推移するとみられる。

業界別:10業界中6業界で悪化、諸経費の高止まりや購買意欲の低下が響く

『サービス』や『小売』など10業界中6業界で悪化した。個人消費の停滞が続いたことに加え、円安による原材料価格の高止まりや人件費の増加などが重荷となった。他方、インバウンド需要や半導体、ホテル関連の設備投資などはプラス材料だった。

■サービス(49.2)

前月比0.5ポイント減。3か月連続で悪化。好調なインバウンドに支えられつつも国内旅行者の低迷から「旅館・ホテル」(同3.0ポイント減)は3か月連続で悪化した。

同じく「娯楽サービス」(同1.6ポイント減)も3か月連続で下落。外食の利用が減少しているといった声のあがる「飲食店」(同1.3ポイント減)は2か月連続で悪化した。「広告関連」(同2.5ポイント減)も資材の高騰や紙商材の減少などから2か月連続で落ち込んだ。

他方、患者数が増加してきたといった声のある「医療・福祉・保健衛生」(同0.8ポイント増)は、2か月連続で改善した。

<小売(40.3)>
同0.4ポイント減。2カ月連続で悪化。「飲食料品小売」(同0.6ポイント減)は節約志向から来店頻度や購入点数の減少が響き3カ月連続で悪化。新品購入の買い控えといった声があがる「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同3.9ポイント減)は大きく下落した。住宅需要が厳しく「家具類小売」(同1.5ポイント減)は2か月連続で落ち込んだ。

中古車相場が高騰といった声が聞かれる「自動車・同部品小売」(同1.1ポイント増)は3か月連続で改善。気温上昇から季節需要が高まり「家電・情報機器小売」(同2.4ポイント増)は3か月ぶりに改善した。

<農・林・水産(41.9)>
同1.8ポイント減。2か月ぶりに悪化。「生産量が回復してきたが消費が戻っていない。飼料費が高騰している」(養鶏)といった声や、「購買に結びついておらず買い控えが目立つ」(施設野菜作農)など消費の落ち込みや飼料、農業資材の高止まりが悪材料となった。加えて、住宅着工戸数の停滞により木材需要の減少も下押し要因となった。

他方、魚価の高水準での推移や豚肉価格高騰の継続というように、価格の上昇が売り上げ増加につながり好材料と捉える企業も表れている。

<製造(39.4)>
同0.2ポイント増。3か月ぶりに改善。「精密機械、医療機械・器具製造」(同4.6ポイント増)は医療用機械器具を中心に3か月ぶりに上向いた。自動車業界の不正問題の影響は残るものの、海外受注や生産が安定してきたメーカーもあり「輸送用機械・器具製造」(同1.1ポイント増)は2か月連続で改善。民間の設備投資意欲が高いなどの声が聞かれる「電気機械製造」(同1.5ポイント増)も2か月連続で改善した。

他方、購買意欲の低下が表れたほか、原材料や光熱費などの高止まりが影響する「飲食料品・飼料製造」(同0.2ポイント減)は3か月連続で悪化した。

規模別: 「中小企業」が3か月連続で悪化、宿泊業や飲食店で不調続く

「大企業」と「小規模企業」が3か月ぶりに改善した一方、「中小企業」は3か月連続で悪化した。気温の上昇で飲料やエアコンなどが堅調だったほか、小規模企業では貸切バスの利用もプラス要因。他方、旅行控えは宿泊業や飲食店で下押し要因となった。

■大企業(48.0)

前月比0.1ポイント増。3か月ぶりに改善。気温の上昇や節電意識の高まりで飲料や家電製品の販売が好調な『小売』が2か月ぶりに改善した一方、『不動産』はマンション販売の展示会への来場者数の減少など2か月連続で悪化した。

■中小企業(42.5)

同0.1ポイント減。3か月連続で悪化。『サービス』は、旅行控えなどもあり「旅館・ホテル」が3か月連続、「飲食店」が2か月連続で大きく落ち込んだ。食品価格の値上げで包装資材の需要が低迷した「出版・印刷」も悪化した。

■小規模企業(41.6)

同0.4ポイント増。3か月ぶりに改善。貸切バスの利用や告示運賃が上昇した『運輸・倉庫』が改善した一方で、『小売』は2か月連続で悪化。10業界のうち改善が5業界、悪化が4業界となり、景況感は業界間で二分した。

地域別:10地域中6地域が悪化、近県の旅行客獲得が明暗を分ける

『南関東』『北陸』など10地域中6地域が悪化、『東北』など4地域が改善した。都道府県別では26府県が悪化、19道県が改善となった。インバウンド消費は好調な一方で、近県からの旅行客獲得が各地域の明暗を分けた。工事発注の増加はプラス要因。

■南関東(45.6)

前月比0.2ポイント減。3か月連続で悪化。域内1都3県のうち3県が悪化、「東京」が横ばいとなった。前向きな資金需要の不足や保険・証券業界での不祥事など『金融』が3か月連続で落ち込んだ。また『サービス』も低調だった。

■北陸(40.7)

同1.6ポイント減。2か月連続で悪化。域内4県が2年5カ月ぶりにすべて悪化した。能登半島地震からの復旧・復興に遅れがみられ、『建設』は再び悪化に転じた。国内旅行が伸び悩む一方で、インバウンド消費は好調だった。

■東北(39.2) 

同0.6ポイント増。3か月ぶりに改善。域内6県中4県が改善し、「福島」と「宮城」は3カ月ぶりに上向きへと転じた。設備稼働率が改善して工事の発注も増え始め、近県からの旅行増などもプラス材料となった。

【今月のポイント】買い控えなど個人消費の動向

個人消費DIは、42.8(前月比0.5ポイント減)と2か月連続で落ち込んだ。企業から消費者の節約志向を懸念する声が多数寄せられた。実質賃金は、25か月連続(2022年4月~2024年4月)でマイナスとなっている。

調査概要
調査期間/2024年6月17日~6月30日(インターネット調査)
調査対象/2万7159社、有効回答企業1万1068社、回答率40.8%
調査機関/株式会社帝国データバンク

関連情報
https://www.tdb-di.com/economic-trend-survey/ets202406.php

構成/清水眞希

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