アクセンチュア(NYSE:ACN)の最新調査によると、成熟したサプライチェーンを有する先進企業は、そうでない企業に比べて23%高い収益性を実現していることが明らかになったという。
また同社では、先進企業においてはジェネレーティブAI(生成AI)を含むAIをサプライチェーン全体で実装している割合が6倍高く、これにより、さらなるビジネス価値を生み出していると指摘する。
その調査結果について同社リリースを元にお伝えする。
成熟したサプライチェーンを有する先進企業は変化にも迅速に適応
アクセンチュアの最新調査レポート「次世代への一歩:サプライチェーンの変革(Next stop, next-gen)」では、日本を含む15か国、10業界の1148社におけるサプライチェーンの成熟度を分析している。
サプライチェーンの成熟度とは、企業が生成AIや高度な機械学習といった先進テクノロジーをサプライチェーン全体で活用し、自律的な意思決定や高度なシミュレーション、継続的な改善につなげているかの度合いを数値化したものだ。成熟したサプライチェーンを有する先進企業は変化に迅速に適応し、新たなテクノロジーにもシームレスに対応している。
サプライチェーン成熟度の上位10%の企業(以下、リーダー企業)は2019年~2023年の間に、他社に比べ利益率(リーダー企業11.8%に対し、その他企業9.6%)は23%、株主還元率(リーダー企業8.5%に対し、その他企業7.4%)は15%、それぞれ高くなっている。
■サプライチェーン全体でAIを実装している企業は全体の9%だがリーダー企業は37%が活用
サプライチェーン全体で生成AIを含むAIを実装している企業は全体の9%(日本は15%)に過ぎないが、リーダー企業では 37%が活用している(リーダー企業以外のグローバル平均は6%)。
実際、リーダー企業はAIに多くの効果を期待している。「新製品の開発と発売にかかる時間を30%短縮できるだろう」と回答したリーダー企業は、その他の企業の8倍、「より環境に優しい製品を開発できるだろう」と回答したリーダー企業は、その他の企業の8.5倍、「製造に関わる資源の効率を30%向上できるだろう」と回答したリーダー企業は、その他の企業の6倍だった。
一方で、全体としてサプライチェーンの成熟度は依然として低く、2019年から2023年で平均スコアが50%以上上昇したにもかかわらず、平均値はいまだ36%にとどまっている。
また、メキシコ22%から日本52%、消費財企業31%から航空宇宙・防衛企業40%といった具合に、国や業界によって大きな差が見られる。
■低コストな地域での工場操業といった旧来のやり方に頼ることは今や現実的ではない
調査によると、これらの機能は企業が今日の市場環境で競争力を保つために必須なものだ。今や安定した経済成長や地政学リスクを伴わないグローバル化に期待できる時代ではない。
グローバル規模でのコストを抑えた調達や、低コストな地域での工場操業といった旧来のやり方に頼ることは現実的ではない。
アクセンチュア サプライチェーン&オペレーション戦略 グローバル統括 マックス・ブランシェット(Max Blanchet)氏は、次のようにコメントしている。
「リーダー企業は、次世代のサプライチェーンを構築するために、AIや生成AIを始めとする先進テクノロジーに積極的に投資しています。これらを活用することで、サプライチェーンの効率、敏捷性(アジリティ)、持続可能性、回復力(レジリエンス)を向上、進化させることができます。現在、サプライチェーンを検討する上での主な要素はコスト、品質、納期ですが、脆弱性や非効率性という課題も抱えています。新たなテクノロジーの活用でこうした課題も解決できるのです。
サプライチェーンの再構築には、たとえば、第4次および第5次に至るまでのサプライヤーをほぼリアルタイムで監視してリスクを予測し、短期間で生産を変更し、製品のライフサイクル全体をシミュレートする機能が必要です。次世代のサプライチェーンは、変化に自律的に適応し、持続可能であるよう設計されねばなりません。サプライチェーンの成熟度スコアが25%以下の企業(ほぼ3社に1社が該当)は、迅速な対応が求められます。さもなければ生き残りは難しいでしょう」
さらにアクセンチュア サプライチェーンオペレーション グローバル統括 メリッサ・トゥイニング=デイビス(Melissa Twining-Davis)氏は、次のように話す。
「サプライチェーンの成熟度を車のナビゲーションの進化に例えると、多くの企業は依然として紙の地図と初期のカーナビを使ってサプライチェーンを運営しているようなものです。デザインの生成、製品開発、高度に自動化された生産設備、供給の障害を予測するデータ分析と機械学習など、次世代の機能は導入され始めたばかりです。サプライチェーンを再創造する余地は大いに残されています」
調査について
アクセンチュアのレポート「次世代への一歩:サプライチェーンの変革」は、2023年10月に1148社3000人以上のサプライチェーン関連企業の経営層を対象とした調査に基づいている。
対象国および産業は、15か国(日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、メキシコ、韓国、スペイン、スウェーデン、英国、米国)、10業種(航空宇宙および防衛、自動車、化学、消費財およびサービス、ハイテク、産業機器、ライフサイエンス、金属および鉱業、石油およびガスおよび公益事業)となっている。
構成/清水眞希