VTuberの育成でメタバース事業の売上を倍増させる計画
グリーの売上推移も、ディー・エヌ・エーと似ています。2012年に消費者庁がコンプリートガチャを景品表示法違反であるとの方針を示したために売上が激減。1500億円を越えていた売上高は、2015年6月期に900億円台まで縮小しました。それ以降は600億円から700億円台で軟調な状態が続いています。
なお、2024年6月期第3四半期の売上高は前期比14.7%減の471億円。通期減収での着地が視野に入りました。
※決算短信より筆者作成
グリーは2022年2月に配信を開始した『ヘブンバーンズレッド』が大ヒットするものの、収益への貢献度は限定的。かつてのようにヒット作を生み出して中長期的な収益基盤を構築する難易度が上がりました。新規ユーザーの獲得と、既存ユーザーからの課金が簡単ではなくなっているのです。
「ブルーアーカイブ」や「原神」など海外資本のゲームのクオリティが上がり、ユーザーが流れていることも背景にあります。
グリーはメタバース事業の成長に期待をかけています。中核を担うサービスがライブ配信アプリの「REALITY」。
ただし、足元のメタバース事業の成長は高止まりが見えており、成長のけん引役としてVTuberへの投資を加速しています。2024年1月にVTuber事務所「Vebop Project」から1期生8名がデビューしました。
2024年6月期のメタバース事業の売上見通しは71億円。2026年6月期には152億円まで引き上げる計画を立てています。
この目標を達成するカギはVTuberが握っています。
スポーツ事業がゲーム事業の減収をカバー
MIXIはディー・エヌ・エーやグリーとは辿った道がやや異なります。
ソーシャルメディアが主力の会社でしたが、2013年9月にリリースした『モンスターストライク』がスマッシュヒット。100億円台だった売上高が、瞬く間に2000億円を突破しました。MIXIはコンプガチャ規制の影響をほとんど受けませんでした。
しかし、売上が停滞する憂き目を見たのは2社と同じ。2024年3月期の売上高は1469億円。2025年4月期は横ばいの1470億円を予想しています。
MIXIはスポーツ事業に力を入れており、公営競技の投票サービスである「TIPSTAR」と「チャリロト」が好調。2024年3月期のスポーツ事業の売上高は前期比14.9%増の329億円でした。通期では1億円のセグメント損失を出しているものの、前期の11億円と比べると損失幅を圧縮。黒字化が見えてきました。
公営競技の投票サービスはサイバーエージェントのメディア事業の黒字化にも貢献しており、コロナ禍のデジタル化の中で需要が拡大したものの一つです。
モバイルゲームで急成長した会社は、売上が停滞するという同じ道を辿っています。市場が縮小へと転じる中で、この領域に固執するのは危険でしょう。別事業に投資をして育てた手腕はさすがの一言。今後の事業展開に期待が持てます。
文/不破聡