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按分という言葉を見聞きしたことはあるだろうか。按分は一定の割合に応じて対象を分けることを指し、経費の計算等で使われることが多い言葉。今回は按分の意味を確認した上で、具体的な計算方法を紹介する。按分をするシーンの具体例も紹介するので、経費や予算を算出する機会が多い方は、ぜひ参考にしてほしい。
按分とは
按分は日常生活では使用頻度が低い言葉であるため、イメージを掴めない方もいるかもしれない。まずは按分の意味を確認しよう。
■按分の意味
按分はある一定の割合に応じて対象を分けることを指す。経費や予算などの金額を算出する際に使用されることが多い。
【例】
3人で飲食店に行ったときに300円のハンバーガーを5つ購入し、合計金額が1,500円だった場合。会計を等分する場合は、1,500円÷3人=500円が一人当たりの支払額になる。これを等分ではなく按分する場合は、ある基準を設定した上で支払額を決定する。
例えば、ハンバーガーを食べた個数を基準に設定する場合。Aさんが2個、Bさんが2個、Cさんが1個食べた場合、その個数に応じた支払いを行う。計算は以下の通り。
Aさん300円×2個=600円
Bさん300円×2個=600円
Cさん300円×1個=300円
按分する際の基準は任意で決められることが多いが、客観的に納得のいく基準を設定するのが大切だ。
■按分の類語
按分に似た意味を持つ言葉は、以下が挙げられる。
等分
等分は対象を等しく分けることを指す言葉。按分が任意の基準で対象を分けるのに対し、必ず等しくなるように振り分ける点で異なる。
配分
配分は対象を分割して配ることを指す言葉。按分や等分と異なり、分けて配ることを主眼とした言葉で、割合は規定されていない。
配賦
配賦は「はいふ」と読み、複数の部門や部署で共通して使う費用を分配することを指す。按分は割合に応じて分けるまでを指すのに対し、配賦は割り当て先を決定するところまでカバーしている点で異なる。
按分を使うシーンの例
按分の概要は掴めたものの、実際に日常で按分するシーンがわからない方も少なくないだろう。ここからは、按分を使うシーンの例を紹介する。
■個人事業主が経費と生活費を分ける計算
個人事業主の経費計算は、按分を使うシーンの代表例だ。事業経費と私的な生活費を分けることは家事按分と呼ばれる。按分する割合は明確に決められているわけではなく、客観的に納得のいく基準を自ら設定して計算する。
例えば、業務に関わる移動で自家用車を使用している場合、経費として計算できるガソリン代は、業務で使用した分に限られる。月のガソリン代が2,000円、累計200km移動し、業務で150km、プライベートで50km移動した場合の計算は以下になる。
150km÷200km=0.75(75%)
したがって、ガソリン代2,000円のうち、経費として計上できるのは75%の1,500円分だ。
■地代家賃の計算
地代家賃とは、事業を行う際に必要な事務所や店舗の家賃や土地代を指す。自宅兼事務所の家賃を按分する場合、面積もしくは使用時間を基準に按分するのが一般的。具体的には、事業用に使用している面積の割合もしくは事業のために使用している時間で按分する。
【例】自宅兼事務所が100㎡、家賃が20万円の場合。
・面積をもとに按分する場合
事業に30㎡、私的に70㎡を使用している場合、計算は以下の通り。
30㎡÷100㎡=0.3(30%)
よって、家賃20万円の30%である6万円が経費として計上できる。
【例】使用時間をもとに按分する場合
稼働時間を平日7時間と仮定すると、業務で使用する時間は週35時間。
35時間÷(24時間×7日間)=0.2083…(約20%)
よって、家賃20万円の20%である4万円が経費として計上できる。
■事業経費の割り当て
事業経費の割り当てにおいても、按分を使うことが多い。会社でプロジェクトごとに経費を決定する場合、各プロジェクトの規模や将来性を勘案した上で経費を按分する。
【例】5,000万円の経費予算で小規模店舗2店舗、中規模店舗1店舗、大規模店舗2店舗の合計5店舗を展開する場合。
小規模店舗は500万円、中規模店舗は1,000万円、大規模店舗は1,500万円のように、事業規模に適した按分が有効だ。
(小規模店舗)500万円×2店舗=1,000万円
(中規模店舗)1,000万円×1店舗=1,000万円
(大規模店舗)1,500万円×2店舗=3,000万円
(合計) 5,000万円
家事按分の計算例
ここでは、家事按分の際に触れる機会が多い項目の計算例を紹介する。確定申告等で経費計算が必要になる場合にはぜひ参照してほしい。
■水道光熱費
水道光熱費は、時間や業務に使用するコンセントの数を基準に按分するのが一般的。
【例】一か月の水道光熱費が1万円のケース
・使用時間をもとに按分する場合
稼働時間が平日7時間と仮定すると、業務で使用する時間は週35時間。
35時間÷ (24時間×7日間)=約20%
光熱費1万円の20%である2,000円が経費として計上できる。
・コンセントの数をもとに按分する場合
自宅のコンセント16個のうち、4個を事業用で使用する場合した際の計算は以下の通り。
4個÷16個=0.25(25%)
光熱費1万円の25%である2,500円が経費として計上できる。
■通信費
例えば自宅兼事務所でインターネット回線を契約している場合。この場合は、業務時間を参照して計算すると良いだろう。
【例】一か月の通信量が8,000円、稼働時間が平日7時間の場合
週の業務時間は以下の通り。
35時間÷ (24時間×7日間)=約20%
通信費8,000円の20%である1,600円が経費として計上できる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部