ABEMAの黒字化が話題ですよね。数十年後にはテレビに取って代わる?
「ABEMA」を中核とするサイバーエージェントのメディア事業が黒字化したというニュース(※)が話題になりましたね。YouTubeやNetflixなど、動画・映像配信サービスが多様化している中、ABEMAがほかと違うのは番組表もチャンネルもある〝テレビ〟という点でしょう。だからテレビから移り変わっていくとしたらABEMAが選ばれるのは自然で、テレビが衰退している今、一度黒字化したらどんどん広がっていく可能性はあると見ています。
近年では視聴率の代わりに、TVerなどの見逃し配信動画サービスの再生数が話題になりますよね。これがテレビに取って代わる存在になり得るかというと、そうは思いません。後から好きな時に倍速再生で見られる、過去の超人気ドラマの再放送もやっている。でも、あくまで〝テレビの再放送〟なんですよね。
テレビ自体がまだ元気だった頃の人気番組を流したら今はまだ再生数は取れるかもしれないけれど、これから10年先、20年先になった時、ジリ貧になって、どこかで限界がくると思います。
ABEMAを中核とするメディア事業がABEMA開始後初の黒字になった。単体の黒字化も近い?
ABEMAから見える「可能性」と「リスク」
ただ、やっぱりまだまだ中心はテレビで、テレビからネットTVに一気に変わるんじゃなくて徐々にだと思うので、今回の黒字化はスタートライン。本当の覇権はもう何十年か先で、そういうすごく長い将来を見越して、サイバーエージェントはABEMAをやっていると思うんです。
ABEMAが始まった当初と今では環境が全く異なり、サブスクの時代になって「Netflixがあればいいよね」っていう人たちがどんどん育っているのを実感します。YouTubeやTikTokを見てきた若い世代は、そもそもテレビそのものを見てこなかったわけで、もう“テレビ”という構図自体が必要とされなくなるかも……。60秒のショート動画がスタンダードの今、テレビもABEMAも共倒れというのが一番しんどいシナリオで、その可能性はそこそこあるような気もします。
ABEMAが始まった時、こんなサブスクの時代になって、60秒動画がこんなに流行るなんて誰も想像できなかった。やっぱりそれだけ遠い将来を当てるのってすごく難しいことで、経営と投資って結構似てるなあって感じます。
たまにYouTubeでライブ配信をすると、1500円のスパチャ(投げ銭)を投げて株の質問をしてくれる人がいるんですよ。でも、1500円あったら株の本1冊買えますよね。「質問1つに比べると本1冊のほうが圧倒的に情報量は多いのに」と僕は思ってしまうのですが、自分の知りたいことをピンポイントでリアルタイムで聞けることに本1冊と同じくらいの価値を感じるのでしょう。推しを推すということに価値を感じてくれる人も増えています。
そういう意味ではABEMAがテレビを脅かすけど、さらにそれを脅かすのはTikTokやライブ配信で、これから先、それを脅かすものもまた出てくるんでしょうね。行き着く先はリアルとバーチャルの混ざった仮想現実みたいな方向か……。科学や技術の発達で、そういうサイクルが早くなっているのを感じますね。僕らが想像している以上の世界になりそうな気もするし、それほど変わらないかもしれないし、本当に未来を読むのは難しいですね。
※サイバーエージェントは2024年第2四半期の決算説明会において、動画配信サービス「ABEMA」を中核とするメディア事業が1億6000万円の営業黒字に転じたことを発表した。メディア事業は22年のサッカーW杯カタール大会の放映権獲得で93億円の大赤字だったが、視聴者数の拡大や広告出稿量の増加、競輪チャンネルと連動したネット投票サービスの安定成長などで収益の改善が見込まれていた。
流行を斬る!
【1】ABEMAの黒字はどんどん広がり、テレビを突き放していくかも
【2】黒字化はあくまで第一歩。覇権はもっと先にある
【3】ABEMAを脅かす存在はTikTokやライブ配信!?
文/テスタ
テスタさん
2005年、300万円を元手に株式投資を開始。主にデイトレードで利益を上げ、6年目で億トレーダーに。2015年からは中長期投資も始める。収支は19年連続プラスで、株の生涯獲得利益は100億円を超える。
構成/向井翔太