売り上げが1000万円を超えるラジオトーカーも続出
玉川 そうしてつくられたRadiotalkでは、どんなコンテンツが人気ですか?
井上 リスナーの声に寄り添える番組です。〝ラジオトーカー〟と呼んでいる配信者の中でも人気を集めている人は、メールのお便りやリアルタイムで届くコメントを拾いながら話すのが上手。リスナーと心を通わせながら、興味を引くコメントを拾って話す〝さばく力〟を備えているんです。人気のラジオトーカーは、売り上げが1000万円を超えていき、20代から50代までいます。年齢は関係なく、匿名で顔出ししない人が多いです。
玉川 Radiotalkというサービスの本質はあくまでもトークであり、そしてそれは井上さんが「ラジオ」というよりも「トーク」が好きだからなんですね。
井上 ラジオの何が好きなのかを突き詰めると、やっぱりおしゃべりがおもしろくて。爆笑問題さんの話も、好きになるきっかけはラジオの番組だったものの、YouTubeだったら聴かなかったのかと言われれば、そうではない。あくまでも距離の近い対話が好きなんです。
玉川 興味深い話ですね! そんな井上さんのように「好きなことを仕事にする」アドバイスを教えてください。
井上 好きなことを仕事にすると「絶対に諦めない」という自分に対する安心感が強くなると思います。逆境の時でも「絶対に諦めない」でいられるのは、根底に「好き」という感情があるのが大きいですね。そんな「好きであること」に加えて「得意であること」「市場に求められていること」という要素を、仕事で大切にしてきました。「得意」という点でいえば、私はトークが苦手だけど、配信者やリスナーと向き合ってアプリをプロデュースするのは得意。そのことを意識してプロデュースのスキルを培ったからこそ、音声メディアが「市場に求められている」状況になった時にRadiotalkをつくることができたと思います。
玉川 その3つの要素が重なったところを仕事にすれば間違いない、ということなんですね。多くの人は「好き」よりも「お金」だと考えると思いますが、それではきっとうまくいかないかもしれません。僕はテレビの仕事で「自分がおもしろい」「多くの人がおもしろい」という2つの円を意識してきました。前者だけだと数字(視聴率)は取れない。かといって後者だけだと仕事に確信が持てない。「両方揃っていたら大丈夫」と思うんです。
井上 「好き」にはいろいろあって、例えば起業が「好き」なら、たとえ関心の薄い分野の新規事業でも成功させる人はいますよね。そんな「好き」という気持ちは、仕事のスピードにもクオリティーにも絶対につながると思います。
Radiotalkはスマホ1台で誰でも無料配信できる、音声配信サービス。収録と生放送のいずれかで配信でき、高い匿名性が特徴。リスナーからの支援などにより、生活費を稼ぐ〝職業トーカー〟もいるそうだ。
「好きであること」「得意であること」「市場に求められていること」という3つの要素が揃うことで、事業として成り立つ可能性が高くなる。特に「好き」は不可欠な要素だ。
【今回のまとめ】
対談を通じて感じたのは、井上さんの「本質を捉える力」です。ラジオの魅力を分析し、ビジネスモデルをつくって成功させています。好きだと感じるのは簡単ですが、そこから一歩踏み込んで、好きな理由を探るのは、意外と難しいもの。今回の取材では「好きの本質を正しく捉えることで、仕事にできる可能性が高まる」ということに、気づかせてくれました。
さらにはラジオの本質部分といえる「対話」や「人と人との距離の近さ」は、ラジオ局でなくてもビジネスモデルにできると、井上さんは考えて実行しました。大事にされている「好き」「得意」「市場ニーズ」という3つの要素は、好きを仕事として成功させるための大きな指針になるでしょう。
なぜ好きなのかを突き詰めることがビジネス成功の可能性を高める!
玉川徹さん
テレビ朝日系朝の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』のレギュラーコメンテーター。パーソナリティーを務めるレギュラー番組『ラジオのタマカワ』(TOKYO FM/毎週木曜日11:30~13:00)が大好評オンエア中!
取材・文/柿川鮎子 撮影/湯浅立志(Y2)