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但し書きの意味を知らないまま領収書のやりとりをすると、経理上の問題に発展する場合があります。
意味を知っていても、書き方を間違えることがあるので注意しましょう。
今回は但し書きの必要性や記入例、書き方のポイントなどを解説します。
但し書きとは?どんなときに必要?
但し書き(ただしがき)はビジネスにおいて、重要な意味があります。言葉の意味やインボイス制度との関係性などを見ていきましょう。
■領収書の金銭取引の内容を記載する項目
領収書の但し書きとは、何に対する支払いなのかを記載する項目です。レシートには品目が個別に記載されていますが、領収書には詳細に記載されないケースが多いため、購入したものを明記する但し書きの欄が設けられています。
ビジネスでは領収書に対して但し書きを使うのが一般的ですが、契約書類や文書などで使われるケースも少なくありません。
『但し』は、前述の事柄に対する説明や条件を示します。『ただし、〇〇です』のように、接続詞として使われる機会も多い言葉です。
■インボイス制度でより但し書きが重要に
2023年10月にスタートしたインボイス制度により、『適格請求書(インボイス)』として領収書を発行する場合、但し書きに商品名やサービス名を明記することが義務化されました。
これまでよりも、但し書きの書き方に注意が必要です。軽減税率が適用される場合は、それも明記しなければなりません。
取引内容や消費税額を記載する以外にも、領収書の宛名・適格請求書発行事業者の名称・適格請求書発行事業者の登録番号など、決められた要件を満たさなければならない決まりです。
但し書きが必要な理由とは?
但し書きがない状態で領収書の発行や受け取りをすると、問題が生じます。領収書を発行する側と受け取る側、それぞれの但し書きが必要な理由を見ていきましょう。
■経費として認められない場合がある
但し書きは、支払った金額を経費として認めてもらうために重要です。従業員が業務に必要な商品などを購入した場合でも、『お品代として』のような曖昧な表現だと、必要な経費かどうかの判断ができません。
最悪の場合、経費として認められない可能性も出てきます。経費として認められなければ、従業員は自腹を切ることになってしまうでしょう。また、但し書きがないと、買い手の事業者が消費税の仕入税額控除を受けられなくなります。
仕入税額控除が受けられなければ、多くの税金を払わなければならなくなり、経済的な負担が増します。企業の経営が困難になる原因にもなるでしょう。
■不正利用をされる恐れがある
領収書を発行する側も、但し書きについて正しい認識を持つ必要があります。領収書に記載されている内容が間違っていると、何に対して発行したのか把握できなくなり、正常な経理処理ができなくなります。
領収書の不備により、第三者が不正に経費計上することも可能です。虚偽の領収書を発行すると私文書偽造等の罪に問われ、利用した人だけでなく発行した側も罰せられる可能性があります。
領収書を発行するときも受け取るときも、但し書きの内容が正しいかどうかに気を配りましょう。
但し書きの正しい書き方
但し書きにはただ品名を書くだけでなく、できるだけ詳細にする必要があります。正しい書き方の例を見ていきましょう。
■具体的な品目を記載する
但し書きは『○○代として』と記載するのが一般的です。例えば、『消耗品代として』のように書くのではなく、『ボールペン代として』など、より具体的に書きましょう。
『として』を加える理由は、但し書きの終わりを示すことで、追記されるのを防ぐためです。但し書きの位置は領収書の書式によって異なりますが、多くは金額の下に記載する形式になっています。
軽減税率の対象品目を購入した際は、『飲食料品(軽減税率対象)として』のように記載します。酒類・外食を除く飲食料品や、定期購読契約された週2回以上発行される新聞などが軽減税率の対象です。
会社によって書き方のルールが異なる場合もあるので、確認後にお店などに記入を依頼しましょう。
■但し書きの勘定科目別の記入例
経理担当者は領収書の但し書きを見て、勘定科目別に仕分けします。代表的な記入例をチェックしましょう。
【勘定科目と但し書きの記入例】
- 消耗品費:ノート代として、万年筆代として
- 交際費:飲食代として、お花代として
- 福利厚生費:社員旅行費として
- 会議費:お茶菓子代として、会議室使用料として
- 旅費交通費:出張宿泊代として、ガソリン代として
- 通信費:切手代として、電話代として
- 広告宣伝費:ポスター印刷代として、求人広告掲載費として
- 新聞図書費:書籍代として、新聞代として など
交際費として飲食費を支払った場合は、『飲食代として(コーヒー×5)』のように注文内容も記載し、内容を分かりやすくします。詳細な書き方は、社内ルールに合わせましょう。
■但し書きを書く際のポイントや注意点
領収書に但し書きを書き込めるスペースは限られているので、同じ店でたくさん購入すると、書ききれないことがあるでしょう。
同時に複数の商品を購入した場合は、購入価格が高い代表的な品名を書く決まりになっています。例えば、『プリンターインク他〇点』のように書きましょう。
また、但し書きがなくても経費精算が行える場合もあります。取引年月日や店名などを見て取引内容を思い出し、経理担当者に補足説明をすれば精算してもらえるかもしれません。
しかし、金額が大きい場合は税務調査を受けた際に問題になることから、経費精算してもらうのは難しい可能性があります。
但し書きは正確に記入してもらおう
領収書の但し書きがないと、経費として精算してもらえなくなる可能性があります。インボイス制度で仕入税額控除を受けるためにも、正しく記載することが大切です。
後から適当に書き足したり、虚偽の内容を記載したりすると、罪に問われる可能性があります。領収書を発行する側になったとき、受け取る側になったときの両方で注意が必要です。
もし、但し書きが空欄になっている場合は、発行者に再発行を依頼します。領収書を扱う際は内容を必ず確認し、不備のないようにしましょう。
構成/編集部