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なぜ、うちの会社のR&Dは話題にならないのか?解決のカギを握るのは〝クリエイティブ〟の力

2024.07.23

創刊から38年、常に最前線でビジネストレンドを追いかけてきたメディア『DIME』と国内電通グループ約150社で構成される「dentsu Japan」がタッグを組んで、次のトレンドを探求する『DIME Trend Lab』。

第5回のテーマは、多くの企業が課題感を抱える「R&D」(研究開発)に焦点を当て、次世代のビジネストレンドについて探求する。

2024年6月、電通は企業のR&D(Research & Development)活動を“Creativity”(創造性)で加速させるソリューション「R&D&C」のサービスの提供を開始した。

背景には、R&DがR&D部門だけでは抱えきれないほどの課題に直面しているという事情がある。

「新しい技術や製品の魅力が理解されづらい」「いつ、どれだけの成果が得られるか正確に予測することが難しい」「研究成果が事業化まで至らない」「担当部署に新しい技術や製品を市場に広めるためのマーケティングやブランディング知見が不足している」……課題を挙げればキリがない。

サービスやプロダクトを通じ、企業のR&Dに造詣が深いDIME編集長が「R&D&C」の責任者の木幡容子さんに話を聞く。

木幡容子さん
株式会社 電通
CXCC 未来の暮らし研究部長 プロデューサー
OOH局、第9営業局、1CRP局を経て、電通サイエンスジャムに取締役として出向し企業や大学が所有するテクノロジーのビジネス化を推進。現局では未来の体験を創造すべく新技術を活用したサービス開発や提案、企業のR&D推進、大学と連携した研究などを行っている。

石﨑寛明
株式会社小学館 DIME編集長
2008年に小学館に入社後、広告局を経て、『DIME』に異動してからは家電・通信・IT・文具・マネーなどを手がけ、2013年より『@DIME』を兼任、2022年から『@DIME』編集長に。2023年10月より、雑誌『DIME』編集長も兼任。

R&D(研究開発)のあらゆる悩みを解決するソリューション「R&D&C」

石﨑:「R&D&C」とは聞きなれない言葉ですけど、新組織ではなくソリューションなんですか?

木幡:はい。これまでも電通グループでは私が所属する顧客体験をデザインするCXCC(カスタマーエクスペリエンスクリエーティブ・センター)、クライアントの事業変革に貢献するBXCC(ビジネストランスフォーメーションクリエーティブ・センター)、テクノロジーを活用してあらたな未来の体験を実践するDentsu Lab Tokyoなど、それぞれの領域のプロフェッショナルがクライアントのR&Dに向き合って、課題を解決してきました。

R&Dには抱える悩みは多様だと語る木幡さん

クライアントの抱える課題には「営業と開発の意見が合わない」「自社のアイデアだけだと限界がある」、中には「理系の学生の獲得に苦労している」というものまでありました。

社内を見渡してみると、クライアントのR&Dに関わる部署が同じような悩みを持っていました。だったら私たちが隣通しの連携を強化すればもっとクライアントに満足いただける体験を提供できるんじゃないかと思ったのが「R&D&C」の出発点です。

そこからCXCC、BXCC、Dentsu Lab Tokyoに所属するクリエイターたちが連携して、ソリューションを提供する「R&D&C」というサービスが生まれました。

石﨑:R&Dが抱える課題はそんなにも多様なんですね。R&Dの課題は分かりましたが、そこに「C」=クリエイティブが加わることでどんな課題が解決されるのですか?

木幡:全部です。

石﨑:え、全部なんですか?

木幡:例えば、R&Dに直接かかわる「どのような技術に芽があるのか」や「技術をどのように活用するのがいいのか」という課題はもちろん、「資料を分かりやすく見せたい」とか「社内稟議の通し方」なんかもお手伝いします。

もちろん「広告戦略を作りたい」「プロモーションビデオを作りたい」といった電通が得意な広告分野の相談もあります。

「R&D&C」ではさまざまなソリューションを提案

石﨑:なるほど。企業としてはかなり選択肢が増えるだけでなく、R&Dの円滑化が進むと言いうわけですね。

電通ではこれまでもR&D×クリエイティブに挑戦をしてきている

石﨑:話を聞いていて思い出したのですが、確か最近、電通のBXCCが島根県の竹串やアイススプーンの製造会社と協力して新たなプロダクト開発を進めているという話がありましたよね。これも「R&D&C」に先駆けたR&Dに電通のCを活用した事例なのではないでしょうか。

木幡:まさに。よくご存じですね(笑)。

島根県にある「ひろせプロダクト」という会社なのですが、焼き鳥で使われる木串や竹串、木製のアイススプーンなどを製造する会社です。木串は口入れるものですから安全な加工が求められます。長年の蓄積で、ひろせプロダクトさんは、素晴らしい木の加工技術を持っていたのですが、それは既存の取引先以外でも、活かせるポテンシャルを秘めていました。

そこで電通グループのBXCCチームが、新しい顧客を開拓するミッションを任されたんです。その結果、誕生したのが「オールウッドハンガー」です。

オールウッドハンガーなんて当たり前のように思うかもしれませんが、作っている会社は世界でも稀有な存在です。

ひろせプロジェクトのオールウッドハンガー。クリーニング用ハンガーもある(画像下)

石﨑:そうなんですか!?

木幡:実はフックの部分を可動させるためには高度な技術が必要になるそうです。

世界標準と比較して、日本は生活面はおろかビジネス面において特にサステナシフトが大幅に遅れています。実際、2021年頃からBtoBで販売を開始しておりますが、国内のメーカーからはコスト面の懸念からあまり反応は良くありません。一方で、海外からは制作技術を含め多くの問い合わせがあります。

石﨑:これはまさにBX(ビジネストランスフォーメーション)の事例ですね。

CX方面でのR&DにCの価値を提供した事例はありますか?

木幡:石﨑さんは『恋AIパン』という商品をご存じですか?

石﨑:もちろんです。今年、2月から木村屋總本店で販売されている商品ですよね。

木幡:NECのAI技術を活用し、ABEMAの恋愛番組「今日、好きになりました。」の参加者の会話と、フルーツやスイーツが登場する曲の歌詞をそれぞれ分析。それらのデータをもとに恋愛感情と食品を紐づけて味を表現したのが『恋AIパン』です。

「涙の失恋味」「結ばれる両想い味」などネーミングが特徴的な『恋AIパン』。販売は木村屋直営店やオンラインストアなど

石﨑:三社を結びつけたのは電通グループですか?

木幡:実はそうでなんです。

石﨑:そのコネクションも含め、AI技術を生活者の身近にあるパンにまでアイデアを飛躍させて着地できるのはさすが電通という感じがしますね。

進行中のプロジェクトで何か紹介いただけるものはありますか?

木幡:とある食品商社と進めているBX領域のプロジェクトなのですが、「残渣(ざんさ)」を再利用して新たな食品を生み出そうとしています。和食素材の残渣を食品加工用クリームに転用を考えているのですが、残渣なので原価もリーズナブルです。さらに全国レベルで見ると1日に何トンも生み出している。

従来廃棄してきたものを、食材メーカーや素材メーカーと組んでプラントベースクリームにして商品化できないかと検討しています。

残渣の再利用はサスティナブルの観点からも多くの可能性を秘めている

「こんな技術があります」では伝わらないR&Dの難しさ

石﨑:少し気になるのですが、既存のコンサルティングとはどのように違うのですか?

木幡:コンサルティングはアイデアの提案をしてもその後の展開や商品化までは関わらないのが一般的ではないでしょうか。アイデアをだすだけでなく、カタチにするまでを一緒に歩んでいくのがこのソリューションの特徴になります。

石﨑:いま、どこの企業もR&Dには力を入れています。私たちメディアにも多くの企業から実証実験のリリースは送られてくるのですが、それがどのように展開できるのか、面白さや新規性がどこにあるのかイマイチ図りかねるものも多い。

R&Dだけではなく「R&D&C」として取り組むことで、日の目を見るアイデアや技術は多く存在しそうだなと感じますね。

木幡:私も以前、大学や企業が保有する技術をビジネス化する会社にいたのですが、「こんな技術があります!」だけだと、なかなかそのすごさが伝わらなくて苦労しました(笑)。

「R&D」あるあるに花を咲かす二人

石﨑:そうなんですよね(笑)。

そこに「R&D&C」が入ることで、アイデアのジャンプ、コネクションの応用、そしてメディアへの訴求など多岐にわたる変化があるはずです。

このソリューションで助かる企業はかなり多いと思います。

今後、「R&D&C」はどのようなビジョンがあるのでしょうか。

木幡:私が所属しているのは「未来の暮らし研究部」という部署なんですが。

石﨑:素敵な名前ですよね。

木幡:今はまだ花が咲かない技術でも、未来では花が咲くかもしれない。

企業自身が「良い活用方法がない」と思っている技術でも、まだまだ可能性があるかもしれない。

未来の暮らしを一緒に作っていける技術、素材、マテリアルなどを一緒に作っていきたいなと考えています。

現在だけでなく「未来」も見ている電通グループの新たなソリューション

石﨑:企業や大学にはまだその価値に気づいていない技術やアイデアひとつで劇的に変わる技術など、まだまだたくさんありそうですからね。そこに第三者の視点、クリエイティブな視点を入れることは非常に有意義だと思います。今後も楽しみにしています。

木幡:ありがとうございます。

取材・文/峯亮佑 撮影/須田卓馬

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