誰もが年齢にかかわりなく、その能力を十分に発揮できるよう、働く意欲溢れるシニア世代が活躍できる環境整備を図るため「高年齢者雇用安定法」の改正が2021年4月1日に施行されました。少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持することは喫緊の課題です。
70歳までの就業機会を確保する努力義務に加え、2025年4月からは65歳定年制が義務化されますが、定年後のセカンドキャリアを描く上でも有益な「プラチナ・キャリアセンター」が、2024年6月18日にオープンしました。
場所は地下鉄銀座線「虎ノ門」駅や日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅から徒歩3~4分の住友不動産虎ノ門タワー20階。このセンターは、東京都と東京しごと財団がタッグを組んで開設した施設で、50歳以上のミドルシニア世代のキャリアシフトと、中小企業などの人材確保を後押しすることが目的。企業に籍を置きながら、業務委託での副業・兼業など新たな形態の働き方を支援します。
基調講演ゲストには有森裕子さんが登壇。自らのセカンドキャリアへの準備を語る
オープン当日に開催されたイベントセミナーでは、基調講演ゲストとして、オリンピアンにして元プロマラソン選手、現役引退後は「ハート・オブ・ゴールド」代表理事、ワールドアスレティックス(世界陸連)理事を務めるなど、国際的に活躍している有森裕子さんが登壇。
現役引退後も多様な活動をしている有森さんは、「現役時代から仕事は生きる手段であり、生きるために‶走る〟を次にどう生かすかを考えていた」といいます。そのため「セカンドキャリアも迷うことなく、それまで生きてきた世界で培ってきたことを活かせる世界へ自然に行動していった」と自らが歩んできた経緯を語っていました。
会社に在籍しながら、キャリアを複線化することが重要
その後、同イベントでは、リスタートサポート木村勝事務所代表で、国立大学法人 電気通信大学・特任講師の木村勝氏を講師に迎えて、同センターの第1回セミナーを開催。現在のミドルシニアの働き方を巡る動向をデータとともに解説した上で、「会社に在籍しながら、キャリアを複線化する」重要性・必要性を説きました。
木村氏の講義によれば、「高齢化社会を迎える中、今後ますます高齢者の就業率は高くなることが明らかであり、自律的・自立的キャリアデザインの必要性が求められる」とのこと。「現役時代から副業・兼業をするメリットが大きい」ことを、さまざまな視点から解説しました。
そのメリットとは以下の通り。
1 リスクなく、キャリアの選択肢が増える
2 現在の会社で勤めるメリットを再確認でき、現職で働くモチベーションにつながる
3「経験・スキル・知識」「人脈」「居場所(収入源)」という3つのマルチ化が行われ、セカンドキャリアが盤石になる
4 労働市場での自分の価値が確認できる
5 これから必要な知識が明確になる
6 自律的・自立的なキャリア実践に向けての実践経験が積める
セミナーでは、木村氏が、人生100年時代の人生戦略を述べたリンダ・グラットン(イギリスの組織論学者・コンサルタント)の世界的ベストセラー『ライフシフト』から引用して語った以下の最後のコメントが深く印象に残りました。
「重要なのは、あとで変化を突き付けられるのではなく、いま変化を予期して行動することだ。」(『ライフシフト』終章より)
木村氏いわく、「‶ファーストキャリアは個々人の能力で決まるが、セカンドキャリアは事前に準備したかしなかったか〟で決まる」とのこと。