他人の失敗や言動などを見て、恥ずかしくなってしまうことはありませんか?
このような現象を「共感性羞恥」と言います。
自分とはまったく関係ないことなのに、恥ずかしいという感情が生まれる原因は何なのでしょうか。
今回は、共感性羞恥を持ちやすい人の特徴、そして克服方法をお伝えします。
共感性羞恥とは
共感性羞恥という言葉について説明します。
読み方は?
まず、共感性羞恥の読み方は、“きょうかんせいしゅうち”です。この言葉は心理学で使用されている言葉になりますが、日本での正式な心理学用語ではなく、心理学で使用された英語の直訳としてこの言葉が使用されているようです。
意味は?
共感性羞恥という言葉は、日本では、「他人の恥ずかしいと思う姿を見ると、まるで自分のことのように恥ずかしく感じてしまう」現象に対して使用されています。
具体例は?
次に、共感性羞恥を抱きやすい場面の例をご紹介します。恥ずかしいという感情のほかに、その場から目を背けたくなる、逃げ出したくなるという気持ちも該当します。
・家族など親しい人がミスなどをしている姿を見たとき
・職場で他人が怒られているのを見たとき
・プレゼンなどで緊張して声が震えている人を見たとき
・ドラマなどで登場人物が恥ずかしいセリフを言ったとき、または言いそうな場面
・お笑い番組で芸人がすべってしまったとき
上記のように近しい人以外にも、TV番組の内容にも恥ずかしさを感じてしまう場合があります。
共感性羞恥を抱きやすい人の特徴
共感性羞恥がどのようなものなのかをわかったところで、次にどのような人がこの感情を抱きやすいのかを見ていきましょう。
1.共感力が高い
共感力とは、他人の考えや感情に寄り添うことができる力のことを指します。共感力が高い人は、他人の話を親身になって聞き、他人の気持ちの変化にも敏感です。なので、他人と深い人間関係を築くことができます。
共感性羞恥と聞くとネガティブな感情だと思われがちですが、特徴の1つに共感力の高さがあるように、決して悪いだけの感情ではありません。
しかし、共感力が高い人は自分と他人の境界線が曖昧になってしまいがちです。他人の気持ちをあたかも自分のことのように受け取ってしまうため、他人の言動に対して恥ずかしいという感情を持ってしまうのです。
2.自意識過剰
自意識過剰な人は他人からの自分の見え方を気にしすぎています。つまり、他人からの目を常に意識している状態ということ。
他人からの目を気にするあまり、失敗することをひどく恐れたり、恥ずかしいと思われることに対して敏感になります。1.の共感力の高さもあり、他人との境界線が曖昧なので、他人の恥ずかしさを自分のことのように敏感に受け取ってしまいます。
3.恥ずかしい経験がある
過去に恥ずかしい思いをした経験がある人は、その経験が関係している場合があります。
他人が自分の過去と同じ場面になったときにその経験が思い出されて、当時と同じような感情を抱いてしまっているのです。
共感性羞恥が辛いなら…、克服するための3つの方法
特徴でも触れたように、共感性羞恥はネガティブなことばかりではありません。しかし、本人が辛いと思っているのであれば、克服したほうがいいでしょう。ここでは克服するための3つの方法をご紹介します。
1.自分の感情を受け入れる
共感性羞恥を抱いていることを辛いと思ってしまっているのは、共感性羞恥をネガティブに捉えているからです。まずは、それをやめましょう。
共感性羞恥を抱くということは、他人の気持ちに寄り添える温かい心を持っていると言い換えることができます。ある出来事に対して恥ずかしいと思ってしまうことは悪いことではないのです。
「自分はこんな状況のときに恥ずかしいと思うタイプなんだ」と受け入れてみてください。否定する必要はありません。
2.他人との境界線を意識する
高い共感力や、他人の目を常に意識してしまうといった特徴を持つ人は、他人と自分との境界線が曖昧になりがちです。その曖昧な境界線をしっかりと意識することで、共感性羞恥を抱く機会を少なくできます。
境界線を意識する方法は、他人のことで恥ずかしいと感じてしまったときに、「〇〇さんにこんなことが起こった」と主語を明らかにしてみてください。主語を他人にすることで自分のことではないと意識することができ、客観的にその場面を見ているという状況を理解することもできます。
3.自分の感情と表現する練習をする
他人との境界線が曖昧になってしまうのには、自分の感情よりも他人の感情を優先してしまっていることが原因になっている可能性もあります。そして、自分の感情を優先できない人は、自分の感情をうまく表現できないことが多いです。なので、自分の感情を表現できるようにしていきましょう。
自分の感情を表現するには、まずは、出来事とそれに対して思った感情を紙に書くようにしてみてください。紙に書くことで自分の感情を言葉にする練習になります。他人の感情に左右されることなく、どんなときにどのような感情を抱きやすいのかを把握していくことが大切です。
文・構成/藤野綾子