複業を全面的に解禁し、すでに10年以上も関連制度を運用している、サイボウズとライフネット生命保険。両社の複業制度を取材した。
複業の種類を10に分類。申請者がリスクを認識する
サイボウズは、約1年前に複業制度をアップデートし、社内アプリもそれに合わせて刷新した。複業を始めたい社員は、アプリ上に表示される10項目を確認することから申請をスタートする。
「どれにも該当しない複業は、申請せずに始めてOK。該当する場合は、各ガイドラインを読んで、始めようとする複業で起こり得るリスク対策などを記入してもらいます。リスクが顕在化したら複業を中止するなどの責任を受け入れてもらう前提のもと、原則、自己判断で複業を始められます」
そう説明するのは制度の刷新を担当した人事担当・高木一史さん。
アプリに登録された複業は、ほかの社員にも公開されているのも特徴だ。これにより、ほかの社員の不満やトラブルを防ぐことにつながっているという。複業をしたい社員にはありがたい制度だが、会社にとって、社員が複業をするメリットはあるのだろうか。
「複業は、子育て、介護、趣味などと同様のプライベートな活動であり、企業の利益を阻害しないのであれば、そもそも制限すべきではないというのが、サイボウズとしてのスタンスです」(高木さん)
そうした前提はありつつも、会社側のメリットも感じているという。例えば、営業の場合、社内の意思決定の仕方や組織体制は会社ごとに全く異なるため、他社において何が合意形成の妨げになっているのかなどを知るきっかけになったと言う人もいるそうだ。
人材確保の面でのメリットも大きい。複業というかたちで、社外の人材を確保しやすいだけでなく、サイボウズから転職した社員が仕事の一部を業務委託で継続することも増えてきているという。
「他社でも一度転職した人に複業人材として活躍してもらうケースが増えていると聞きます。仕事内容も人となりもお互いにわかっているので、複業をお願いしやすいようです」(高木さん)
サイボウズでは複業のためのアプリを導入