複業を始めて、最初に訪れる壁のひとつが所得税の確定申告である。正社員で1社から給与所得のみを得る場合は、会社が「年末調整」で手続きを代行してくれるが、複業収入を得る人は自力で「確定申告」し、それに必要な会計帳簿作りも必要だ。どうすればうまく処理できるのか。元国税専門官の小林義崇さんに手続きの勘所を聞いた。
マネーライター
小林義崇さん
元東京国税局の国税専門官で、主に相続税調査の経験を持つ。この経験をもとに、現在は税関係の様々な悩みを解決する記事などを担当。
【1】20万円超の収入で確定申告が必要に!
「給与所得が複数ある場合、どちらの会社をメインにするのか決めなければなりません。そのうえで、TYPE AもしくはTYPE Bに該当する複業のケースで、メインの会社以外から20万円超を得た場合は確定申告の対象です」(小林さん)
【2】収入が20万円以下でも確定申告を!そのほうが住民税申告の手間がない
「収入20万円以下でも住民税はかかります。確定申告すると住民税の手続きも同時に行なえますが、しない場合は、居住地の市区町村で住民税申告が別途必要です。確定申告と異なり、市区町村別に手続きが定められ、手続きが煩雑な場合もあります。なので、20万円以下でも確定申告したほうが手続きはラクですね」(小林さん)
【3】300万円以下でもぜひ青色申告を!税理士に任せず自分でやろう!
事業所得の申告方法には「青色」(事業所得)と「白色」(雑所得)の2種類がある。前者は最大65万円の特別控除があり「開業届の提出」や「複式簿記での会計帳簿の作成」が必須の義務だ。「今では会計アプリが充実しており、初心者でも会計帳簿を作る敷居は低く、税理士に依頼せずに理解を深めるのがおすすめです。なお、国税庁には年間300万円以上の所得が事業所得となる基準がありますが、帳簿を付けておけば同額以下の場合でも青色申告が認められます」(小林さん)
個人の確定申告をサポートする会計アプリも充実
会計アプリでは『freee』や『マネーフォワード』の知名度が高く、月額1000円程度で利用できる。「私自身は、帳簿データの明細にラベル付けができて多角的に整理できる『freee』を使っています」(小林さん)
【4】確定申告するのを前提に複業専用の銀行口座を設けよう
ひとつの銀行口座で複業収入の振り込みやプライベートの支払いが混在すると、帳簿を作る際の仕分けが必要。それぞれのお金の流れもわかりにくくなる。「税務調査が来た時に状況をスムーズに説明するためにも、できれば仕事ごとに銀行口座を分けましょう。口座ごとに会計アプリを連携させておけば、帳簿を作る際の手間が減ります」(小林さん)
取材・文/久我吉史