複業は腕試しになる!スキルの向上に効果大
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大手IT企業のデザインマネージャーだった岡直哉さん。腕試しで始めた複業で腕を磨き、現在は急成長中のスタートアップでCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)を務める傍ら、個人事業も継続中だ。デザイナーとして二足のわらじを履く理由について聞いた。
Sales Marker CDO
岡 直哉さん
多摩美大卒業後、ヤフー(現LINEヤフー)に入社。ブランディング部門でクリエイティブ統括を担当。2024年からSales MarkerにCDOとして参画している。
2つの仕事をするからこそ得られる経験がある
岡さんが複業を始めたのは「会社を一歩出た時に、自分のデザイナーとしてのスキルが通用するのかを知りたかった」から。腕試しのつもりで、クラウドソーシングの「ランサーズ」に登録。様々なコンペで実績を重ね、フリーのデザイナーとして多くの仕事を手がけるようになる。収入が徐々に増えたため、個人事業として法人化する一方、大手IT企業のインハウスデザイナー(社員)として、会社全体のブランディングを担当。マーケティングやCMなど多岐にわたるプロジェクトに携わってきた。
「複業では普段関われない業種の人たちや、ITリテラシーの異なる人たちとやりとりするため、高いコミュニケーションスキルや、ディレクション能力が求められます。その経験は、所属する会社の仕事において他部署との会議の進め方などに還元され、明らかに好循環が生まれました」(岡さん)
一時は所属する会社と複業の収入は6対4くらいの割合に。休日返上の忙しい日々を送っていたという。続けられたのは「デザインすることが好きだから」。コンペに落選しても案件ごとに新しい発見があり「すごくおもしろい」という。
双方で商品やサービスのブランディングを手がけるうちに「会社のブランディングにゼロから携わりたい」と思うようになった岡さん。2024年に転職し、成長著しいスタートアップのSales Markerに、CDOとして参画した。
「取り組み方や予算規模も含めて会社でできることと、個人でできることは全然違います。個人事業の仕事は1割程度のウエートに減りましたが、それでも続けているのは、両方やるからこそ得られる経験があるから。目先の収入だけでなく、どう働けば経験値が貯められるのか、長期的に見据えることは大切だと思います」(岡さん)
Sales Markerではリモートワークが可能で、コアタイムもフレックス。平日の日中は同社の業務に注力する。個人事業としての仕事は基本的に平日の夜や土曜日に。日曜日は家族との時間に充てている。
【正社員としてのデザイン業務】全収入の約9割
ブランドメッセージや世界観の統一などのブランディングを中心に、マーケティングからプロダクトまでデザイン全般の統括を担当。
【個人でのデザイン業務】全収入の約1割
前職時からの個人事業の仕事も継続。自治体のコワーキング施設の立ち上げなど、地方創生に関連するプロジェクトに携わっている。
岡さんがデザインした一例。10年後や20年後を見据えた企業像をブランドデザインでどう表現するかを考えるのが、CDOの職務。
〈複業で成功するコツ〉複業の決め事を自分で守る!
「複業を始めた当初は1か月に2つはコンペに出すノルマを自分に課していました。今は複業する時間帯や曜日をしっかりと決めていて、そのことを仕事相手に理解してもらうことも大事です」(岡さん)
取材・文/太田百合子 撮影/藤岡雅樹