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ギグワーカーは働き方の一種で、比較的新しい言葉です。何となく意味を知っていても、フリーランスや個人事業主との違いを知らない人もいるでしょう。ギグワーカーの意味や仕事内容、メリット・デメリットなどを紹介します。
ギグワーカーとはどんな働き方を指す?
ギグワーカーは近年になって国内で急増し、副業をしたい人や人材を求める企業などで話題になっています。働き方や具体的な仕事の例、フリーランス・個人事業主との違いを見ていきましょう。
■プラットフォームを介した単発の働き方
ギグワーカーは、インターネット上のプラットフォームを利用して、単発で仕事を個人で請け負う人を指します。仕事を探す際は、単発で働きたい人と仕事を提供したい人の双方を取り持つ、クラウドソーシングサイトやアプリなどが主に活用されています。
元々音楽用語である『ギグ』は、ミュージシャンがライブハウスなどで一度限りのセッションや演奏をする際に使われる言葉です。労働者を意味する『ワーカー』とつなげて、単発で働く人という意味でも使われるようになりました。
ギグワーカーの仕事例
ギグワーカーが請け負う内容はさまざまですが、単発・短時間で行える仕事を指すことが一般的です。仕事をする時間は短い場合は数分、長くても数時間程度となります。
配達代行やポスティングなど、経験やスキルが必要ない仕事も少なくありません。例えば、フードデリバリーはギグワーカーの代表的な仕事の一つです。
中には、コンサルティング・カウンセリング・ライティングなどの専門性の高い仕事もあり、専門性が上がるほど単価も高くなる傾向にあります。
■フリーランスや個人事業主とどう違う?
ギグワーカー・フリーランス・個人事業主は、いずれも企業と雇用契約を結ばない点は同じですが、収入の安定性が異なります。ギグワーカーは単発の仕事が多く、常に同じ仕事をもらえるとは限りません。
簡単な仕事が多いギグワーカーに比べ、フリーランスは専門性が高く、長期的な仕事を請け負う傾向があります。フリーランスの仕事はプロジェクト単位が多く、期間は数週間〜数カ月程度です。専門性を生かしながら、次の仕事につなげる働き方がしやすい特徴があります。
そのため、フリーランスや個人事業主に比べると、ギグワーカーの方が収入が不安定になりがちです。
ギグワーカーに注目が集まる背景
複数の会社から単発の仕事を請け負う働き方は、これまであまり一般的ではありませんでした。なぜ、近年になって急に注目されるようになったのでしょうか。ギグワーカーが増加した背景を紹介します。
■雇用不安や副業の解禁
2020年以降のコロナ禍をきっかけに雇用環境が悪化し、雇用不安が広がりました。接客業やサービス業などの一部の職種では、対面での営業に制限が生じ、経営を継続できなくなった例もあります。
ギグワーカーが注目されるようになったのは、これまでと同様に働けなくなったことで大幅に収入が下がり、稼ぎ口を増やしたいと考える人が多くなったためだと考えられます。
また、政府が推進する働き方改革によって、副業を解禁する企業が増えてきたことも、ギグワーカーに注目が集まっている理由です。
多様な働き方が認められつつある社会で、副業によって収入を増やすだけでなく、知識やスキルを伸ばす効果も期待されています。
■さまざまなプラットフォームの普及
労働者と企業をつなぐプラットフォームの普及も、ギグワーカーに注目が集まった理由の一つです。中でも、フードデリバリー代行のギグワーカーの存在は、社会に広く浸透しています。
隙間時間を利用して働きたい人向けの仕事を紹介するアプリも登場し、これまでよりも単発での仕事が身近になりました。
「ギグワークに請け負いたいけれど、ツテがない」という悩みから解放されるようになったことで、誰もが気軽にチャレンジできるようになり、注目度が上がったと考えられます。
■人手不足の深刻化
アフターコロナにおける経済活動の活発化や、少子高齢化による生産年齢人口の減少によって深刻な人材不足に陥る企業が増えたことも、ギグワーカーが注目されるようになった理由です。
経済産業省は人手不足の解消方法として、外部人材を活用する方法を推奨しており、企業向けに『外部人材活用ガイダンス』を公表しています。
ギグワーカーを活用することは、従業員の業務負担の軽減につながります。採用にかかる時間を短縮しながら労働力を増やせるところが、企業側のメリットです。
面接や雇用契約、研修などにかかる費用を負担しなくて済む点を考えても、ギグワーカーを積極的に使う意義は大きいでしょう。
出典:外部人材活用ガイダンス – 経済産業省 関東経済産業局
ギグワーカーとして働くメリット
ギグワーカーには、他の雇用形態にはない魅力があります。ギグワーカーとして働く人には、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
■時間に縛られず自由に働ける
自分のライフスタイルに合わせて、好きな時間・場所で働けるところがギグワーカーのメリットです。本業や育児、介護などをしなければならない状況でも、収入を得やすいでしょう。
ギグワーカーは時間に余裕ができたときだけに働きたい人にとって、メリットを感じやすい働き方です。単発での仕事は、決められた時間や曜日に必ず働く契約をする場合に比べ、仕事の量を調整しやすいといえます。
本業や育児などで忙しいと、急な予定変更が起きやすい傾向があります。しかし、ギグワーカーなら空き時間を使えるので、スケジュール上の都合で副業を断念した人でもチャレンジできます。
■自分のスキルを活用できる
自分のスキルを生かせる仕事を選べるところも、ギグワーカーのメリットです。会社員のように与えられた仕事だけでなく、自分の興味や経験に合わせた仕事に挑戦できます。
正社員は生活が安定しますが、会社側の都合で希望ではない部署に配属される場合もあるでしょう。ギグワーカーは単発でさまざまな仕事に挑戦でき、本業では発揮するのが難しいスキルを生かせます。例えば、語学力を生かして通訳や翻訳の仕事を単発で請け負う人もいます。
スキルを活用したい場合は、自分の持っている資格やスキルをクラウドソーシングサイトのプロフィールに書き出すなど、マッチングを高められるように工夫するとよいでしょう。
ギグワーカーとして働くデメリット
一般的な雇用契約とは違った自由な働き方に、魅力を感じる人は多いでしょう。しかし、デメリットを知らないまま働き始めるのはリスクが大きい行為です。ギグワーカーのデメリットについて見ていきましょう。
■収入が安定せず、キャリアを築きにくい
ギグワーカーには固定給がなく、収入が安定しない点がデメリットです。一定の収入を得るには継続的に業務を受け続ける必要があり、体調不良などで働けなくなると、たちまち収入が途絶えてしまいます。
一般的な雇用契約とは異なり、働きたいと思った日に必ず仕事があるとは限りません。ギグワーカーのみの収入で生きていこうとするのは、かなり難しいでしょう。
また、キャリア形成につながりにくい点もデメリットの一つです。ギグワーカーの仕事は単純作業である場合が多く、就職や独立を考えたときに壁を感じることがあります。
■労働環境が守られていない
ギグワーカーは会社員とは異なり、労働環境が守られていないのが大きなデメリットです。フリーランスや個人事業主と同じで、最低賃金・労働時間・労災保険・有給休暇などの規定が適用されません。
労働基準法に守られていないので、場合によっては企業側に搾取されてしまう恐れもあります。仕事中にけがをした場合でも、労災保険に入っていなければ、自分で治療費を負担しなければなりません。
2021年9月1日から労災保険の対象が変わり、デリバリー配達員・ITフリーランスなども特別加入できるようになりました。ただし、特別加入の場合は保険料の全額が自己負担となる点に注意が必要です。
ギグワーカーが安心して働けるようにどうすべきか、国による議論が進められています。
多様化する働き方の1つ、ギグワーカー
ギグワーカーは単発の仕事をこなす人を指し、隙間時間や短時間だけ働けるところが魅力です。会社員とは違って固定給がないため、収入が安定しないというデメリットはありますが、副業として活用する人が増えています。
働き方の多様化に制度改革が追い付いていない面があり、労働環境をどのように守っていくかなどの課題はあるものの、少子高齢化が進む現代社会での新しい働き方として今後も広まっていく見込みです。
ギグワーカーのメリット・デメリットを理解し、副業として活用するかどうか検討してみてはいかがでしょうか。
構成/編集部