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退職願と退職届は名前こそ似ていますが、同じものではありません。
会社ごとに提出するタイミングが決まっており、提出後の撤回ができないケースもあります。社会人として、両者の違いや書き方のポイントを確認しておきましょう。
退職願と退職届の違いは何?
従業員が会社を辞める際には、『退職願』や『退職届』を提出します。両者を同じものと認識している人もいますが、提出する目的やタイミングが異なります。
■退職願は退職を申し入れる書類
退職願は、退職したい旨を伝え、会社にその可否を問うための書類です。法的には口頭での申し入れも認められていますが、口約束はトラブルに発展しやすいので、書面で提出するのが一般的です。
人事責任者が退職を承諾をする前であれば、本人は退職願を撤回できる可能性があります。ただし、退職願を出した後の撤回は、極力避けた方がよいでしょう。
考えが変わりやすい人は、会社の信用を失います。「またいつか辞めると言うだろう」と思われ、重要なポジションを任せてもらえないかもしれません。上司との関係が気まずくなったり、希望していない部署に異動させられたりするケースもあります。
■退職届は退職を届け出る書類
退職届は、退職の意思を伝える書類です。会社側から退職の承諾を得た後に、退職届で改めて通告をする流れが一般的です。法的には口頭での意思表示も有効ですが、言った・言わないのトラブルを未然に防ぐためにも、書面で伝えるのが望ましいでしょう。
退職願と異なり、退職届は撤回ができない点に注意が必要です。上司または人事が受理した時点で、退職の効力が生じます。会社を辞める意思が固まり、退職日が確定した後に提出しましょう。
■辞表とはどう違う?
『辞表』は、職務を辞める旨を伝える書類です。
代表取締役や専務取締役といった会社と雇用関係にない立場の人が提出するもので、一般従業員に辞表を提出する機会はないと考えましょう。辞表の提出後に会社を離れる人もいれば、役職を外れて一般従業員として働き続ける人もいます。
また、国や地方自治体に勤務する公務員は、勤務先を辞めるときに辞表を提出するのが通常です。この場合の辞表は、会社における退職届と同等のものです。
意思決定をしてから退職するまでの流れ
退職願と退職届は、提出するタイミングが異なります。自分の中で退職を決意したら、まずは退職願を出し、会社の承諾を得た後に、退職届を提出するのが一般的です。意思決定をしてから退職するまでの流れを押さえましょう。
■会社の就業規則を確認する
退職願や退職届を作成する前に、会社の就業規則を確認しましょう。常時10人以上の従業員を雇用している会社には、就業規則の作成が義務付けられています。
退職に関する事項は、就業規則に必ず盛り込まなければならない絶対的必要記載事項であり、退職願を提出する時期についても言及されているのが通例です。
例えば、『退職願は退職日の2カ月前までに提出』と定められているのに、2週間前に提出すれば、後任者の採用や業務の引き継ぎがスムーズにいかず、会社に迷惑をかけてしまいます。お世話になった会社に迷惑をかけないよう、規則は守りましょう。
■上司へ退職願を提出する
退職願を提出する前に、直属の上司に口頭で退職したい旨を伝えるのがマナーです。
何の前触れもなく退職願を出したり、上司を通さずに人事に相談したりするのは、あまり常識的とはいえません。上司に直接伝えた上で、改めて退職願を出すのが望ましいでしょう。
退職願を必要としない会社では、口頭のみで退職の申し出があったと見なされます。会社都合による退職では、退職願は提出しなくてよいケースがほとんどです。
退職願の要否や提出のタイミング、提出先については、就業規則を確認しましょう。
■退職日の決定後退職届を提出する
上司に退職願を出すと、会社は退職を承諾するかどうかの検討に入ります。承諾を得たら、退職日(最終出社日)を決定し、上司に退職届を提出しましょう。
円満退職には、スムーズな引き継ぎが欠かせません。退職日は、引き継ぎにかかる期間を考慮した上で決める必要があります。業務内容にもよりますが、引き継ぎ期間の目安は2週間~1カ月です。
取引先へのあいさつは2~3週間前に行うのが通例です。対面でのあいさつが望ましいですが、難しい場合はメールでも構いません。退職理由を明かす必要はなく、『一身上の都合』とします。
■退職日・最終出社日は事務手続きを行う
退職日・最終出社日は、引き継ぎの最終チェックを行いましょう。自分のデスク回りを整理・清掃した後、会社に備品を返却し、必要書類の受け取りを済ませます。
お世話になった社内の関係者には、直接あいさつをするのが基本です。始業後、空いているタイミングを見計らって、感謝の気持ちを伝えましょう。
退社の時間が近づいてきたら、社内へあいさつメールを送信します。終業の直前に『退職のスピーチ』を設ける会社もあるようです。
退職願・退職届の書き方
退職願と退職届に記載する内容はほぼ決まっています。会社によっては、所定の様式が準備されている場合もあるため、事前に確認した方がよいでしょう。ここでは、退職願と退職届の一般的な書き方を解説します。
■退職願・退職届に書く内容
書き方に絶対的なルールはありませんが、以下の内容を記載するのが一般的です。
- 題名
- 書き出し
- 退職理由
- 退職予定日
- 提出した年月日
- 所属と氏名(押印)
- 宛名
題名は、『退職願』または『退職届』です。本文の1行目には、『わたくしごとではありますが』という意味の『私儀(わたくしぎ)』もしくは『私事(わたくしごと)』と記載します。
退職願の日付は『退職を希望する年月日』とし、退職届の日付は『上司と合意した年月日』としましょう。所属と氏名は、正式名称で記載します。自分の役職名の記載は必要ありません。
書類の提出先は上司ですが、宛名は会社の代表者です。役職と氏名を記載し、敬称は『様』または『殿』とします。
■退職願・退職届を書く時のポイント
会社からの指定がない限り、基本は『縦書き』の『手書き』です。パソコンで作成しても問題はありませんが、手書きの方が丁寧な印象を与えるでしょう。
用紙は、B5サイズまたはA4サイズの無地の便箋を使用します。シンプルなけい線入りの便箋でも、マナー違反とは見なされません。
退職理由は『一身上の都合』とします。会社都合で退職をする場合は、具体的な理由を記載しましょう。以下は、書き方の一例です。
- (退職願)このたび、一身上の都合により、2024年8月31日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます
- (退職届)このたび、一身上の都合により、2024年8月31日をもって退職いたします