2024年7月11日、この日が最終日となったNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議で、バイデン大統領がミスを重ねた。ウクライナのゼレンスキー大統領を、なんとプーチン大統領と紹介してしまったのだ。さらに会見でもハリス副大統領をトランプ前大統領と言い間違えてしまう。
この事態にバイデン大統領に対する大統領選からの撤退圧力が強まると見られているが、本人は強気の姿勢を崩していない。
そんな中、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川 雅浩氏による2024年米大統領選挙に関する分析リポートが届いたので、概要を紹介していきたい。
民主党はバイデン氏撤退の臆測を打ち消すため、今月中にも同氏を大統領候補に正式指名か
米国では6月27日、大統領選挙に向けたバイデン大統領とトランプ前大統領による第1回のテレビ討論会が南部ジョージア州アトランタで行なわれ、互いに90分間批判し合う展開となった。
ただ、バイデン氏は序盤から声がかすれ、途中で言葉を詰まらせる場面が何度もあり、米メディアからは健康状態を不安視する厳しい論調が広がった。直近の各種世論調査の平均でも、バイデン氏の支持率の低下が目立っている(図表1)。
テレビ討論会後、民主党内ではバイデン氏に撤退を求める声も出ているが、バイデン氏は撤退を強く否定している。
なお、共和党は7月15日から18日の全国大会で、民主党は8月19日から22日の全国大会で、それぞれ正式に大統領候補を決定する。
ただ、一部報道によると、民主党はバイデン氏撤退の臆測を打ち消すため、早ければ7月21日にもバイデン氏を正式に大統領候補として指名する可能性があるという。
■接戦が予想される6州のうち、バイデン氏がペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガンで勝つかが焦点
民主党候補はバイデン氏、共和党候補はトランプ氏と仮定した場合、現状はトランプ氏が優勢で、バイデン氏は形勢逆転のために敵失を待つほかない状況にあると思われる。
大統領選挙の勝敗を大きく左右するとみられるのは、オハイオ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州、ノースカロライナ州、フロリダ州、ジョージア州、アリゾナ州、ネバダ州の9州です。
このうち、接戦が予想されるのはペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州と、ジョージア州、アリゾナ州、ネバダ州の6州。
後者の3州はトランプ氏の優位が鮮明になりつつあるため、今後は前者の3州の動向に注目が集まっている。
バイデン氏が、この3州のうち、1つでも支持を落とした場合、再選が非常に困難になると思われるが、直近ではペンシルベニア州で支持率低下の動きがみられる。
■いずれの候補が勝利しても、議会選挙の結果で政治が大きく変わりうるため、議会選挙も要注目
なお、米国の政治を見通す上では、大統領選挙だけでなく、連邦議会選挙の結果も非常に重要だ。上院(定数100議席)は現在、民主党が51議席、共和党が49議席で(図表2)、今回は3分の1の改選と補選1議席の合計34議席を争うことになる。
このうち民主党の現有議席は23で、共和の11を上回ることから、民主党は不利な状況にあり、共和党が過半数を奪回する可能性が高いとみられる。
下院(定数435議席)は全議席改選となり、接戦の見通しですが、やや共和党優勢の模様だ。そのため、バイデン氏が勝利しても、上下両院で共和党が過半数の議席を占めれば、政治的な影響力は大きく低下することになる。
一方、トランプ氏が勝利し、かつ上下両院とも共和党が過半数の議席を占めれば、予算を使って政策を遂行できるため、減税などを前面に打ち出した場合、金融市場はリスクオン(選好)で反応することも予想される。
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構成/清水眞希