2024年3月5日に実施された米大統領選挙予備選、いわゆるスーパーチューズデーに圧勝したことで、ドナルド・トランプ前大統領の大統領候補指名が確実となった。
この動きを受け、日本国内では「もしトラ」から、一部では「ほぼトラ」という見方も広まりつつある。
そんな中、三井住友DSアセットマネジメントから前回のトランプ政権時代の市場動向を分析するリポートが到着したので、「もしトラ」(今や「ほぼトラ」か)に備える意味でも、その概要をお伝えする。
2016年の米大統領選挙ではトランプ氏が勝利、大型減税策への期待で世界的に株価が上昇
前回リポートではトランプ前大統領の公約集「アジェンダ47」の要点を整理したところ、トランプ政権時代と変わらず、米国第一の保護主義という基本方針が確認された。
そのため、11月5日の米大統領選挙でトランプ氏が勝利した場合、市場への影響を考えるにあたっては、トランプ政権の4年間で株、為替、金利がどう動いたかを検証しておくことが重要と思われる。
そこで、今回はトランプ政権時代の株価動向を振り返ってみる。2016年11月8日の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、大規模減税策への期待から世界的に株価が上昇し、いわゆる「トランプ・ラリー」と呼ばれる現象が発生した。
米国でも年末にかけて主要3指数が大きく上昇し、業種別では金融、通信サービス、エネルギーが好調なパフォーマンスとなった(図表)。
■2017年は税制改革の推進で米国株は大きく上昇したが2018年は米中貿易摩擦問題で株安
2017年のトランプ政権1年目も、米国株の堅調推移は続いた。トランプ氏はこの年、中間所得世帯を中心とする減税や、法人税率の引き下げを柱とする税制改革を推進。米主要3指数は年間で2ケタの上昇となった。
また、業種別では情報技術の上昇率が36.9%と最も大きく、大手ハイテク株の上昇も目立つ。
情報技術に次いで高い上昇率となったのは素材、一般消費財だった。
2018年の政権2年目において、トランプ氏は通商政策で対中強硬姿勢を鮮明にして、米中貿易摩擦問題が株式市場の懸念材料となった。
また、同年11月6日の米中間選挙では、民主党が下院の過半数議席を奪取する結果となっている。
この年、米主要3指数は年間でそろって下落し、業種別ではヘルスケアと公益事業を除く9業種がマイナス圏に沈む。最も下落したのはエネルギーで、素材、通信サービスが続いた。
■2019年は利下げで株高、トランプ勝利に過度な警戒は不要で経済・金融政策の見極めが大切
2019年の政権3年目において、トランプ氏は中国製品に対する制裁関税を段階的に導入。米中貿易摩擦問題は一段と深刻化した。
こうしたなか、米連邦準備制度理事会(FRB)は、貿易問題を巡る不確実性を挙げ、7月、9月、10月と、連続利下げに踏み切った。
その結果、この年の米主要3指数はそろって2ケタの上昇、業種別でも11業種全て上昇。ハイテク株の急反発で情報技術、通信サービスが特に好調だった。
2020年の政権4年目は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、金融市場は世界的に大きく混乱したが、米国では大規模な経済対策と積極的な金融緩和が株式市場を支えた。
このようにトランプ政権の4年間は、減税政策は株高要因、米中対立は株安要因となり、米金融政策の舵取りも重要で、ハイテク株の成長が顕著だったといえる。
つまり、トランプ勝利に過度な警戒は不要で、経済・金融政策の見極めが大切と考えられる。
関連情報
https://www.smd-am.co.jp/
構成/清水眞希