「完全養殖ウナギ」が、大きな話題を呼んでいる。
現在、日本の食卓の上にあるウナギの殆どは養殖もの。しかしこれは徹頭徹尾養殖というわけでもなく、ウナギの稚魚シラスウナギをどこかから確保しなければならない。つまり、天然のシラスウナギを堀の中で大きくするのが従来型のウナギ養殖の中身である。
だが、ここ最近シラスウナギを人工的に生育させる技術が確立し、しかも商業化実現のためのコスト削減も着実に進んでいる。我々日本人の食べるウナギは、いずれ完全養殖ものが当たり前になるだろう……と言いたいところだが、実はここにライバルも立ちはだかる。
それは「培養ウナギ」だ。
技術的に困難だった「ウナギの完全養殖」
完全養殖ウナギは、日本人にとっては「悲願」と言っていいだろう。
漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』でも、ウナギの養殖がテーマの回があった。主人公の両津勘吉がこの時手掛けた養殖は、ウナギの卵を海から採取してそれを育てるという手法だった。もっとも、ここは両さんのやることだから結果は大失敗。ウナギの卵だと思っていたのが実はウミヘビだった……という展開だ。
ウナギの完全養殖は、技術的に極めて困難なものだった。が、一方でウナギはかつてよりも個体数が減っている。環境省は2013年に、国際自然保護連合は2014年にニホンウナギを絶滅危惧IB類に指定した。これにより天然ウナギはおろか、養殖のためのシラスウナギの捕獲も以前より遥かに難しいものになってしまった。
もちろん、養殖ウナギからシラスウナギを誕生させ、それを育てる技術を確立させれば状況は大きく変わる。だが、次に発生する問題はコストだ。
完全養殖ウナギの商業化へ大きな前進
現在、筆者は水産研究・教育機構 養殖部門が作成したPDF資料『2050年に完全養殖ウナギを食べられるのか これまでの成果の普及とこれからの取り組み』をブラウザで開いている。
これは数年前の資料らしく、2020年のニホンウナギの人工種苗のコストは1尾3,000円程度としている。しかし、今回広く報道されたのは人工種苗のコストが1尾1,800円ほどになったという内容である。1,200円のコストダウンは、ひとえに研究関係者の甚大な努力の賜物と言えよう。
いよいよ店頭に完全養殖ウナギが並ぶ日が迫っているようだが、一方で可食部だけを生産する「培養ウナギ」も日本への上陸を果たそうとしている。