安全対策を充実させた特有の事情
コンパクトな上にファンやオゾン発生装置といった各種パーツを組み込んでいるので内部はぎっしりと詰まっている。限られたスペースにパーツ配置することが設計上の課題だった。
もう1つ課題になったのが安全対策。普通の布団乾燥機には盛り込まない要素を盛り込むことにした。その数は全部で10に及ぶ。
安全対策で採用したものの一例がエンクロージャー構造。万が一内部の基板から発火しても外装が燃えないようにした。このほかには、子どものおねしょが本体にかかってしまった時などにショートしないような安全対策も盛り込んだ。「電気が流れるものを布団の中に入れるので、火災などの万が一の事態に備えて安全対策に力を入れました」と喜内氏は明かす。
『FOEHN 001』の使用イメージ。電気が流れる本体を布団の中に差し込む独特の使い方をするので、火災などに備えて念入りな安全対策を施した
毎週実施された増産調整と在庫調整
一般販売に先がけ、同社は2023年9月にクラウドファンディングで先行販売を実施した。
設定目標は100万円。プロジェクト開始初日に達成してしまい、最終的には1億5800万円を超える売上をあげた。期日までに支援者に商品を届けることができなかったほど多くの人から支持されたという。
購入者を調べると、いままで布団乾燥機を使ったことがない人と現在所有し使っている人の割合がほぼ半々という結果になった。これまでの布団乾燥機に不満を持っているような人の買い換えも促すことができた形だ。
あっという間に目標を達成してしまったが、ここまで盛り上がる展開は予想していなかった。金崎氏は次のように話す。
「生活課題における確かなニーズは感じていながらも、クラウドファンディング自体は新たな試みであり、目標金額の妥当性も手探りの中でのチャレンジでしたので、最終的に1億5000万円を超える売上になるとは思っていませんでした」
小売店の反応もクラウドファンディングの好成績もあって好意的。クラウドファンディングの支援者に商品を届け終わってからでないと販売できないことから、2023年12月は「いつから受注していいのか」「いつから販売していいのか」「どれだけ商品を回してくれるのか」といった問い合わせがひっきりなしにあったほどだった。
「ちょうど秋冬の需要期だったので、小売店では入荷してもすぐ売り切れてしまう状態を繰り返していました。この3月頃まで、毎週のように増産調整と在庫調整のミーティングをしていました」と振り返る金崎氏。新しくできたものを自社のオンラインストアや小売店にどれだけ分配するかといった調整が常に入り、商品が枯渇する状態が続いた。
それに同社にとって初の布団乾燥機だったこともあり、取引先も増加。寝具店や寝具売場などでも取り扱われることになった。