AI・統計解析で最適見積もりを即時提案
そこで開発されたのが、フッ素樹脂デジタル調達サービス「Quick Value(クイックバリュー)」だ。
操作が簡単なクラウドサービスで、見積もり担当者は画面上でフッ素樹脂製品の PDFデータなどの2D図面や3Dモデルのデータをアップロードして数量・材質を入力することで数値が自動で反映される仕組みだ。
同サービスは数十社の加工会社と連携しており、AIと統計解析およびシミュレーションにより、入力されたデータや加工会社ごとの工場設備、加工種別、加工工数、納期、得意分野などをもとに最適な会社選定を行い、見積もりを自動作成。原則、数値入力後、2時間以内で見積もりができあがるという。
「本サービスでは、参加する各パートナーが納得できる価格と納期設定が重要です。従来、各社の見積もり担当者が手動で行っていた見積もりと、Quick Valueで自動計算する価格が一致することが求められます。これを当社では『フィッティング』と呼んでおり、フィッティングのなかでも、フッ素樹脂の切削加工に用いる各種工具の選定や、工具ごとの加工速度の調整にAI・統計解析技術が役立っています」
今後の展望
同サービスの製品発表会に登壇した取締役副社長 CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)の中澤剛太氏は、2030年頃には、製造業におけるBtoB取引の3割程度は、人手を介さない自動見積もりが浸透するのではないかと述べた。
今後は、フッ素樹脂関連のみならず、対応領域の拡大を展望しているそうだ。また多言語化やグローバル展開も見据えている。
半導体製造の裏側は、現場に関係する立場でなければなかなか知り得ないことだ。フッ素樹脂加工品調達は、煩雑で属人化せざるを得ないのは外側から見ても理解できる。今回紹介した内容は購買調達DXの一例ではあるが、AIが高精度な見積もりや各種レコメンドを行う用途は、他分野にも応用ができるだろう。今後のさらなる課題解決に期待したい。
文/石原亜香利