自動車、スマートフォン、電子機器、家電製品と、半導体が使われるシーンは数知れない。昨今の供給不足が課題となる中、半導体製造業界は、持続可能性の追求、サプライチェーンの不安定さ、製造コスト増し、技術革新の必要性などさまざまな課題に直面している。そんな半導体製造の課題の一つである、半導体製造装置メーカーの装置構成部品の発注業務の負荷の課題と解決策に迫る。
半導体製造業界が抱える課題~購買調達DXの後れ
半導体製造業界においては、供給不足や技術革新の必要性、競争の激化、人手不足などさまざまな課題に直面している。
そうした中、業務効率化の必要性は高い。半導体製造メーカーが担う数ある工程のうち、部品調達における課題がある。半導体に欠かせないフッ素樹脂の工業製品化に成功してから70年以上にわたり、製品を供給してきた株式会社バルカーは、その課題に着目し、ボトルネックを見つけた。
同社によれば、新型コロナウイルス流行や政治不安、稼働人員の減少などの影響からサプライチェーンが混乱し、調達部品におけるQCD(Quality・クオリティ、Cost・コスト、Delivery・デリバリー)のバランスが崩れたことを背景に、購買調達DXの必要性が増しているという。
製造工程DXに比べ、購買調達DXは後れをとっており、属人的で、手作業による業務が中心だそうだ。中でも加工部品の調達は、部品形状や仕様、材質を把握したうえで対応できる加工先の絞り込みをする必要があり、経験豊富な担当者に業務が偏り、属人化しがちだという。
半導体製造に欠かせないフッ素樹脂加工品とは?
同社は自社が抱える課題もあり、フッ素樹脂の加工品の調達工程に着目した。
そもそもフッ素樹脂は半導体製造においてどのような役割を果たしているのだろうか。半導体製造ではさまざまな薬液を利用して洗浄処理などを行うが、製造工程で複数種類の薬液を細かく使い分けているという。しかし、それらは微量でも不純物が混じることは許されない。製品に不良品が発生しかねないからだ。
高純度を維持するには、タンクや配管などに薬液が触れる部分にフッ素樹脂を使用することが重要となる。
同社によれば、フッ素樹脂は酸・アルカリ・溶剤などほぼすべての薬品に対して安定性がある「耐薬品性」、最高260℃の高温環境でも使用できる「耐熱性」、優れた誘電特性を示す「電気的特性」、粘着物が付着しにくい「非粘着性」などの特性を持つユニークな樹脂だという。
フッ素樹脂の代表的な種類として「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)」がある。これはフッ素樹脂の切削(せっさく)加工品では最もポピュラーな材質だそうだ。
同社によれば、業界では昨今、このフッ素樹脂加工品の見積もり業務の効率化や供給の最適化が大きな課題となっているという。
フッ素樹脂加工品を必要とする半導体製造メーカーは、設計した部品図面をもとに加工会社に加工を委託して調達する。素材は加工会社が独自に調達する流れとなっている。しかしこの見積もり業務に非効率さが存在していたことがわかったという。