新しいモノを作り上げるうえで大切な「自分視点」と「権限の集中」
さまざまな部門が携わり、新しいモノを作り上げるプロジェクトを進める上で、御神村さんが意識したのは「自分の視点」だったという。
「さまざまな部門の人が開発に携わるため、それぞれの観点でのベストがあり、それらがハーモナイズされることで、一番良いものができると考えています。ただ、開発のスタート時は『とにかく決めること』をしないと物事が進みません。そのため、プロダクトマネージャーに、ある程度権限を集中させる必要がありました。このような状況では、ハーモナイズが難しくなりがちですが、私たちは小さな組織であることを生かし、ひとつの方向に向かって良いものを選び取ることができました。
時には、さまざまな意見や情報に流されない姿勢も大切です。最終的には、『自分が一番良いと信じたものを選択すること』を心がけていましたね。ただ、市場に商品を出した後は、お客様の声をとにかく聞き、商品をアップデートしてきました。商品の改善点を聞いて、次に生かしていける体制を整えておくことが大切だと感じています」
〝呼吸市場〟を生み出し、豊かな社会を作りたい
こうして発売された『ston s』は、ユーザーから大きな反響を呼んでいる。
「『ston s』は、使って初めて良さがわかる商品。そのため、ユーザー数を増やすことを重視しています。私たちはお客様とのコミュニケーションツールにLINEを使っていますが、公式LINEの登録者数は発売直前の2022年1月には100人ほどでした。そこから、2022年が終わる頃には10万人を突破し、現在の登録者数は18万人を超えている状態です。最近はX上で、『ston s』を使った感想やおすすめのフレーバーなどについての会話を目にすることが増え、うれしく感じています」
現在『ston s』のマーケティングでは、スモールコミュニティへの訴求を重視しているという。
「元々、『ston』はデスクワーカーを想定ターゲットとしていました。しかし、最近の調査から、『ston s』と親和性が高いのは『共通の趣味を持つ人たちの集まり』だとわかってきたんです。そこで、現在は、オンラインゲームの配信者の方などにプロモーションをお手伝いいただいています。他にも、スポーツチームと提携を結ぶ取り組みもしていますね。選手の呼吸のトレーニングに『ston s』を有効活用してもらったり、観客の方に向けた販売会を行なったりしています」
最後に、今後の展望について御神村さんは次のように語ってくれた。
「実現したいのは、〝呼吸市場〟を作ることです。以前は、お水にお金をかけていなかった日本でも『質の良い水』への関心が高まり天然水市場ができたように、呼吸市場も作れると考えています。私たちだけが頑張っても難しいので、想いに共感いただける仲間やさまざまな企業とのコラボレーションを通して、一緒に市場を生み出し、みんなで豊かになっていく社会を作っていきたいですね」
取材/DIME編集部 文/久我裕紀