取材中、彼はしきりに自分のことを〝凡人〟だと表現していた。今の活躍を見たら誰も納得しない自己認識だが本人は大真面目だ。そんな自称〝凡人〟が語る、〝天才〟に勝つための戦略とは──。
声優 江口拓也
えぐち・たくや/茨城県出身。2007年に第1回81オーディションで優秀賞を獲得し、声優の道へ。2008年、『真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝』で声優デビュー。2022年に放送開始したTVアニメ『SPY×FAMILY』では、主人公のロイド・フォージャー役を務めたことで話題に。その活躍が認められ、翌年の第17回声優アワードにて主演賞とMVS賞をダブル受賞。
ラジオの中で見つけた声優という職業への好奇心
アニメ『SPY×FAMILY』の主人公ロイド・フォージャー役で注目を集め、名実ともに今の声優業界を牽引する江口拓也さん。裏腹に、自身の声を「ありふれている」と消極的に評価する彼は、声優としては異色の存在かもしれない。
「自分の声が武器になるとは思っていませんでした。じゃあなぜ声優なのかと言うと、高校のテスト勉強中に聴いていた深夜のラジオがきっかけ。気分転換で見つけた番組の内容が本当におもしろくて、『どんな人がやっているんだろう?』と調べたら、声優さんでした。それまでは声優という職業にフォーカスを当てたことがなかったから、何となく作品のエンディングで名前のテロップが出てくる人たちってくらいの認識しかなくて。『声優ってラジオもやるんだ!』というのが衝撃的でした。将来やりたいことがなかった僕だけど、『この人たちと一緒に人生を過ごせたら楽しそうだな』と思ったのが始まりです」
ラジオの中にいた〝天才〟へ憧れ、上京して専門学校へ入ることを志願した江口さん。家族からは猛反対を受ける。
「それまで声優の『せ』の字も出したことのない人間が急にこんなことを言い出したら……そりゃあ普通は反対しますよね。しかも人前に出るのが苦手で、どちらかと言えば物静かなタイプだったから。でも、そこで反対してもらったことで逆に火がついたのを覚えています。『ああ、どうぞどうぞ』と言われていたら、がんばらなかったかもしれない」
親の援助を受けずに専門学校へ通うことを決めた彼は、学費を捻出しながら学ぶため、早朝から深夜まで新聞配達の仕事と授業を詰め込んだ。当時の睡眠は、毎日3時間ほど。欲しいものを手に入れるための〝等価交換〟のような感覚だったと振り返るが、そこまでしてきたのには理由があった。
「ぶっちゃけ、最初は一生かけてまで声優をやるつもりじゃなかったし、向いているかどうかもよくわからなかった。だけど、全力でやりきっておけば、結果がダメでも諦められる。『あの時、ああすればよかった』なんて、しょうもない後悔を僕の人生に散りばめたくなかったんです」
『あの時、ああすればよかった』
なんて後悔を人生に散りばめたくなかった
江口さんのインタビューは雑誌でも掲載中!DIME最新号は「脳疲労の解消法」と「複業」の大特集
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