今回のM&Aでは多額ののれんが計上される
この買収のポイントは、経営陣が思い描いた青写真の通りに進むかどうかでしょう。
2024年6月11日の決算説明会において、代表取締役社長の申真衣氏は、NENの拠点数を大幅に増やすことは考えていないと明言しました。つまり、NENは拠点を拡大するのではなく、景品を別のものに置き換えて収益性を上げる施策がメインとなります。
GENDAはNENを2900万ドルで取得していますが、NENの2023年12月末時点の純資産は1000万ドル程度。約20億円あまりがのれんとして計上されることになるでしょう。
のれんは純資産と買収額の差額。無形資産として扱われます。買収当時に計画していた収益性が得られれば、問題はありません。GENDAは日本の会計基準を採用しているため、最長20年で償却されるだけです。
しかし、計画と実績の差が乖離すると、減損損失を計上する必要があります。その分は損失となり、場合によっては数十億円規模の巨額赤字を出す引き金にもなります。
GENDAはKiddletonで積み上げたノウハウがあり、1拠点の売上差が3倍という実績もあります。しかし、Kiddletonが展開しているエリアや店舗特性などの特殊要因が関係している可能性を否定できるものではないでしょう。そのノウハウをNENに横流しして、必ず収益性の向上が図れる保証はありません。
上の業績推移を見ると分かる通り、営業利益率が下がっている点も懸念材料の一つ。2022年1月期の営業利益率は10%を超えていましたが、2025年1月期は7.0%まで低下する見込みです。
営業利益率が下がっている要因の一つとして、M&Aを繰り返したことによるのれんの膨張。その償却負担の重さが挙げられるでしょう。2024年4月末時点で計上されているのれんは、111億円にのぼります。
営業利益率は競合のイオンファンタジーに大きな差をつけていましたが、現在はさほど変わらない水準となりました。
GENDAは2024年6月27日に国内でカラオケ機器の卸売販売事業などを行なう、音通をTOB(公開買い付け)で子会社化し、非公開化する計画を発表しました。GENDAは「カラオケBanBan」を買収しており、相乗効果を狙ったものです。またも大規模な買収を仕掛けました。
2024年はGENDAのターニングポイントとなるでしょう。
文/不破聡