2020年にセガサミーホールディングスのゲームセンター事業を買収したGENDAの潮目が大きく変わりました。2024年6月11日にアメリカのミニロケ(無人のゲームコーナー)を運営するNational Entertainment Network, LLC(以下NEN)を連結子会社化すると発表したのです。この会社は8000拠点を持つ大手オペレーター。
セガの売却から4年も経たずに、世界的な会社へと成長しています。
コロナがGENDAとセガの命運を分ける
セガはコロナ禍の2020年8月、経営環境が劇的に変化したことを考慮して構造改革委員会を設置。市場環境の変化に適応できる組織体制の構築や、グループ全体の固定費を中心とした150億円規模のコスト削減を行うと発表していました。
この構造改革の一環としてゲームセンター事業を統括していた100%子会社セガ エンタテインメントの売却を決定します。2020年3月期の時点で同社は10億円近い純損失を計上していました。
受け皿となったのがGENDA。投資ファンド・ミダスキャピタルが出資する会社で、創業者の一人はイオングループのゲームセンター事業であるイオンファンタジーの代表取締役社長を務めた片岡尚氏でした。
セガの有価証券報告書には、セガ エンタテインメントの株式の売却価額が0と記載されています。当時、セガはゲーム事業の他にパチスロ機の販売、リゾートホテルのファニックス・シーガイア・リゾートの運営などを行っていました。家庭用ゲーム以外の事業が中期的にコロナ禍の影響を受けるのは明らか。規模が小さく、集客に苦戦するのが目に見えていたゲームセンター事業をいち早く切り出そうとする様子が見て取れます。
GENDAの設立は2018年5月。国内でアミューズメントマシンのレンタル事業を開始し、中国やアメリカの現地法人を設立していました。GENDAがセガ エンタテインメントを譲受したことで、事業規模が大きく変わります。
GENDAは買収後に保有する資産の見直しを図って減損損失を計上したのか、固定資産の大幅な圧縮を行っています。これによって償却負担を軽くすることができ、GENDAは利益が出やすい状態を作ることができました。
そうした素早い動きは上場しているセガには難しいものであり、母体が軽くなったからこそできたものだと言えるでしょう。
売上400億円の会社がわずか3年後に1000億円へ
GENDAは次々とゲームセンターの運営会社を買収して成長。2023年7月にグロース市場に上場します。ゲームセンターの運営会社が株式を上場するという珍しい事例でした。
2024年4月期の売上高は、前期比20.8%増の556億円、営業利益は同26.5%増の53億円でした。2025年1月期の売上高は前期の1.8倍となる1000億円を予想しています。
※決算短信より筆者作成
2022年1月期は売上高400億円に満たない会社が、3年で1000億円企業にまで成長することになります。
この急成長を後押しするのがNEN。ウォルマートなどにゲームコーナーを設置・運営している会社で、売上高は1億ドル。150億円規模に及びます。GENDAは2900万ドルで全株を取得しました。
ミニロケとは店舗や飲食店などの空きスペースを有効活用するもの。景品獲得を主目的とするアーケードゲームなどを設置します。
GENDAはすでに展開していたKiddletonにて、日本風の景品を取り入れて売上を伸ばすことに成功しました。Kiddletonの1拠点当たりの売上高は、NENの3倍に当たる規模だといいます。このノウハウをNENに流し込み、売上高の更なる拡大を狙う計画です。
経営陣はこのM&Aについて、米国事業を始めた頃から思い描いていた“Dream Deal”であると相当な自信をのぞかせています。