「チョコ南部」以降、ユニークな商品が続々登場
現在は色々な種類のユニークな南部せんべいが販売されている「いわてや」。チョコ南部の商品化以降、斬新なアイデアも受け入れられやすくなったという。
1/8サイズの南部せんべい 「割り明太子せんべい」
「従来の南部せんべいの1/8のサイズの商品も、1/5サイズも『チョコ南部』以降に誕生したものです。
また社長に叱られるかと考え、恐る恐るプレゼンしたところ、『あそこまで粉々にしたんだから、もう何やってもいい!!』となりました(笑)
おかげで、ある程度の粒度をコントロールできるように技術が進歩しました」
“あえて割ったせんべいのシリーズ”も、「チョコ南部」以降に青谷氏が開発し誕生したという。
「割りしみチョコせんべい」
このシリーズは筆者のお気に入りなのだ。割れているため食べやすく、しかも割れた部分に味が染み込んで美味しい。
「割りしみチョコせんべい」は甘さとしょっぱさが融合しつつ、ごまの風味が豊かで止まらない美味しさだ。
「正規品以外のせんべいは、業界用語で『こわれせんべい』、『自家消費』、『久助』等と呼ばれ、安価で大量に売られるのが通説でした。
作り手、工程、味は一緒です。食べる際も割ることが多いのに、少し割れただけで返品になります。そこで、元祖チョコ南部で割る技術が進歩したこともあり、割る専用の機械を開発し、今は正規品と同様のお値段で販売しております。割れた断面にタレが染み込み美味しいのが特徴です」
いわてやの“進化系南部せんべい”、最新のイチオシ商品
青谷氏に最新のイチオシ『進化系南部せんべい』を紹介していただいた。
ひとつめは、「となりのちよこちゃん」。
四角い形をした胡麻せんべいに、チョコをかけた商品だ。筆者も何度もリピートしている。シンプルで香ばしい南部せんべいに、チョコが線状にかかっている。「おひとり様5つまで」と購入制限があるほどの人気っぷりだ。
もうひとつは「BARナンブ」。
厚焼きを1/8にカットし、「山田の醤油」を使った特製ダレを染み込ませ、「ベアレン醸造所」のビール酵母を隠し味としたもの。アーモンドと混ぜた、お酒のおつまみ用に開発された。
濃いめの甘塩っぱい味付けで、確かにお酒が進みそうだ。
いずれの商品も青谷氏以外の担当が、楽しんで企画開発したものとのこと。
円くないせんべいで新たな食シーンへ挑戦
先日、株式会社小松製菓では新企画「ワールドナンブプロジェクト」を立ち上げた。
これは、割れせんべいや切れ端など、商品にならなかったせんべいを有効活用するプロジェクトだ。
「これは小松製菓流SDGSです。弊社は76周年目になりますが、創業者の小松シキが元来から継続していた『勿体無い』活動を現代に表現したものです」
キャッチコピーは、「まるでないカタチをつくる」だという。おせんべいが「円くない」ことと、「まるでない」をかけている。
原料も作り手も工程も一緒なのに、以前は形が悪いだけで価値が下がり安価で売られてしまっていた。これを無駄にせず価値をつけて有効活用するという。
「実は商品にならなかった南部せんべいの一部は家畜の飼料になり、二戸が誇るブランド肉『短角牛』や『佐助豚』が食べているのです。これは業種を超えた究極の地元循環といえます。
『ワールドナンブプロジェクト』は、円くない商品での新たな食シーンへ挑戦でもあり、社内のアイデア募集箱には現場の意見がどんどん挙がってきております。
文字通り、世界への挑戦も視野に入れて取り組んでいます」
世界を視野に入れた小松製菓の挑戦。どんどん進化していくであろう南部せんべいに、今後も注目したい。
取材・文/まなたろう