地方へ旅行や出張に行くと、その地域の名産品が買えるのがひとつの楽しみだ。そんな名産品のひとつである「南部せんべい」。その南部せんべいが今、驚きの進化を果たしているのはご存知だろうか?
進化する南部せんべい
青森県、岩手県で主に生産されている名物「南部せんべい」は、東北出身の筆者には馴染み深い銘菓である。
今年に入ってから仕事で岩手県に行く機会が増えた筆者は、いつも帰りに盛岡駅でお土産を物色する。
そこでふらりと入った「南部せんべい」の「巖手屋(いわてや)」。「久しぶりに南部せんべいを買おうか…」と店内を見回して驚いた。……すごく種類が多い!
「南部せんべいってこんなに色々あっただろうか……?」と思いつつ見てみると、チョコレートを染み込ませたものや、南部せんべいをクランチ状にしたもの、“みみ”のみを商品化したものなどなど……。かなり攻めたラインアップなのだ!!
いつから南部せんべいは、こんなに進化したのだろうか?
ブランド「巖手屋」株式会社小松製菓執行役員であり、進化系南部せんべいの先駆けとなった「チョコ南部」の開発に携わった青谷耕成氏に話を聞いた。
株式会社小松製菓執行役員 青谷耕成氏
大きな反発を経て誕生した「チョコ南部」
さまざまな種類の南部せんべいの中でも、ひときわ目を惹くのが「チョコ南部」だ。いわゆる“南部せんべい”のイメージからはかけ離れた形状に、可愛らしいパッケージ。
小分けで売っているものもあり、新幹線のお供にちょうどいいサイズ感なので筆者も何度も購入している。
「チョコ南部」は、丸い南部せんべいを砕いてクランチ状にし、チョコレートでコーティングしたものだ。砕かれた南部せんべいの食感と香ばしさに、チョコレートの甘さが加わってクセになる味わいだ。
チョコ南部
開発に2年を費やし、2009年に発売開始された「チョコ南部」の商品化に関しては、一筋縄ではいかなかったという。
「これまでは、いかにせんべいを円く綺麗に焼くかにこだわってきた会社です。そのせんべいを焼き立てでいきなり粉々に砕く、ということに大きな反発が社内で起こりました。その筆頭が社長でした。
コツコツとハンマーで南部せんべいを砕き、試作品を作り続け、社内で粘り強くプレゼンを続けた結果、開発から2年かけてデビューに至ることができました」(以下「」内、青谷氏)
昔ながらの南部せんべい「ごませんべい」
チョコ×南部せんべいがハネるという目算があったのでしょうか?
「『ブルーオーシャン戦略』という、従来存在しなかったまったく新しい領域に事業を展開していくマーケティングの手法を用いて企画開発しました。
ですので、今までにない新たな需要を掘り起こすことが目的でした。よって、絶対の自信がありました」
こうして誕生した「チョコ南部」は、発売当初から予想の10倍の売り上げを記録。「チョコ南部」を初めとするチョコレート関連の商品は、小松製菓の売り上げの約2割を占める主力商品に成長した。
現在はチョコレートも自社で開発
チョコレート工場「2door」
以前はチョコ南部のチョコレートコーティング部分を東京の工場に委託していたため、作りたてを販売するのが難しいという問題もあった。
その問題を解決すべく、2016年にチョコレート工場「2door」をオープン。それからは、チョコ南部はすべて二戸で生産している。
さらに、「チョコ南部」から発展した「チョコ南部PREMIUM」を開発。産地にこだわり厳選したチョコレートを使用し、二戸出身のショコラティエ、猿舘英明氏が味を監修している。
チョコ南部PREMIUM」シリーズ
「『チョコ南部PREMIUM』シリーズは、元祖の『チョコ南部』を超える為に企画した商品です。世界の賞も受賞しております。
今年は、ITI(国際優秀味覚賞)で7回の三ツ星を獲得したことでもらえる『ダイヤモンド賞』を受賞しました」