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退職代行というサービスを聞いたことはあるだろうか。退職代行サービスとは、本人に代わって退職意思を会社に伝えてくれるサービスのことだ。使われた会社の立場になって考えてみると「ありえない」とも感じるサービスだが、一体なぜ、このようなサービスが存在するのだろうか。
本記事では、退職代行サービスの概要と金額の目安、退職代行サービスのメリット・デメリットなどについて解説していく。
退職代行サービスとは
退職代行サービスとは、会社を辞めたいという意思を、労働者本人に代わって会社に伝えてくれるサービスのことである。ここでは、退職代行サービスの概要と利用実態について説明する。
■退職代行サービスの概要
退職代行サービスに依頼すると、会社への退職連絡代行、退職手続きのサポートなどのサービスを受けることができる。退職代行サービスを利用すれば、基本的に労働者自身は会社と直接コミュニケーションを取らずに退職することができる仕組みだ。
この仕組みは、会社との間になんらかのトラブルを抱えている人にとっては、お金を払ってでも利用する価値のあるサービスとなる。例えば、上司にパワハラを受けていて退職届を受理してもらえない、退職の意思を伝えても「後任が見つかるまで」など何かと理由をつけて引き止められる、などのケースである。
退職代行サービスの利用金額は、民間業者の場合2万円〜5万円、弁護士が運営するサービスの場合は5万円〜10万円程度が相場だ。民間業者の場合、会社への退職連絡と手続きのサポートがメインのサービス内容となり、費用は比較的安く抑えられる。
一方、退職に際して有休消化や退職金の交渉などを行いたい場合は、弁護士の運営するサービスに依頼する必要があるため、費用はやや高くつくと考えておくとよいだろう。
■退職代行サービスの利用実態
退職代行サービスは、実際にどのような人に利用されているのだろうか。
日本労働産業ユニオンが2022年12月〜2024年1月に行った退職代行サービスの利用実態調査によると、利用者の年代は20代が最も多く、20代だけで全体の半数以上を占めている。また、雇用形態は8割以上が正社員であり、勤続年数をみると1年以内に退職代行サービスを利用している人が最も多い。
つまり、退職代行サービスの利用者は、若手の正社員、かつ早期離職者の利用割合が多いのが特徴であるといえる。
※出典:日本労働産業ユニオン「【退職代行利用者のアンケート調査結果を発表】4963人の利用者から明らかになった退職代行サービスの利用実態とは」
退職代行サービスのメリット
退職代行サービスを利用すると、具体的にどのようなメリットがあるのだろうか。退職代行サービスの利点を2つ挙げていく。
■退職代行サービスのメリット1:退職を切り出す際の心理的負担を感じなくて済む
退職代行サービスを利用すると、退職する本人が直接会社に退職を申し出る必要がなくなる。退職代行サービスを利用する人は、何らかの事情で退職が切り出しづらい状況にある人が多いものだ。
そのような人でも、退職を申し出る際の心理的な負担を感じることなく退職することができるのが、退職代行サービスのメリットである。
■退職代行サービスのメリット2:上司や会社の人と直接顔を合わせずに済む
退職代行サービスを利用すれば、会社の人と顔を合わせることなく退職することが可能だ。会社を退職したい理由として、上司のパワハラや同僚のいじめにあっている、というケースは実際に多い。
退職を代行してもらえば、上司や同僚と最後まで顔を合わせずに会社を辞めることができるため、会社の人間関係に悩んでいる人にとっては大きなメリットとなる。
退職代行サービスのデメリット
退職代行サービスにはデメリットも存在する。退職サービスを利用して失敗しないように、以下の3点に留意しておくとよいだろう。
■退職代行サービスのデメリット1:退職にお金がかかってしまう
本来、労働者自身で退職を申し出れば退職にお金はかからない。しかし、退職代行サービスは基本的に有料のサービスとなるため、退職にお金がかかってしまうことが大きなデメリットだろう。
退職代行サービスを利用する際は、お金をかけてまで利用する価値があるのか、よく考えた上で依頼することが望ましい。
■退職代行サービスのデメリット2:会社の人との人間関係が悪くなる
退職代行サービスを利用して職場の人に挨拶もしないまま退職すると、会社の人との人間関係が悪くなる恐れがある。もともと上司からパワハラを受けていたなどの理由があれば大きな問題ではないかもしれないが、せっかく築き上げた会社の人との人間関係が、退職によって悪くなってしまう可能性は考慮しておかなければならない。
■退職代行サービスのデメリット3:悪質な退職代行業者も存在する
退職代行業者の中には、悪質な業者も存在する。例えば、何らかの理由で退職が成功しなかった際の返金がなかったり、本来会社と交渉を行ってはいけない民間業者が交渉を行ってしまい、会社から訴えられたりするなど、悪質な業者によるトラブルも実際に起きているのだ。
退職代行サービスに依頼する際には、自身の依頼したい内容に見合ったサービスを選び、口コミなどの評判もよくチェックした上で業者を決めるとよいだろう。
まとめ
退職代行サービスは、会社との間に問題を抱えている労働者にとっては、退職にかかる負担を大幅に軽減してくれるサービスである。お金を払ってでも依頼するメリットがある一方で、退職代行サービスにはデメリットも存在する。
退職という人生の節目で後悔しないよう、本当に退職代行サービスに依頼する必要があるのか、依頼しようとしている業者は適切かなどをよく検討し、適切に利用していくことが望ましいだろう。
文/羽守ゆき
慶應義塾大学を卒業後、大手IT企業に就職。システム開発、営業を経て、企業のデータ活用を支援するITコンサルタントとして10年超のキャリアを積む。官公庁、金融、メディア、メーカー、小売など携わったプロジェクトは多岐にわたる。現在もITコンサルタントに従事するかたわら、ライターとして活動中。