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会社には、法定休日、法定外休日という2種類の休日がある。そのうちの1つ、法定外休日とは、会社独自規定の休日だ。それでは、平日ではない国民の祝日や土曜日は、法定休日、法定外休日、どちらなのだろう。
この記事では、迷うことの多い法定外休日にフォーカスし、法定休日との違いや有給休暇、割増賃金との関係を、できるだけわかりやすく紹介する。
法定外休日とは
割増賃金の計算でも、ネックとなることのある法定外休日。いったいどのような休日なのだろうか。その概要を確認しよう。
■法定外休日の定義・意味
法定外休日とは、会社が独自に定めた、法定休日以外の休日のことだ。
一方、法定休日とは、会社が付与義務のある休日で、労働基準法では1週間に1日、または4週間で4日以上と規定している。
たとえば、土日休みの週休2日制の会社であれば、土日のどちらかが法定外休日である。就業規則等で「法定休日は日曜とする」というように特定されていた場合は、土曜が法定外休日となる。特定されていない場合は、歴週(日~土)の最後の日が法定休日となる。
国民の祝日は、法定休日だと考えがちだが、法定休日が特定されていたり、その週、またはその月に法定休日がすでに確保されているなら、祝日は法定外休日となる。
■法定外休日と法定休日の違い
それでは、法定外休日と法定休日の違いを具体的に見ていこう。
まず理解しておきたいのは、法的な付与義務があるかどうかが大きな違いであるということだ。また、会社が従業員に休日労働をさせる際の手続き面でも違いがあることも理解しておこう。
法定休日に休日労働させる場合には、会社と労働者の過半数を代表する者等との間で「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定(サブロク協定)」を結び、労働基準監督署に届け出なければならない。届出をしないと違法になり、会社には「6箇⽉以下の懲役⼜は30万円以下の罰⾦」が科される。
一方、法定外休日に休日労働させる場合は、原則届出は不要だ。ただし、法定外休日に働くことによって、その週の法定労働時間(40時間)を超える場合は、36協定の締結・届出が必要になる。
■法定外休日と有給休暇の関係性
有給休暇は、一定の条件を満たした労働者に付与される有給の休暇である。本来、仕事を休むと賃金が発生しないところを、従業員が心置きなくリフレッシュできるよう、法律で保障された休暇だ。
本来無給のはずの休日を有給にできるとしたら、ありがたい。そこで、法定を上回る休日である法定外休日に有給休暇を当てることは可能だろうか。残念ながら、答えは「NO」だ。
理由は、有給休暇を取得できるのは、あくまで「労働日」であるからだ。
■労働基準法第39条 「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」 |
条文に記載している通り、有給休暇は「労働日」に取得できるのであって「労働義務のない日」である休日に当てることはできないのだ。
※出典:厚生労働省「労働基準法」
法定休日と法定外休日では「割増賃金」が異なる
例えば、土日が休日の会社において、同じ休日出勤なのに、土曜に出勤したときと、日曜に出勤したときの休日出勤手当の額が違うという経験をしたことはないだろうか。
会社がわざと差を設けているわけではない。休日出勤でも、法定休日と法定外休日とでは、割増率が異なるのだ。
法定休日の場合、休日労働となり、割増賃金の対象になる。対して、休日労働とはならず、基本的に割増賃金の対象にならないのが法定外休日だ。ただし、法定外休日に出勤することで、その週の労働時間が40時間を超えた時は、超えた時間については、時間外労働の割増賃金の対象となる。
■割増賃金の意味と計算方法
会社は従業員に法定労働時間を超えて、または休日や深夜に働かせた場合、通常の賃金に一定の割増率をかけた特別な手当を支払う必要がある。これが割増賃金だ。
割増率は、何時間、またはいつ働くかによって、次のように決まっている。
種類 |
条件 |
割増率 |
---|---|---|
時間外労働 |
法定労働時間を超えたとき |
25%以上 |
1か月・1年の限度時間を超えたとき※1 |
||
1か月60時間を超えたとき |
50%以上 |
|
休日労働 |
法定休日に働いたとき |
35%以上 |
深夜労働 |
22時から5時までの間に働いたとき |
25%以上 |
※1 36協定に定める時間外労働の上限時間:1か月45時間、1年360時間など。
時間外労働や休日労働が深夜に及んだ場合の割増賃金は、複合して計算可能。
・時間外労働+深夜労働 25%+25%=50%以上
・休日労働+深夜労働 35%+25%=60%以上
しかし、休日労働が法定労働時間の8時間を超えた時は、休日労働と時間外労働を複合して計算することはできない。休日には法定労働時間(8時間)の概念がないので、時間外労働の問題にならないからだ。具体的な割増賃金の額は、次の計算式に当てはめて算出する。
1時間あたりの賃金額×残業した時間数×それぞれの割増率 |
なお、1時間あたりの賃金額の計算には、基本的に各種手当も含むが、次の7つの手当は算定の基礎から除く。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当(例 単身赴任手当)
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金(例 結婚手当)
- 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例 夏・冬のボーナス)
除外理由は、上記の手当が、従業員の個人的な事情などで支給されたり額が変わるためだ。たとえば、遠方に住んでいるなどで通勤手当が多い人ほど割増賃金が高くなると、不公平になる。
なお、上記の手当が個人的な事情ではなく、従業員に一律や定額で支給される場合などは、手当の名称に関わらず、算定の基礎に含まれる。
通勤手当は従業員全員一律1万円 |
それでは、例を挙げて、法定休日と法定外休日の具体的な計算方法を見てみよう。
【基本データ】 ・月給 基本給250,000円+業務手当10,000円+通勤手当20,000円=280,000円 ・1か月の平均所定労働時間 166.6時間 ・1時間あたりの賃金 (基本給250,000円+業務手当10,000円)÷166.6時間≒1560円 ※通勤手当は除く |
まず、法定休日に出勤した場合から計算する。
■法定休日の割増賃金
例1 勤務時間 9時~18時 休憩1時間
休日労働時間 |
9時間-休憩1時間=8時間 |
割増率 |
休日労働の35% |
割増賃金 |
時給1560円×8時間×1.35=16,848円 |
例2 勤務時間 14時~23時 休憩1時間
休日労働時間 |
9時間-休憩1時間=8時間 |
割増率 |
・休日労働の35% ・休日労働の35%+深夜労働の25%=60% ※22時~23時の1時間は深夜労働 |
割増賃金 |
・時給1,560円×7時間×1.35=14,742円 ・時給1,560円×1時間×1.6=2,496円 合計 14,742円+2,496円=17,238円 |
次に同じ例で、法定外休日の場合を計算する。
■法定外休日の割増賃金
例1 勤務時間 9時~18時 休憩1時間
※1週間の法定労働時間40時間に前日までに達していたとする
休日労働時間 |
9時間-休憩1時間=8時間 |
割増率 |
時間外労働の割増率25% |
割増賃金 |
時給1560円×8時間×1.25=15,600円 |
例2 14時~23時 休憩1時間 1時間
休日労働時間 |
9時間-休憩1時間=8時間 |
割増率 |
・時間外労働の25% ・時間外労働の25%+深夜労働の25%=50% ※22時~23時の1時間は深夜労働 |
割増賃金 |
時給1,560円×7時間×1.25=13,650円 時給1,560円×1時間×1.5=2,340円 合計 13,650+2,340円=15,990円 |
例1:法定休日(16,848円)と法定外休日(15,600円)の割増賃金の差額 1,248円
例2:法定休日(17,238円)と法定外休日(15,990円)の割増賃金の差額 1,248円
このように、法定休日と法定外休日では、割増賃金にも1,000円強の差が生じる可能性がある。
※出典:大阪労働局「割増賃金」
まとめ
これまで見てきたように、法定外休日と法定休日には付与義務の有無など、明確な違いがある。とくに割増賃金に関しては、給料の額に影響を及ぼすほどの大きな差だ。違いをしっかり理解し、出勤する場合も休む場合も、混乱することなく休日を活用していきたい。
文/木戸史(きどふみ)
立命館大学文学部卒業後、営業、事務職、編集アシスタントなどを経て、社会保険労務士事務所で社労士として勤務。現在はライターとして活動しており、社労士として多くの中小企業に携わった経験を生かし、ビジネスマンに役立つ法律知識をできるだけわかりやすく発信している。