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「パタハラ」が周囲から仕方ないと思われやすい理由と職場で行なうべき対策

2024.07.26

ビジネスにおいて「パタニティ・ハラスメント(以下:パタハラ)という言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。しかし、筆者としては聞いたことがある人はいても「何を意味するか」を正しく理解している人は少ないように感じる。

パタハラは、少子化の進む我が国において、子育てしやすい環境を阻害する大きな課題である。だからこそ読者諸兄には正しい知識を持ち、パタハラのない職場環境づくりを推進していただきたい。

そこで本記事では、パタハラの意味や事例、対策について解説していこう。

パタハラとは

はじめに、パタハラの意味と定義について確認しよう。

■パタハラの意味・定義

パタハラとは「パタニティ・ハラスメント(通称:パタハラ)」の略であり、家庭に乳幼児がいる父親に対する嫌がらせという意味を持つ。

具体的には、男性が育児のために育児休暇や育児時短を申請したり取得したりすることに対して、上司や同僚等から不利益な扱いや嫌がらせを受け、就業の環境を害されることを意味している。また国の指針や法令では、パタニティハラスメントという用語は使われず、マタニティハラスメント、パタニティハラスメント、ケアハラスメントの3つをまとめた「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」と呼ばれている。

※出典:厚生労働省 あかるい職場応援団「『動画で学ぶハラスメント』動画で学ぼう『パパの育児休業取得等ハラスメントの実態』」

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの定義

職場における妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは、職場において上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいう。

この時に妊娠した女性労働者に対するハラスメントを「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」といい、育児休業等を取得した男性労働者に対するハラスメントを「パタハラ」という。

※出典:厚生労働省 あかるい職場応援団「ハラスメントの定義」

パタハラの事例

続いてパタハラの事例を見ていくことにしよう。

■事例1

育児のための休暇や時短を申請した男性に対して、「君が子供を生むわけではないから関係ないでしょう?」「ただでさえ忙しいのだから」「男は仕事するものだ」など男性が育児をすることに対する否定的な意見や、忙しい時期だから休暇は認めないと申請取得を認めない事案が発生した。

育休の取得は男性女性関係なく労働者の権利である。法律で決まっているため要件を満たした労働者の育児休業の申し出を拒むことはできない。

■事例2

育児のために残業を断った者、時短勤務をした者に対して「仕事を任せられない」「評価を落とす」などの示唆、同僚からも「こんな忙しい時に短時間勤務かよ?良いご身分だね」などといった精神攻撃を受ける。

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、もしくは仕事を与えない「過少要求」は典型的なパタハラの一種である。

■事例3

育休を取得した社員に対して「休みをとったんだろ?別にやめてもらっても構わないから」という解雇の示唆などの嫌がらせ行為、「このままここで働かせるわけにはいかないから異動してもらうよ」や「給料を下げる」という不利益な配置転換などの嫌がらせを受ける。

特に減給は労働者として最重要な事項のひとつであり正当性がない場合は給与減額は不可能である。それでも減給を示唆する発言は悪質なパタハラといえる。

パタハラが「仕方ない」と考えられやすい原因と背景

ここでは、パタハラが「仕方ない」と考えられやすい原因と背景について解説していく。

考えられやすい原因は主に3つにわけられる。

1、育休を取得しにくい職場環境

1つ目の原因は育休を取得しづらい雰囲気と周りの理解不足からである。

男性が育児に参加することに対して理解が十分ではない職場では男性が育休取得することや、仕事と育児を両立させることに対して強く否定的な意見が数多くある。

そして、職場の上司自身が男性の育児に対しての理解が不足していると、部下が育休を取得したり仕事と育児を両立することに対して理解を示さない、協力的な態度を取らないといったことがあると考えられる。

特に長時間労働や忙しさが通常化している職場では「育休を取られると仕事が増えてしまう」などとしてパタハラが発生してしまうのだ。

そして上司同様に職場で働く同僚からの仕事と育児を両立することに対する否定的な意見や態度、プレッシャーをかけられるなどの精神的重圧が要因で育休を取得しづらい雰囲気がある。

これは育休の制度に対する知識不足によって引き起こされているといえる。

2、企業の育児休業制度の不備

2つ目の原因は企業の育児休業制度の不十分さがあるからである。

育児休業制度が整備されていない職場では男性が育休を取得することに対して理解やサポートが不足していることがある。育休制度が充実していない場合、男性が育休を取得する事に対してためらったり、周囲から育休取得を反対されたり、育休中に仕事上の責任を押し付けられたりなどの問題が発生してしまうなどのトラブルが起こる可能性がある。また、問題を未然に防ぐ制度が不十分である点も挙げられる。

そして問題視されていることがパタハラの多くはハラスメントが発生した証拠が残りづらい状況で発生しているため、受けた側が泣き寝入りをしてしまうなどの問題が表面化しないという課題が存在していると考えられる。

パタハラの対策方法とは

ここでは職場・組織全体で行うべきパタハラの対策方法と育児休暇者への対策について解説していく。

■職場・組織全体で行うべき対策

現在は法律に基づいて以下のような取り組みがなされている。

「男女雇用機会均等法」及び「育児介護休業法」により職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止する措置を事業主に義務付けられている。

また、「改正育児・介護休業法」により育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置が義務付けられた。

2022年10月1日より「出生時育児休業(通称:産後パパ育休)」という新たな制度が創設された。この制度は育児のために子の出生後8週間以内に4週間まで分割し、最大2回まで育児休業とは別で育休を取得できる制度であり、男性の育休を促進する制度である。

このように職場・組織全体で行うべきことはパタハラの事前防止対策とパタハラが発生した場合の迅速かつ適切な対応が求められている。

研修によって育児休業に関する制度やハラスメントに対する理解を深める

育児休業制度や育児休業等に関するハラスメント防止措置について就業規則等に規定して、研修を実施するなどを行い、周知・啓発に取り組むべきであると考えられる。そして研修においてパタハラの事例や自分たちでやれる具体的な対策を紹介し、参加者同士で意見の交換ができる機会を設けるべきである。

また、企業にはパタハラなどのハラスメント防止のために、労働者向けの相談窓口を設置することが義務付けられている。例えば上司が育休取得を渋るような態度を示した場合は相談窓口があることによって状況が解決に向かうことが期待されている。

もしも相談窓口でも解決できない、相談窓口に取り合ってもらえない、解雇されてしまったなどの不利益な事象が発生してしまった場合は、総合労働相談コーナーや、個別労働紛争のあっせんを行っている都道府県労働委員会・都道府県庁、法テラス、みんなの人権110番、かいけつサポートなどの外部の相談窓口を利用してみることも有効であると考えられる。

また事業主は周囲の労働者への業務の偏りを軽減できるよう、業務分担の見直しが必要とされている。

※出典:厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部「職場におけるセクシュアルハラスメント対策や妊娠 ・ 出産 ・ 育児休業 ・ 介護休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!!」

※出典:厚生労働省 兵庫労働局 雇用環境・均等部「職場のハラスメント対策について」

※出典:厚生労働省 香川労働局 雇用環境・均等室「法令で義務付けられたハラスメント防止措置について」

■育児休暇者への対策

育児休暇者への対策は、以下のとおりである。

余裕を持って相談を行う

育児休暇を取得する予定の労働者は仕事の引継ぎに十分な時間を取ることができるように会社や上司に早めの相談をすべきである。

同僚と円滑なコミュニケーションをとる

休業前に同僚と丁寧なコミュニケーションを取っておきたい。育休について理解を深めてもらうことと同時に、復帰後の職場の居心地の良さにつながるため積極的に行うべきである。また育休に対して理解を示してもらった時は感謝をして同僚や上司との仲を深めよう。

男性の育児休暇取得を理解してもらうために、常にコミュニケーションを取っていこう

パタニティハラスメントは男性の育児休暇に対して理解が不足しているとき、そして同僚や上司が強い偏見を持っているときに多く発生することである。しかし、法改正により男性の育児休暇の取りやすさと、男性が育児に参加することに対して周りの理解が深まったように考えられる。

しかし、より理解を深めてもらうために上司や同僚は古い価値観からの脱却を行い、労働者は理解をしてもらうために日頃から周りとのコミュニケーションを取っていくべきであると考えられる。そして理解をしてもらえたときは感謝をしてより絆を深めていこう。

文/太田 佳祐(おおた けいすけ)

人材系企業にて求人広告の営業や人材紹介部署の立ち上げやマネジメントを経験。転職し、新規事業部門にて新事業の立ち上げや採用業務に従事したのちに独立(ライター・カウンセラー・セミナー講師)。2021年に政治分野のハラスメント対策を行う法人を立ち上げ、2023年にフリーランスの事業を法人化。プロスポーツチームや自治体、企業や個人の目標達成を伴走型でしながら、ライターとしての執筆や講演活動も行っている。

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