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組織や企業において人事異動が行われる際、「辞令」という重要な用語が登場する。この辞令とはいったい何を意味するのだろうか。
また、内示や発令、交付といった関連用語とはどのように異なるのだろうか。本記事では、辞令の意味や種類とその取り扱い、さらに辞令に関連する重要な用語について解説していく。
辞令の意味と種類
まずは、辞令の定義と代表的な種類、そして辞令の取り扱いについて詳しく見ていきたい。
■辞令とは
辞令とは、組織が行う採用や退職、職務変更などの重要な任免を、当人に通知する文書のことだ。法律で規定されたものではないが、職務や地位に関する変更を表しているため、辞令を受けた従業員に与える影響は大きく、非常に重要な文書といえる。
■辞令の種類
辞令は会社からの重要な決定を従業員に通知するものであることから、さまざまな種類が存在する。ここでは代表的なものを紹介したい。
昇進辞令
昇進辞令とは、役職制度において、部長、課長、係長など、組織上の地位、官職などがあがることを通知する文書である。
配置転換辞令
会社が労働者の職場を移したり、職務を変更することを通知する文書が配置転換辞令だ。配置転換のうち、勤務地の変更を伴うものを特に「転勤」という。この場合「転勤辞令」とも言い換えられる。
降格辞令
降格辞令は、下位の職位への就任など、降格処分を通知する文書を指す。
退職辞令
退職や定年退職を通知する文書が、退職辞令である。
懲戒辞令
懲戒辞令とは、懲戒処分を通知する文書のことだ。
このように、昇進や異動、退職、懲戒処分など、人事に関する各種決定に応じ、さまざまな辞令が存在する。
■辞令は拒否できる?
原則、受け取る側は辞令を拒否することはできない。ただし、例外的に拒否が可能なケースも存在する。
辞令の拒否が認められた判例として「内宮運輸機工事件」を紹介する。この事件の概要は、会社が従業員に対して突然の配転辞令を行い、それを拒否したことを理由に直ちに解雇したことを問うものである。
この事件では、会社の一方的な配転命令と、それに対する従業員の対応が正当であったにもかかわらず、会社が即座に解雇した措置が、信義則に反し、解雇権の濫用に当たると判断された。この判例から、合理性を欠いた人事権の濫用に該当する辞令は拒否することができると考えられる。
辞令の拒否が認められる例外的な場合もあるものの、原則として、基本的には組織の権限に基づき発令された辞令は、個人の意思で拒否することはできない。その適法性については、状況に応じて慎重に判断される必要があるだろう。
※出典:全国労働基準関係団体連合会「事件名:地位保全仮処分申請事件」
辞令の関連用語
辞令には様々な関連用語が存在する。適切に対応するためには、それぞれの意味を把握しておく必要がある。ここでは、交付、内示、辞令書、交付式4つについて解説する。
■交付
交付とは、書類を引き渡すことを意味する。辞令が発令された後、当該の人物に対して正式に交付されることで、辞令の内容が確定する。交付は、通常は書面や公式な手続きを通じて行われることが一般的だ。
■内示
内示とは、辞令がまだ公式に発令されていない段階で、人事異動や昇進の意向が口頭や非公式な手段で内々に伝えられることを指す。内示は辞令の事前通知として行われる場合があり、その後の辞令発令や交付につながる重要なステップである。
■辞令書
辞令書は、辞令の内容を正式に記載した文書である。辞令は法的な交付義務があるわけではないので、辞令書の様式は特に定められてはいない。一般的には、人事異動の理由や背景、新たな職務の詳細など、その目的に応じた内容が明記されている。
■交付式
交付式は、辞令の公式な交付を祝う儀式やセレモニーのことだ。大企業や役所などの組織や企業においては、入社式や昇進・異動などの際に重要なイベントとして行われている。交付式では、辞令を受け取る人物が公の場で正式に辞令を交付される瞬間を迎える。
まとめ
辞令は、組織や企業において人事異動や昇進、任命などの重要な決定を公式に通知する文書である。辞令には様々な種類があり、それぞれの辞令には該当する人物の名前や新たな職務が明記されていることが一般的だ。辞令は通常、上司や組織の権限を持つ者から直接交付され、受け取った場合は適切に対応することが求められる。
辞令には関連する用語として、交付や内示、辞令書、交付式などがある。交付は辞令を受け取ることを意味し、内示は辞令の内容を公式ではなく内々に示すことを意味する。辞令書は辞令の内容を記載した文書であり、交付式は辞令の公式な交付を祝う儀式やセレモニーである。
辞令は組織や企業における重要な手続きであり、個人の職務や地位の変更に関わるため、その意味と関連する用語について理解することは重要なのである。
文/ほりいともこ
事業会社の経理職として20年以上勤務。幅広い業種や企業規模の経理業務に携わる。現在も経理職として勤務しながら、ビジネス・経理分野のライターとして活動中。