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今さら聞けない「みなし残業」と「固定残業」の違いとメリット、デメリット

2024.07.29

転職活動をしている人などは、求人情報などで「みなし残業」という言葉を目にしたことがあるかもしれない。

このみなし残業の意味を理解していなければ、みなし残業を採用している会社に入社した場合にトラブルになったり、後悔したりする可能性がある。

みなし残業とは、実際に残業をしていなくても一定時間の残業が発生したとみなして、毎月の給与に残業代を加算して支給する制度のことだ。

本記事では、みなし残業とはどういうものかや、固定残業との違い、メリットとデメリットについて解説する。

みなし残業とは

みなし残業には、大きく分けて「固定残業代制におけるみなし残業」と「みなし労働時間制におけるみなし残業」の2種類の意味がある。

両方の制度を含めてみなし残業と呼ぶケースもあれば、それぞれに対してみなし残業と呼ぶケースもある。

そのため、自分の会社や求職先の会社が、どの意味のみなし残業を採用しているかを理解することが大切だ。

ここでは、みなし残業の基本や固定残業との違いについて解説していく。

■みなし残業の基本

みなし残業とは、一定時間の残業があらかじめ発生したとみなして、給与に一定時間分の残業代を加算して支給する制度だ。

みなし残業の種類には、「固定残業代制におけるみなし残業」と「みなし労働時間制におけるみなし残業」があるので、それぞれについて解説していく。

・固定残業代制におけるみなし残業

固定残業代制とは、実際に労働した時間に関わらず会社の就業規則などにあらかじめ決められた一定時間の残業代を、基本給、年俸、一律手当などに含める制度のことをいう。

固定残業代は、定額残業代、見込み残業代、みなし残業代など会社によって呼び方がそれぞれである。

求人票などで、基本給25万円(固定残業代として30時間分5万円を含む)などと記載されているのは、この会社が固定残業代制を採用しているということだ。

・みなし労働時間制におけるみなし残業

みなし労働時間制とは、従業員が事業所外で行う業務や一定の専門分野の業務など労働時間の算定が困難な場合に特定の時間労働したとみなすことのできる制度だ。

例えば、みなし労働時間を8時間とした場合、実際に働いた時間が6時間だったとしても、8時間働いたこととみなされる。

この特定のみなし労働時間を法定労働時間である8時間を超える時間に設定した場合、法定労働時間を超えた時間がみなし残業だ。

このみなし労働時間制におけるみなし労働時間を10時間に設定した場合は、法定労働時間である8時間を超えた2時間がみなし残業になる。

そのため、実際に働いた時間が6時間だったとしても、みなし残業の2時間を含む設定されたみなし労働時間10時間働いたこととみなされる。

みなし労働時間制は、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」「事業場外みなし労働時間制」の3種類だ。

専門業務型裁量労働制は、業務遂行の手段や時間配分などを労働者の裁量にゆだねる必要がある業務で、システムエンジニアの業務や、弁護士の業務などである。

企画業務型裁量労働制とは、事業運営の企画、立案、調査、分析などの業務に携わる人が対象である。

事業場外みなし労働時間制は、業務が会社の外で行われるため、会社が従業員の実労働時間を把握するのが困難である営業職などが対象だ。

■「みなし労働時間制におけるみなし残業」と「固定残業代制におけるみなし残業」の違い

「みなし労働時間制におけるみなし残業」と「固定残業代制におけるみなし残業」は、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めるところは共通している。

しかし、残業代の支払いに関しては、異なるケースがある。

みなし労働時間制は、労働時間を法定労働時間以下に設定していても、法定労働時間を超えてみなし残業が支払われる時間に設定しても、設定された時間を超える残業代は支払われない。

一方、固定残業代制におけるみなし残業は、設定した残業時間を超える残業をした場合は、超えた分の残業代が支払われる。

みなし残業代の計算方法

実際にみなし残業代は、どのように計算されるのだろうか。

ここでは、みなし残業代はどのように算出されるのかについて解説していく。

■みなし残業代の計算式

労働基準法では、法定労働時間を超える時間外労働に対して25%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないと定められている。 

みなし残業代も法に従って計算しなければならず、みなし残業代の計算式は以下の通りだ。

みなし残業代 = 1時間あたりの賃金額 × 時間外労働の割増率 × みなし残業時間

■月給20万円+みなし残業40時間の場合のみなし残業代の目安

例えば、1か月の給与が20万円、1年間の所定労働日数が240日、1日の所定労働時間が8時間の会社で、みなし残業時間を40時間分とした場合の計算式は以下になる。

1時間あたりの賃金額=20万円÷(240日×8時間÷12か月)=1,250円

みなし残業代=1,250円×1.25×40時間=62,500円

月給20万円+みなし残業40時間の場合のみなし残業代の目安は、62,500円である。

みなし残業はおかしい?メリットとデメリット

みなし残業は従業員にとってメリットが多い制度であるが、おかしいという意見も多く聞かれ、実際にトラブルになるようなデメリットもある。

ここでは、みなし残業のメリット、デメリットについて解説していく。

■みなし残業で働くメリット

・みなし残業代よりも実際の残業が少なければ得をする

みなし残業代が30時間給与に含まれているケースで実際の残業が20時間だった場合、実際には働いていない10時間分の残業代も支給される。

・みなし残業時間を超えた分は別途残業代が支給される

固定残業代制におけるみなし残業を採用している会社では、設定されているみなし残業時間を超えて残業した場合は、別途その超過分の残業代が支給される。

・給与の支給額が高くなる

みなし残業は基本給に加えて残業代が毎月固定で支給されるため、基本給のみの会社よりも給与が高くなることがメリットだ。

■みなし残業で働くデメリット

・超過分の残業代が支払われないケースがある

固定残業代制におけるみなし残業では、設定されているみなし残業時間を超えて残業した場合には、別途その超過分の残業代を支給しなければならない。

しかし、決められた一定時間分の残業代だけ払えばよいと考えている会社もあり、超過分の残業代が支払われないケースがある。

・残業を強要されることがある

みなし残業ではあらかじめ決められた時間分の残業代が支払われるため、その分の残業を強要され定時で帰ることが許されないケースがある。

まとめ

みなし残業は、あらかじめ一定の残業代が給与に含まれる制度のことだ。

しかし、固定残業代制におけるみなし残業を採用している会社で、超過分の残業代が支払われないトラブルなどもある。そのため、みなし残業を採用している会社への入社はやめたほうがいいという意見があるのも事実だ。

一方、実際に働いた時間よりも多くの残業代が支払われるというメリットもある。みなし残業を採用している会社で働くのに大切なことは、みなし残業の制度をきちんと把握して、会社がきちんとルールを守っているのかを理解することだ。

※出典:e-Gov法令検索「労働基準法 第38条」

文/小島 章広

信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。社会保険労務士・行政書士の資格を保有し、人事労務関係、社会保険関係の記事を中心に6年以上執筆活動を続けている。

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