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「人的資本開示の義務化」はいつから始まる?経営者だけでなく従業員も知っておくべき理由

2024.07.16

人的資本開示とは、会社などで働く人材が有する「能力(=人的資本)」に関わる情報をデータとして収集して社外に開示することを意味する。人材を会社の資本として位置づけて企業価値向上を図れるとされており、日本でも上場企業に対して一部の人的資本情報が義務付けられたことで注目を集めている。

そこで今回は、人的資本開示の基本的な概要と義務化の内容について解説し、「人的資本経営」など経営目線で語られがちな人的資本の情報開示について、会社員におけるメリットについても紹介しよう。

人的資本開示とは

人的資本開示の概要と義務化の内容について解説する。実際に義務化された開示項目も一覧で紹介する。

■人的資本開示の概要

会社の資本は「ヒト」「モノ」「カネ」の三分類されることが多く、その「ヒト」を指す経済用語が「人的資本」に該当する。

具体的には個人が持つ能力や経験、資格、技能、資質などが含まれており、企業の知的財産や無形財産としての価値があると国際的に広く認知されている。特に欧米では人的資本に対する関心が比較的早い時期から高く、人的資本の情報開示においてもEUでは2014年から、米国では2020年から独自の人的資本開示が義務付けられている。

近年、人的資本開示への関心が高まっている代表的な理由としては、株主や投資家といったステークホルダーに対する事業活動の周知につながりやすいことが挙げられるだろう。例えば環境・社会問題の解決につながる取り組みを行う「ESG経営」が、投資家の有力な投資判断基準の1つになりつつあり、人的資本はESG経営の構成要素である「Social(社会)」に該当することから、積極的に公開する価値が高まっているのだ。

そのほか、IT技術の発展により「人にしかできない仕事」の重要性が見直されており、無形資産が占める割合が高まっているなど、産業構造の変化も人的資本が注目される大きな理由の1つといえるだろう。

■人的資本開示の義務化

2023年1月、「企業内容等の開示に関する内閣府令」などの改正によって対象となる企業は、2023年3月31日以降に終了する事業年度にかかわる有価証券報告書の「2分野6項目」において所定の人的資本情報を記載することが義務化された。具体的には以下の通りだ。

分野

項目

サステナビリティに関する考え方及び取組

①人材育成方針

②社内環境整備方針

③1,2の指標・目標を記載

従業員の状況

④女性管理職比率

⑤男性育休取得率

⑥男女間賃金格差

ちなみに①~③の項目については、記載欄が設けられたのみで記載内容や具体的な取り組みなどは企業に一任されている。

基本的にはステークホルダーにとって馴染みのあるガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4つの開示構造に則って、カテゴリーごとを整理することが求められるだろう。

カテゴリー例としては「人材育成」、「ダイバーシティ(多様性)」、「コンプライアンス」、「従業員エンゲージメント」などに紐づく取り組みについて記載することになる。

※出典:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令等改正の解説」

人的資本開示を従業員も知っておくべき理由

人的資本開示の義務化については、経営者や投資家だけでなく一般的な会社員であっても知っておいて損はないだろう。その大きな理由の1つが転職後の職場環境を予想する材料になるほか、おおまかなキャリアプランも立てやすくなるからだ。

例えば、従業員エンゲージメントに注力している企業であれば、「働きやすさ」や「やりがい」などを求める人にとってマッチしやすい職場である可能性がある。

ダイバーシティや多様な働き方を推進している企業であれば、テレワークなどの柔軟に働きやすい環境が整備されている期待も高まる。各項目の目標達成率などが明示されるケースも多いため、求人票では分かり得ない情報を収集できるのは転職先や就職先を選ぶ重要な判断材料になるのではないだろうか。

さらに人的資本開示の義務化によって、人的資本の活用・強化に取り組む企業が増えれば労働者にとってもより良い環境につながる可能性も高まる。気になる企業や自社が人的資本開示の対象になっているのであれば、ぜひチェックしてもらいたい。同僚や他のビジネスパーソンは知り得ない貴重な情報を手に入れられるかもしれない。

ちなみに、人的資本開示の義務化の対象は、有価証券報告書(有報)を発行している企業のうち、主に約4,000社の大手企業になることも覚えておこう。

人的資本開示の事例

人的資本開示については義務化前から取り組んでいる企業が複数あり、金融庁は「記述情報の開示の好事例集」として好事例をまとめて公開している。今回は「記述情報の開示の好事例集2021」の「経営・人的資本・多様性等」の開示例からその一部を紹介する。

■事例1:オムロン株式会社

オムロン株式会社は2021年3期の有価証券報告書にて、人財マネジメントに関する目標と実績を公開している。同カテゴリの項目は「人財アトラクションと育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」、「従業員の健康」、「労働安全性」の4つに分類されている。

それぞれの目標と実績は、社員向けエンゲージメントサーベイ実施によるPDCA加速のほか、女性管理職比率や障害者雇用率の法定雇用率以上の人数拡大、さらにOSH国際規格認証取得生産拠点数を生産高80%を占める拠点での取得などが記載されている。また、金融庁による同事例のポイントとしては以下が記載されている。

①人権の尊重と労働慣行という社会的課題に対し、構築した人権デューデリジェンスのプロセスに関する取組みを記載

②サステナビリティに関する指標として会社が独自に設定した「海外重要ポジションに占める現地化比率」、「女性管理職比率」等の目標と実績を記載

■事例2:双日株式会社

総合商社の双日株式会社は、ジョブ型新会社の設立・独立起業支援制度・アルムナイ活動の推進で「多様なキャリアパス・働き方実現」に取り組むほか、女性活躍関連目標を2030年まで設けて「ダイバーシティの促進」などに取り組んでいる。

また、2020年から経営人財育成の取り組みとして、若手社員を3ヶ月~1年間海外に派遣するトレーニー制度を設けている。また、金融庁による同事例のポイントとしては以下が記載されている。

①多様なキャリアパス・働き方を実現する取組みや経営人材の育成のための取組みについて平易に記載

②ダイバーシティの推進に向けた取組みについて、女性執行役員の登用の実績や女性社員比率の目標を含めて記載

③女性活躍関連目標について、中長期の定量的な目標を時系列で図示しながら平易に記載

※出典:金融庁「記述情報の開示の好事例集2021」

まとめ

人的資本開示の義務化について解説した。投資家や経営者、マネジメント層だけでなく、幅広いビジネスパーソンにとっても開示のされる情報は貴重なものになる可能性がある。

まだ始まったばかりの制度なので、ぜひ「自分事化」してみて様々な企業の有価証券報告書を閲覧してみてはいかがだろうか。

文/藤冨啓之(ふじとみひろゆき)

経済週刊誌の編集記者として活動後、Webコンテンツのディレクターに転身。2020年に独立してWEBコンテンツ制作会社、もっとグッドを設立。BtoB分野を中心にオウンドメディアのSEO、取材、ブランディングまであらゆるコンテンツ制作を行うほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動中。

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