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スマートホーム市場に保険会社が参入!スマートホーム産業カオスマップに異変あり!?

2024.08.01

「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする」をミッションに、2020年に住宅関連メーカーやIT企業などの企業が業界横断で集まり、業界の垣根を超えてユーザーのより良い暮らしを実現すべく設立された一般社団法人LIVING TECH協会。『LIVING TECHカンファレンス』は、協会設立前の2017年から開催されているイベントでユーザー視点、社会課題の解決、スタートアップの視点を盛り込み、1つのテーマを異業種のパネリストが多角的に議論するスタイルが人気となっている。

第6回となる今回は、「業界横断の共創でつくる、環境にも人にもやさしい、well-beingな暮らし」をテーマに、日比谷三井タワーからリアルとオンラインのハイブリッドで開催された。ここでは「業界関係者は知っておくべき住宅業界の新・基礎知識!「住×Tech」の最新トレンド共有会~CES2024のトレンドとスマートホームカオスマップ#2~」についてレポートする。

パネリスト&モデレーター (右から順に)

<パネリスト>平岩幸治さん
三井住友海上火災保険 ビジネスデザイン部 アライアンス第2チーム長

<パネリスト>杉井健人さん
Statista Japan カントリーマネージャー

<パネリスト>新貝文将さん
X-HEMISTRY 代表取締役

<パネリスト>竹内優さん
RoomClip 住文化研究所 研究員/マーケター

<パネリスト>織田未来さん
ライフテックコーディネーター/プレイド Customer Success

<モデレーター>長島功さん
LIVING TECH協会事務局長/リノベる CVC本部部長

「スマートホーム産業カオスマップver.2」で日本のスマートホームの現在地を知る

暮らしを豊かにするにはテクノロジーの活用は避けては通れない。

その手段がスマートホームである。日本は世界的に見てもスマートホームの普及が遅れているという。欧米だけでなく、中国や韓国など同じ東アジア圏で見ても「スマートホーム後進国」なのだ。

それは様々なデータとして表れている。毎年1月にラスベガスで開催されるテクノロジーの祭典CES。CES2024では中国の出展数がアメリカを抜き1位になった。出展社数で言えば1100社超、3位の韓国も660社超に比べて、日本は67社しか出展していない。CESはテクノロジー全般の催しなので、スマートホームに限った話ではないが、CESではスマートホーム関連の出展も多くされていることを考えると、日本の存在感の薄さは際立っているといえよう。

このセッションでは、スマートホーム産業の現在地の把握が行なわれた。

提示された「スマートホーム産業カオスマップver.2」のポイントは次の3つ。

1.国内初、損保事業の参入

2.OEM提供ジャンルの追加『SHaaS』(Smart Home As a Servise)

3.エネルギーマネジメントのプレイヤー増加

「これまでもカオスマップのカテゴリーの中、Insurance(損害保険)のカテゴリーはありましたが、国内のプレイヤーはいませんでした。今回、三井住友海上火災保険の『MS Life Connect』が参入したことが大きなトピックといえるでしょう」(新貝さん)

注目は「損害保険」と「エネルギーマネジメント」

セッションで行なわれたカオスマップの解説の中から注目のカテゴリーをピックアップしそのポイントを改めて見ていきたい。

Insurance(損害保険)

「昨年、カオスマップを発表した時、『何でInsurance?』という反応が多かったカテゴリーです。実はスマートホームと保険はすごく相性がいい。

我々は生活をしているといろいろなことが起こります。漏水や火事、空き巣。こういったことは保険に入っていると被害に応じて保険金が支払われる。しかし、保険会社も負担になる。被害を早期に発見できるということは保険会社にとっても大きなメリットになります。もちろん、契約者も保険金をもらえると言っても被害には当然遭いたくない。それをIoTで解決しようという試みで、保険会社がIoT機器を保険と組み合わせて販売して割引をするという仕組みです。

シリコンバレー発の新興インシュアテック企業から大手の損保会社まで取り組むトレンドになっており、2022年にはアメリカの損保最大手の『State Farm』が米国のセキュリティ大手に10億ドル以上も出資をするというニュースもありました。今後、どういうサービスを提供していくのか注目です」(新貝さん)

国内ではじめてスマートホーム産業に進出をした三井住友海上火災保険の平岩さんは次のように話す。

「保険会社と家は火災保険でつながっています。何か事故が起こったときに保険金をお支払いしているが、保険を使う時に契約者は何かしらの不幸に遭っているわけで『避けたいこと』のはずです。

当社としては、保険の前後、予防や被害の低減、再犯防止に力を入れています。

これまで産業に参入できなかったのは、保険期間は金融機関なので、モノを扱ってはいけないという制約がありました。今回、IoTの販売や施工をパートナー企業に任せることで事業に参画することができました。

そして、住宅IoTと連動した保険を目指し、『MS LifeConnect』というプラットフォームのブランドを立ち上げました。メインターゲットは30~40代の子育て世代です。2024年4月からtoC向けのサービスを開始し、6月からはニーズの高かったtoB向けのサービスも開始します」(平岩さん)

「同社製品を自宅でも使用しています。それまで使っていたセキュリティカメラは何か風で飛んできたものにも反応したり、隣人の通行にも反応したりして不要な通知が多くなってしまっていましたが、このサービスでは検知エリアや検知物の指定ができるので、通知を絞り込みやすく日常での見守りに最適だと実感しています。また、都度機能がアップデートされ細かいチューニングができるので自分のニーズに合わせられるのはユーザーとしてありがたいなと感じます」(織田さん)

Energy Management(エネルギーマネジメント)

「日本でもスマートハウスという概念で少し前からエネルギーマネジメントという考え方はあります。日本は『どれくらい電気を使ったか』という見える化が主流です。これは3日で飽きると言われています。

今後、スマートホーム機器で、自動的に電気代を削減する時代に入ってくると思います。実際に2023年のCESでSamsungが掲示していた事例では、スマートホームでのAIを活用したエネルギーコントロールというものがあります。

ソーラーパネルが自給自足をしつつ、蓄電池に電気が貯まる。電力会社から電気を買わなくてもいい仕組みなのですが、例えば夜間にEVを充電すると電気がなくなってしまう。どうするかというと、家電をエコモードに自動で切り替えて節電をするという仕組みを考えている。今、各社このコンセプトに追随している状態です。エネルギーマネジメントならぬ『エネルギーオートメーション』というトレンドです」(新貝さん)

「今回のカオスマップでは、エネルギーマネジメント領域やホームオートメーションの領域などで、特に海外プレイヤーにおいて複数カテゴリにまたぐプレイヤーが増えた気がします」(織田さん)

「色々なものを束ねているプレイヤーはソフトウェアを軸にビジネス領域を拡張している傾向があり、デバイス販売のプレイヤーは特定ジャンルで展開する傾向があります。従来はプラットフォーマーの努力で繋がるものを広がってきましたが、Matterの規格などにより、そこに対する投資をせずに、我々のUXを高めるところに注力できるようになるので、標準化の動きは重要であると思っています」(新貝さん)

「このカオスマップでは、14カテゴリーにまとめていますが、大半のカテゴリーが住宅産業に密接に関わっています。日本では、スマートホームはメーカー主導というイメージが強いかもしれませんが、実は住宅設備としての機器や設備連携する仕組み、サービスとしての付加価値と言った要素もあり、海外ではスマートホームを実装した住宅が一般的になってきており、富裕層向けのスマートホーム住宅も複数プレイヤーがいますが、日本ではこの領域が空白地帯になっているので、ビジネスチャンスという意味でも、日本の住宅産業も注目いただきたいと思っています」(長島さん)

調査会社Statistaによるスマートホームに関する統計データ

ドイツに本社を置く統計データを扱うStatista。その日本法人のカントリーマネージャーである杉井さんからはスマートホームに関する世界と日本を比較するデータが紹介され、日本を取り巻くスマートホームの現状がより可視化された。世界でも成長している市場ではあるが、日本においても、2020年のコロナ禍以降と2022年から2023年で20%近い成長率が見え、特にセキュリティ関連のスマートホーム市場の伸びが顕著ということもわかった。

スマートホームの市場規模(日本)

また、市場規模の比較のみだと、浸透率(普及率)が読めないため、Statistaが世界150か国で実施しているスマートホームに関する同一設問での消費者調査から、グローバルでの浸透率が紹介された。

「よく欧米と比較されがちで、文化の違いと捉える方も多いですが、実は韓国の浸透率は世界でも非常に高いです。日本における浸透率は23.7%で世界で16位、2023年の31.0%は13位となっています」(杉井さん)

さらに、日米中韓における年代別の利用率や、年収レンジによる利用率の比較、デバイス種類の国別の所有率、住宅種別ごとの比較データ等を用いながら、日本における普及仮説について議論された。

日本の消費者のライフスタイル変化と連動するスマートホーム

日本で独自に住まいと暮らしのSNSサービスを展開するRoomClip。サービスに集まるデータを分析しレポートする竹内さんからは、国内のスマートホーム業界の新規参入などの動向は、ビジネスサイドの思惑だけでなく、ライフスタイルや世帯構造の変化など、日本特有の事情と重なる面があることがユーザー側のデータを元に言及された。

例えば、「エネルギーマネジメント」の視点では、電気代高騰に伴い、消費者の節電意識が高まっており、RoomClipでも検索が激増した。2022年以降このキーワードに関するユーザー投稿も増えており、対策のニーズの高まりが伺える。

また、「見守り」は直近5年で6倍を超えて検索率が伸びているキーワード。それに追従するように、「介護」「防犯」というキーワードも注目を浴びている。超少子高齢社会に直面する日本において「見守り」は、子どもや親世帯、ペットの見守りが対象で、ネットワークカメラやスマートロックなどの利用例を探すユーザーの増加が顕著に見て取れると伝えた。

スマートホーム産業に関して、カオスマップを切り口にビジネス側の最新トレンドが共有されたが、ユーザーの暮らしのリアルにも目を向けると、今後成長が期待できる生のニーズが見て取れるので、引き続き注目したい。

スマートホーム産業は思っている以上に広がっている

スマートホームと聞くと何を思い浮かべるだろうか。

おそらく、多くの人はスマートロックやIoT家電といったtoC向けのデバイスだろう。しかし、それはスマートホーム市場の一部に過ぎない。

今回のセッションでは保険会社の参入や市場に参入するためのプラットフォームサービスなど、新たな市場形成が進んでいることがわかった。それは、私たちにとっては新たな気づきでもありビジネスチャンスでもある。個々のサービスやプロダクトだけでなく、業界を俯瞰的に見ることも必要なのかもしれない。

***

【LIVING TECHカンファレンス#6 特設サイト】
https://livingtech.ltajapan.com/ltc006/

取材・文/峯亮佑

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