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ビジネスシーンにおける打診という言葉のニュアンスが、よくわからないという方もいるのではないでしょうか?打診とは、「相手に提案を投げかけ、意向を確認するために前もって様子を見ること」という意味の言葉です。今回は打診の意味や由来、使用する際の注意点を解説します。
ビジネスシーンにおける打診の意味
打診とは、主にビジネスや政治などにおいて、相手に先に話題を小出しにして投げかけ、事前に反応を見るといった意味で使われる言葉です。
相手に決定事項を伝えてしまうと、受け入れられなかった場合は振り出しに戻ってしまいます。また、相手にとって望ましくない内容を決定事項として提示することで、相手の態度が硬化してしまう可能性もあるでしょう。それらの状況を避け、円滑なコミュニケーションを図るために、相手の反応を見ながら内容のすり合せを行います。
■もとは医療用語として使われていた
打診という言葉は、もともとは医療業界で使用されていた言葉です。内臓の診察を行うために、医者が患者の胸・背中を打診器や指先で叩き、音の響き方を確認する行為を指します。
やがて、相手に働きかけを行い、それに対する反応で相手の意向などを判断することをあらわすようになりました。
■打診の使い方と例文
打診という言葉の由来が「診察で患者の胸・背中を打診器や指先で叩き、音の響き方を確認する行為」だったことからもわかるように、意味は、相手の反応や意向の確認にとどまります。つまり、相手から良い返答や同意を求めるといった意味は、含まれないことがポイントです。打診という言葉を「依頼する」ことをあらわすために用いるのは、適切ではありません。
打診を使った例文には、以下のようなものがあります。
・海外転勤についての打診を受けた
・A社から業務提携に関する打診があるらしい
・この件については、ひとまず取引先に打診する予定です
打診という言葉を使う際の注意点
打診という言葉を使う際の注意点は、主に以下の2点です。
・言葉の解釈が異なることを認識しておく
・相手の意向を尊重する
それぞれの内容を解説します。
■言葉の解釈が異なることを認識しておく
打診という言葉の解釈は、人によって異なる可能性があります。打診の本来の意味は、相手の意向を確認するために前もって話題を投げかけ、様子を見ることです。
しかし、人によっては「依頼をする」「同意を得る」といった意味で認識している場合もあります。このように、同じ言葉でもその意味合いの認識にズレがある場合、コミュニケーションに支障が出ることもあるでしょう。
円滑なコミュニケーションを図るために、時と場合に応じて別の言葉に言い換えるなど、工夫することをおすすめします。
■相手の意向を尊重する
打診は、相手の意向を尊重するスタンスで行いましょう。「こちらとしてはこのように進めたいが、先方にとって何か問題はないだろうか」というように、相手の立場や考えを把握するために行うのが打診です。
いきなり決定事項を伝え、なんとか同意を得るといった行為は、打診には該当しないことを認識しておきましょう。
打診の類似表現
打診という言葉の類似表現には、「提案」「提示」「探る」「是非を問う」などがあります。それぞれの言葉の意味と使い方について解説します。
■提案
提案とは、議案や意見などを提出することを意味する言葉で、打診の類似表現の1つです。提案した議案や意見自体を指して使うこともあります。
【例文】
・次の戦略について、来週の会議にてご提案いたします
・彼の提案は、到底受け入れられないものだった
・弊社の新製品についてご提案いたします
参考:デジタル大辞泉
■提示
提示とは、相手に対して情報や物事を伝える行為をあらわす言葉です。打診は相手に情報を小出しにして提示し反応を見るという意味であるため、言い換え表現として使えます。
提示は、意思疎通や情報共有のために頻繁に行われる行為です。口頭で伝えるほか、書面による伝達やプレゼンテーションによって共有するなど、実施する方法はさまざまです。
【例文】
・顧客に対して新製品の価格を提示する
・銀行は厳しい融資条件を提示した
・クライアントからいくつかの案が提示されたが、こちらの状況的にどれも実現は困難だ
■探る
探るには、手足の感覚などを頼りに目に見えないものを探し求めるという意味や、相手の考えや様子をそれとなく調べるという意味などがあります。このうち、打診の意味に近いのは後者といえるでしょう。
探るはもともと、見えないものを手足の感覚で探し当てるという前者の意味であり、やがて見ただけではわからないことを明らかにすることから派生し、さまざま意味で使われるようになったと考えられます。
【例文】
・顧客のニーズを正確に探れるように、ヒアリングの方法を改善する必要がある
・この問題の原因を早急に探らなければならない
・業界トレンドについて探るべく、リサーチを進めていく
参考:デジタル大辞泉
■是非を問う
是非を問うとは、ある内容について「正しいか正しくないか」などを問うことを意味する言葉です。「是」は正しく道理にかなっていることを、「非」は正しくないことや道理に反していることをあらわします。「良いと思うか悪いと思うか」というニュアンスで使われるケースも多いです。
【例文】
・事業存続の是非が問われるタイミングがきたようだ
・来期の計画について是非を問う会議になるだろう
・マンションの修繕計画に関して、住民の是非を問うための集会が開かれる
打診の意味を理解し認識の齟齬を防ごう
打診とは、相手に話題を小出しにして投げかけ、その反応を見るという意味で使われる言葉です。打診によって相手の反応をうかがい、内容のすり合わせを行うことで、双方が納得する落としどころへの着地を目指すイメージといえるでしょう。
打診はあくまでも相手の反応をうかがうことを目的としたもので、良い返答を得ることや同意を得るといった意味は含まれません。しかし、人によって言葉の解釈が異なる可能性があるため、状況に応じて別の言葉での言い換えなどを行う必要があります。
打診の本来の意味を理解したうえで、相手が必ずしも同じように解釈しているわけではないことを考慮して、認識の齟齬を防ぎましょう。
構成/橘 真咲