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ビジネスシーンで出てきた、瑕疵という言葉の意味がよくわからないという方もいるのではないでしょうか?瑕疵は、基本的には傷や欠点という意味で使われる言葉で、不動産取引でよく用いられます。今回は、瑕疵の意味や瑕疵を使った法律用語、類似表現を解説します。
瑕疵とは傷や欠点を意味する言葉
瑕疵とは「かし」と読み、傷や欠陥、不具合などを意味する言葉です。「瑕」の字も「疵」の字も、ともに「傷」を意味し、「傷」の異表記として用いられることがあります。「瑕」は宝玉についてしまった傷の意味を、「疵」は小さな傷や欠点、誹謗などの意味を持つ漢字です。
瑕疵は、不動産やビジネスにおける成果物が、引き渡しや納品前の段階でなんらかの欠陥を抱えている状態などをあらわします。たとえば納品したシステムに瑕疵がある場合、ベンダーは修理・補修したり、損害を賠償したりしなければなりません。
■瑕疵は法律用語としても使われる
瑕疵という言葉は、法律用語としても使われます。法律上の概念としての瑕疵は、法律の中でも民法の不動産契約において頻繁に登場する傾向があります。法律用語としては、「本来であれば当然満たされているべき機能や性能、要件などが満たされていない状態」を意味することを押さえておきましょう。
■瑕疵と過失の違い
瑕疵に似た法律用語に「過失」がありますが、その意味合いは瑕疵と明確に区別されます。瑕疵が、物に生じた欠陥や不具合を意味するのに対し、過失は注意義務を怠ったことにより、人が引き起こした過ちを意味します。なお、意図的に引き起こされた過ちは、過失には該当しません。
■瑕疵を使った例文
瑕疵を使った例文は、以下をご参照ください。
・新築のマンションに水漏れの瑕疵があった
・不動産の売買契約を締結する段階で、土地の瑕疵が発覚した
・購入したばかりのパソコン画面に瑕疵が見つかったため、修理を依頼しなければならない
・彼は契約書の瑕疵に気づき、再交渉の申し入れを行った
また、以下のように比喩的に使用することもあります。
・完璧に見える人でも、なにかしらの瑕疵があることが多い
・彼女は勉強ができるが、人間関係の瑕疵に悩まされている
法律用語としての瑕疵
ここからは、瑕疵を使った法律に関連した用語である、「瑕疵物件」「瑕疵ある意思表示」について解説します。
■瑕疵物件
瑕疵物件とは、「訳あり物件」と呼ばれ、通常は備えるべき品質や性能が欠けた物件のことです。不動産取引での瑕疵は、以下の5つの種類に大別されます。
・権利の瑕疵
・物理的瑕疵
・心理的瑕疵
・環境瑕疵
・法的瑕疵
権利の瑕疵は、売買などの契約において、購入した土地の借地権や地上権を第三者が持っていたなど、売主が目的の物件の完全な所有権を持っていないことが代表的です。
物理的瑕疵の物件は、物件に物理的な欠陥や不具合があるケースを指します。購入した土地の地盤が、地盤沈下で不安定だったといったケースが該当します。
その物件の状況に対して購入者などが嫌悪感を抱くなどすることで、平穏に生活できない物件が、心理的瑕疵の物件です。たとえば、購入した物件が事故物件だった場合などがあてはまるでしょう。
環境瑕疵の物件とは、土地や建物には瑕疵がないが、周囲の生活環境が嫌悪感や不快感を抱かせる状態で、取引を遂行できない物件を指します。たとえば、住居が線路に面していて振動や騒音に悩まされるケースなどです。
さらに、法的瑕疵の物件は、建築基準法などの規制に抵触し、不動産取引に影響を与える物件を指します。取引する土地に法令上の建築制限が課されており、取引物件を自由に使用できないようなケースなどがあてはまります。
■瑕疵ある意思表示
瑕疵ある意思表示とは、意思表示をしているものの、意思形成そのものが他者からの干渉を受けているというケースをあらわす言葉です。完全に自分の意思ではなかった場合、その意思表示には瑕疵があるとみなされます。
瑕疵の類似表現
瑕疵の類似表現には、「瑕瑾」「弊竇」「不具合」「不備」などがあります。それぞれの意味を確認していきましょう。
■瑕瑾(かきん)
瑕瑾とは「かきん」と読み、他は申し分ないが、わずかな欠点があることを意味する言葉です。
「瑕」は、宝玉についた傷をあらわし、「瑾」は宝玉をあらわすことから、美しい宝玉についたわずかな傷を意味します。そこから転じて、「全体としては優れている中にあって、惜しむべき欠点」を意味する言葉として使われます。
参考:デジタル大辞泉
■弊竇
弊竇は「へいとう」と読み、弊害となる点や欠陥を意味する言葉です。「竇」とは穴を指すため弊害となる穴をあらわし、やがて欠陥を意味するようになりました。
参考:デジタル大辞泉
■不具合
不具合は「ふぐあい」と読み、具合や状態がよくないという意味の言葉です。問題の内容や原因を具体的に述べない、曖昧さを含む表現といえるでしょう。あからさまに「欠陥」や「故障」とするのを避けるために、より柔らかい言い回しとして使われることも少なくありません。
参考:デジタル大辞泉
■不備
不備とは「ふび」と読み、必要なものが完全には揃っていない状態を指す言葉です。「備」は、備えるという意味の言葉であるため、否定をあらわす「不」がつくことで「備わっていない」という意味をあらわします。
参考:デジタル大辞泉
瑕疵の正しい意味を知ろう
瑕疵は、欠陥や不具合などを意味する言葉です。不動産やビジネスにおける成果物が、引き渡しや納品前の段階でなんらかの欠陥を抱えている状態などを表現する際に用いられます。
似た言葉として「過失」がありますが、瑕疵が物に生じた欠陥や不具合を意味するのに対し、過失は注意義務を怠ったことにより、人が引き起こした過ちを意味する点に注意しましょう。
瑕疵は法律用語としてもよく使われ、とくに民法の不動産契約において頻繁に登場する傾向があります。法律用語としての瑕疵は、「本来であれば当然満たされているべき機能や性能、要件などが満たされていない状態」という意味です。瑕疵を使った法律に関連した用語には、「瑕疵物件」や「瑕疵ある意思表示」などがあります。
瑕疵の意味を知り、正しく使いこなせるようにしましょう。
構成/橘 真咲