仕事を通して、人生後半戦を生きていく姿勢を学ぶ
――仕事を通して、自分自身が変わったことはありますか。
きつ:今を楽しんでいる人、悲しんでいる人、お客様の話を聞くといろいろ思うところはあります。私より年配のお客様の「人生いろいろだから、これからは人工乳房をつけて外出を楽しみたいと思っている」という言葉には、深く感銘を受けました。
――深く刺さる言葉ですね。
きつ:これからの人生後半戦を生きていく姿勢として見習いたいと思っています。それと、ものごとの見方がフラットになったことも、大きな学びです。
――というと?
きつ:「病気だから、さみしいだろう」とか、「子どもがいるから、幸せなんだな」など、一方的な想像で単純に決めつけてはいけないと思うようになりました。乳がんで胸を無くした方も、LGBT+の方も、みんな一度きりの人生を生きていて、それぞれにストーリーがあり、それぞれの思いがあると知りましたから。
50~60代は再びやってきた青春期
――これからの夢や目標は?
きつ:体力の続く限り、できれば死ぬまでこの仕事をしたいと思っています。
――プライベートでは?
きつ:最近、韓国の歌手グループの「推し活」を楽しんでいます! 韓国語を習い始め、その教室で出会った友人と韓国旅行も予定しています。
――仕事もプライベートも、パワフルに人生を楽しんでいらっしゃいますね。
きつ:50歳になったとき、「私、人生をもう一周できる」と思いました。今、新しいことを始めれば、70歳までに20年という時間がありますから。もう一回、何かを習得したり、新しい経験を積んで充実感を味わえるかもしれないと思いました。
――「人生をもう一周」ですか。
きつ:お客さまの一人から、「50~60代は、老年の青春期よ。楽しみなさい」とも言われたことがあります。言われてみると、50~60代はまだまだ体が動くし、「変わりどき」なのかもしれません。
――「変わりどき」で大切なことは何だと思いますか。
きつ:新しいことやってみたいという好奇心だと思います。今、夢中になっている韓国語については、理解力と忘れるスピードとの闘いですが(笑)。
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若い頃から歩んできた道の延長上で、新しい天職と趣味に出合ったきつさん。全く違う仕事や趣味にチャレンジするもよし、住まいや暮らし方を変えてみるもよし、「第二の青春期」を思いっきり楽しみませんか?
取材・文/ひだいますみ