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「2850万円の留学費用を返せ!」MBA留学から帰国した社員に対して会社が高額請求をした理由

2024.06.22

裁判所のジャッジ

会社の勝ちです。裁判所は「2847万円返せ」と命じました。

――裁判所さん、会社が勝ったポイントは?

裁判所
「この留学は、会社の指示命令に基づく業務じゃないからです」

――ん?Xさん、反論ですか?

Xさん
「はい。今回の留学は会社の事業のために行なわれたものです(アフリカでの事業の最前線に私を配置するという目的)。なので留学費用は会社が負担すべきものです」

しかし裁判所は、

裁判所
「いや、今回の留学は業務じゃないですね」

〈理由〉
・留学の目的はアフリカで事業を行なうための人脈形成
・これ自体、Xさん個人に帰属する事実上の利益
・留学先の選定や履修科目について会社の具体的指示はなかった
・会社とXさんが交わした誓約書には「本留学は貴社業務として行なわれるものではなく、派遣者本人の希望と自由意思に基づき、私自身の能力の向上を目的としたものである」と書かれていた、など

――Xさん、不服そうですが。

Xさん
「この合意のせいで辞めにくくなっています(労働者の退職意思を拘束しています)」

(この時Xさんは合意前の借金額が明示されてない、などの理由を挙げてます)

――裁判所さん、どうですか?

裁判所
「業務【上】の行為についての貸付ならそうなるかもしれないんだけどね。今回の貸付は業務【外】だから。業務【外】のことについて会社が社員にお金を貸して、その時の条件として【5年以上在籍したら免除、5年以内に自己都合退職したら全額返してね】という条件をつけることは、退職の自由を不当に制約してるとはいえない」

というわけで、裁判所は会社の主張をほぼ認めて、Xさんに対して「2847万円返せ」と命じました。

ポイントは業務かどうか

同じようなトラブルは過去にもたくさんあります。留学のほかに研修のケースも

「辞めるなら研修費用返せよ」ってヤツが多いですね。

裁判所が着目する大きなポイントは【これ、業務かな?】です。今回のように【業務じゃない】と認定されれば社員さんはほぼ負けます。

この留学費用は返さなくていいよ

逆に裁判所が「この留学費用は返さなくていいよ」と判断したケースもあります(富士重工業事件:東京地裁 H10.3.17)

こんな事件です。

会社
「チミ、帰国して5年以内に辞めたよね」
「海外研修の費用を払ってね、338万円」
「ウチの規則ではそうなってるよね」

裁判所
「払う必要なし」
「そんな規則は無効だ」
「だって会社の業務命令で留学してんじゃん」

で、社員が勝訴しました。裁判所が【コレは業務だよね。会社のために行ってるよね】と認定すれば、社員は勝ちます。返さなくてOKです。以下の条文があるからです。


労働基準法 16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。


業務で行ってるのに「辞めたらカネ返せ」と突きつけると、社員は辞めにくくなるからです。社員を違法にしばっているので無効になるんです。

▼ 相談するところ

もし会社から「辞めるなら研修費用ぜ~んぶ返してね」とオラつかれている方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。

労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。

今回は以上です。これからも働く人に向けて知恵をお届けします。またお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。法律コンテンツを作ることが専門の弁護士。
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