ちゃんとしたプロセスなら叱られてもモチベは上がる
では、どうやって叱るのか。目指すべきは「モチベーションが上がる叱り方」の実践です。
序盤に触れましたが、中間管理職だけど叱らないというのは非常に無責任です。一方で、自分の叱る行為に不安を覚えることは多くの読者の方の共感を呼ぶでしょう。仕事以外では子育ての場面で叱る機会がある人も多そうです。
その実際のプロセスは、めちゃくちゃ簡単です。
【叱る準備→叱る内容の提示(叱るべき事実の提示)→叱る理由の説明→解決策の協議→フォローアップ】
たったこれだけです。
例えば遅刻を繰り返す部下がいたとしましょう。まず、本人を呼び出す。できれば晒し者にならないように個別に呼び出すようにする。これが【叱る準備】です。いきなり「お前何遅刻しているんだ!」と叱ったり怒鳴ったりするのは、叱られる相手からすると不意打ちになり、「叱られた」ではなく「急にキレられた」と受け止められてしまいます。
そして【叱る内容の提示】。今回の場合は繰り返される遅刻なので、「最近遅刻が多いぞ」とこっちが問題視している事実を相手に伝達。そこにつなげて「大事な会議の円滑な進行に支障を来すから」「あまりにも多いと重要な仕事を任せられなくなるから」などの【叱る理由】を伝え、【解決策の協議】を経て問題が繰り返されないように【フォローアップする】だけです。
あれ……何かちょっと素っ気ない。そんなふうに思った人も多いと思います。
そう、これで良いのです。実は私たちの想像する「叱る」という行為は、誰かと比較してみたり、相手のプライドを傷つけるような方法を使ってみたり、自分の感情や要望を怒りという感情と相手の非を利用してぶつけているだけであることが多いのです。
本当の「叱る」はめちゃくちゃシンプル。そして、特に大事なのは後半の【解決策の協議】や【フォローアップ】です。部下を叱る本来の最終的な目的は、本人に問題を自覚してもらって成長してもらうことですから、叱る時には相手のプライドを傷つけず、叱る側の主張に耳を傾けてもらえる場所やタイミングを意識することも大切になってきます。
まぁ……簡単とは言いましたが、これは実践の中で磨かれるものなので不器用でも良いので試してほしいです。
アナタが部下を見ているのと同等かそれ以上に、部下もアナタを見ている。誠実に、論理的に改善点を順を追って説明すれば、きっと部下に伝わるはず。
犯罪学教室のかなえ先生
元少年院の先生で、犯罪心理学や教育犯罪学の知見からニュースなどを解説するVTuber。近著に『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』。
©夢乃とわ SDイラスト/紀羅わたり
※「教えてかなえ先生」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME7月号に掲載されたものです。