過酷な環境に晒されているビジネスパーソンの悩みは深い。だが、日々の課題の中にこそ人生を豊かにするためのヒントが詰まっている。異色の経歴を持つVTuberが、今回は悩める〝新米上司〟からのお悩みに答えます!
無責任への処方箋
この4月に昇進して初めて部下を持ちました。が、ハラスメントに気をつけるご時世ということもあり、なかなか注意できません。そのせいでさらに上の人間から「部下を叱れないのは上司として無責任だ」と私が叱られてしまいました……。
【結論】部下や若手を成長させるのに叱ることも時には必要。
ハラスメントと指導の違いもわからない管理職は不要!
「ハラスメント防止」を言い訳に責任を放棄するアナタへ
早速切り込みますが、「ハラスメントが気になって適切な指導(叱ることも含む)ができない」はただの言い訳です。自分の実力不足を環境の変化のせいにしている無能の典型フレーズと言ってもいいでしょう。
ここ10年ほど、企業や官公庁、スポーツ業界、教育の現場などでは、主にパワーハラスメント問題を念頭にハラスメント防止研修が企画され、実施するようになりました。個人の権利がより一層尊重されるようになったという意味では本当にすばらしいことです。
一方で、そんなハラスメント防止研修の実施やハラスメントを防止しようとする意識の広まりの副作用として、近年は「物言わぬ上司問題」と呼ばれる「パワハラを意識するあまりに指導ができない上司」に悩まされる企業もあるとか……。
しかし、普通に考えて「感情的になって高圧的に行なわれるハラスメント(ここではパワハラを指します)」と「常識の範疇の指導」の違いもわからないのは、その人自身の能力の問題でしょう。そもそも普通に指導しているだけならばハラスメントにはなり得ないわけで、これがわからないというのであれば、その人のコミュニケーションやリーダーシップに問題ありと判断してもいいと思います。
じゃあ、なぜ叱るのか?どうやって叱るのか?
まず、新人や部下などを成長させるうえで相手の資質を見極めて欠点や失敗を指摘したり、改善を促すことは大切です。時には嫌でも叱らないといけない場面もあるでしょう。褒めて伸ばすやり方も最近注目を集めていますが、相手の成長を願うのならば時には心を鬼にすることも必要です(本当に鬼になってはいけませんよ!)。
ここで問題になるのが「叱り方」になります。誤った叱り方をすると、部下のモチベーションや部署の士気が下がってしまったり、周囲がアナタに叱られることを恐れるあまり主体性が失われたり、不正を隠蔽するなどの問題につながる可能性も……。
もうすっかり忘れられているのですが、私は少年院で先生をしていました。多くの問題を抱えた少年と向き合う中で心を鬼にして「叱ったこと」もあります。少年院の中だと、毎日教官の怒鳴り声が響き渡っている様子を想像するかもしれませんが、実際はそうではありません。感情的に怒鳴ったりする行為は収容されている少年への虐待と見なされることがあるため、多くの教官は日々の研鑽から効率的かつ理性的な「叱り方」をわきまえており、一般的にはハラスメントとされるような叱り方は最も非効率な指導法であることも知っています。
少年院で勤務した経験から「正しい叱られ経験」が少ない人が増えた結果として「正しい叱り方」がわからない人が増えているような印象を受けています。指導と称した虐待などを受けてきた子供が成長して、パートナーや友人に手を出してしまう……みたいなパターンは腐るほど見てきました。実際、パワハラする人の多くが自身の行為をパワハラだと自覚せず「正しい指導」と思い込んでいる点からも、この問題の根の深さがわかるはずです。