企業のカスハラ対策・対処法
過度な顧客至上主義は、従業員を疲弊させ、離職のきっかけをつくります。増え続けるカスハラに対し、企業はどのような対策を講じているのでしょうか?
■企業のカスハラ対策の必要性
SNSによる拡散を恐れ、カスハラに毅然とした態度を取れない企業が見受けられますが、適切な対策を講じなければ、企業に多くの弊害が生じます。
従業員は、カスハラをする顧客のために、多くの時間と労力を費やさなければなりません。業務に支障が出たり、ほかの顧客の迷惑になったりして、より良い商品・サービスを提供できなくなる恐れがあります。
カスハラで従業員のモチベーションが低下すれば、離職者が相次ぎます。離職に伴う採用コストや教育コストが増えるほか、『カスハラを拒絶できない企業』という悪いうわさも立つでしょう。企業側がカスハラ対策を怠り、従業員が心身にダメージを負った場合は、安全配慮義務違反として、従業員から損害賠償を請求される恐れがあります。
■事前にできるカスハラ対策
事前のカスハラ対策として有効なのが、対応マニュアルの作成と研修です。カスハラに一方的に謝罪するしかない状況では、従業員に大きな負荷がかかります。
一般的なクレームとカスハラの見分け方を示した上で、基本姿勢・基本方針・対処法をまとめたマニュアルを作成しましょう。研修では、判断基準を擦り合わせ、場面に応じた対処法を教育します。
また、カスハラによって、従業員がうつ病や精神疾患を発症する可能性があります。手遅れにならないように、相談窓口を設置しておくことも重要です。
■カスハラが起きた際の対処法
実際にカスハラの被害が生じたときは、事前に規定した『対応フロー』に基づいて行動するのが一般的です。まずは、従業員や顧客に聞き取りをし、カスハラが事実であるかどうかを確認します。
カスハラの対応には大きく、『現場の管理監督者が対応する』『本社に引き継ぐ』の2パターンがあります。現場で対応しきれないときは、本社の該当部署に引き継ぐのが望ましいでしょう。
その場しのぎの対応では、悪質なカスハラはなくなりません。現場に丸投げせず、組織全体で取り組むことが重要です。法に抵触する可能性があれば、弁護士に連絡をして法的対応を検討します。同時に、カスハラを受けた従業員へのケアや、再発防止策の策定も進める必要があります。
過度なクレームはカスハラに該当する可能性大
かつての日本では、『お客さまは神様』という言葉がよく使われました。しかし、近年は企業と顧客のパワーバランスが大きく崩れ、カスハラが社会問題化しています。
カスハラとクレームの線引きは難しく、対応を一歩間違えれば、企業のブランドイメージの悪化を招きかねません。だからといって適切な対応を怠ると、従業員に大きな負荷がかかります。まずは、一人一人がカスハラの実態と影響について正しく理解することが重要です。
構成/編集部