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カスタマーハラスメント(カスハラ)とクレームの違いとは?

2024.06.30
日本では、カスハラが急増しています。顧客の立場を利用した不当かつ悪質なクレームのことで、精神的に追い詰められる人は少なくありません。増え続けるカスハラに対し、企業はどのような対策を講じているのでしょうか?クレームとの違いや対処法を解説します。

カスタマーハラスメント(カスハラ)の意味とは

近年は、セクハラやパワハラをはじめとする『ハラスメント』が社会的な問題になっています。ハラスメントの中でも、企業のブランドイメージや従業員の就業環境に大きな影響を与えるのが、『カスタマーハラスメント』です。クレームとの違いや、カスハラが増加する理由を解説します。

■企業に対する理不尽なクレームのこと

カスタマーハラスメント(customer harassment)は、顧客による理不尽なクレームのことです。『顧客』を意味するカスタマーと、『嫌がらせ』『いじめ』を意味するハラスメントから成る言葉で、略して『カスハラ』と呼ばれます。

法令上の明確な定義はありませんが、以下のような行為はカスハラに該当すると考えられています。

  • 商品やサービスに対する根拠のない言いがかり
  • 企業に対する過剰な要求
  • 従業員への侮辱的・暴力的な言動

カスハラは、従業員の心身に大きなダメージを与えます。生産性の低下や離職の増加につながるため、企業は適切なカスハラ対策を講じなければなりません。

クレームとの違いは「悪意の有無」

一般的なクレームとカスハラの違いは、悪意があるかどうかです。クレームは、商品やサービスに対する意見や要望、不満であり、根底には『もっと良くなってほしい』という思いがあります。企業側に非があるケースも多いため、真摯に受け止める必要があるでしょう。

一方でカスハラは、不当かつ悪質であり、要求を実現するための手段や様子が社会の一般常識を逸脱しているのが特徴です。中には、企業をおとしめようとする人や、ストレス発散を目的としている人もいます。

■カスハラが増加している原因

厚生労働省が2023年に行った『職場のハラスメントに関する実態調査報告書 』によると、過去3年間に従業員からハラスメントの相談があった企業のうち、全体の約86.8%が『顧客等からの著しい迷惑行為があった』と答えています。さらに、過去3年間のカスハラ件数の推移について、『増加している』と答えた割合は約23.2%でした。

カスハラが増加している原因の一つに、SNSの普及で『顧客の発言力』が大きくなったことが挙げられます。SNSの拡散力は高く、悪いうわさによって企業の業績が下がるケースも珍しくありません。「SNSで拡散するぞ」という上から目線の顧客が増えたことが、カスハラの増加につながっていると考えられます。

また、ハラスメントを問題視する風潮が高まり、これまで水面下に潜んでいた問題が浮き上がってきたともいえるでしょう。

出典:令和5年度 厚生労働省委託事業|職場のハラスメントに関する実態調査報告書 

カスハラの判断基準

電話対応

(出典) pixta.jp

カスハラとクレームは混同されやすく、明確に線引きできるわけではありません。厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』によると、以下のような言動は、カスハラに該当する可能性があります。

■妥当性がなく過剰な対応を要求している

顧客からクレームを受けた際は、『要求する内容に妥当性があるか』を確かめる必要があります。企業側が提供する商品やサービスに欠点や過失があれば、クレーム・苦情はあって当然です。しかし、以下のような行為には妥当性がありません。

  • 商品やサービスに欠点や過失がないのにもかかわらず、返品や返金を要求する
  • 企業が提供する商品やサービスとは関係がない事柄について、従業員に文句を言う

要求に対応した従業員の就業環境が害されれば、カスハラと見なしてよいでしょう。ただし、企業側が顧客の要求を拒否し、かつ顧客も要求を取り下げた場合は、カスハラに該当しないケースもあります。

■攻撃的な行為をしている

顧客の要求に妥当性があったとしても、要求の仕方や態度が社会通念上不相当で、従業員の就業環境が害された場合は、カスハラに該当します。

  • 顧客の暴言で従業員の心身が傷つけられ、本来の能力を発揮できなくなった
  • 不手際をした従業員に対し、暴力的な行為を行った

社会通念上不相当とは、社会一般の常識を逸脱していることです。例えば、殴る・蹴るなどの『肉体的な暴力』や、暴言・脅迫といった『精神的な暴力』が含まれます。

カスハラの具体例

電話でクレームを受ける

(出典) pixta.jp

カスハラの内容は、業界や業種によって異なります。従業員をその場で拘束するケースもあれば、電話やメールで営業を妨害するケースもあります。企業を困らせるカスハラの具体例をチェックしましょう。

■長時間の拘束や過度なクレーム

厚生労働省が2020年10月に行った調査によると、過去3年間でカスハラを一度以上経験した労働者の割合は約15.0%です。そのうち、『長時間の拘束や過度なクレーム』を経験した人の割合は、約52.0%という結果でした。各企業へのヒアリングの中で、以下のような行為が確認されています。

  • 従業員を1時間以上拘束する
  • 対応内容に揚げ足を取る
  • 同じようなクレームを繰り返す
  • 長電話により、従業員の業務を妨害する
  • 遅延を理由に、運賃の値下げを要求する
  • 難癖をつけて、キャンセル料を支払わない
  • 大量の備品を要求する

上記はあくまでも一例です。とりわけ、小売業・接客業・宿泊業・旅客運送業などは、顧客と常に接していることから、カスハラを経験する機会が多いと考えられます。

出典:令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 |厚生労働省
出典:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル|厚生労働省

■名誉毀損やひどい暴言

長時間の拘束や過度なクレームに次いで多いのが、『名誉毀損やひどい暴言』です。以下のような言動は、従業員の心に深いダメージを与えます。

  • 対応の不手際に対して激高し、土下座を要求する
  • どう喝・罵声・暴言を繰り返す
  • わいせつな発言や行為をする
  • 「SNSに拡散する」「マスコミに暴露する」とほのめかす
  • 「殺す」「壊す」などの発言をし、恐怖を与える

内容によっては、脅迫罪や強要罪、威力業務妨害罪などに該当します。単なるクレームではなく、刑事罰の対象となることを覚えておきましょう。

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