ひと目見ただけでは理解できない車があった。
駐車場に浮かび上がる白いライン。もはや現実なのかCGなのかさえ判断がつかない画像だが、これは正真正銘のリアルだ。
白色の鉄製ワイヤで車を型取り、見る者を困惑させる「実寸ワイヤーフレームカー」を製作したのは埼玉県吉川市にある有限会社山口製作所。SNSでもその類まれなインパクトと技術力が話題になった。
山口製作所は設計から板金加工、溶接、塗装まで行える稀有な町工場。2020年、「こんなものを作れたら面白いを形にする場所」として『かたする』をオープンし、特注本棚やショッピングモールの案内サイン什器など、様々な分野の期待に応える商品を作り続けてきたのだが…
このワイヤーフレームカーだけは、何度見てもワケが分からない。凄すぎて。
一体なぜコレは誕生してしまったのか?その経緯と技術力の真相を探るべく、山口製作所の専務取締役・山口勲さんに話を聞いた。
――「実寸ワイヤーフレームカー」製作のきっかけから教えてください
「2007年9月に自動車メーカーから『海外向けの新車カタログ撮影に使用したい』との依頼で同じ車種のフレームカーを5台製作しました。納期は約1ヶ月半ほどでしたね」
――依頼を受けた時の感想は?
「弊社では製作した事がなく難易度の高い仕事だと思いました。受注するまでに色々調べたところ海外で同じものを製作している画像があり、それならうちでも出来るのではないかと思い挑戦してみました。当時は仕事も少なく、出来そうであれば挑戦するという気持ちが大きかったんです」
ちなみに今まで製作した車種は、カローラ・プリウス・シビックタイプR・ランボルギーニ・フェアレディZなど。過去には製作したフレームカーを駐車場に設置してライトアップしたこともあったそうだが、全く反響がなかった。ところが最近になって白に塗り直したところ突然SNSでバズってしまったという。
現在、このワイヤーフレームカーは一般向けとしても販売・レンタルしている。車種はシビックタイプR、初代シビック、プリウスの3台。年内にもう一車種完成する予定とのこと。
販売価格は車両の形や大きさにより300万円~。かなりのお値段だが、1台完成するまでには1ヶ月半~2ヶ月を要し、数名の職人が各々の技術とこだわりを注ぎ込んだ魂の結晶だから仕方ない。職人たちの丁寧な仕事ぶりを実際に間近で体感してほしい。気になる方は是非!